「二人が演奏したのはベートーヴェンのクロイツェル・ソナタでした。あの最初のプレストをご存知ですか?ご存知でしょう!?」
これはトルストイの「クロイツェル・ソナタ」のなかで、物語の主人公・ポズヌィシェフが話している言葉である(望月哲男訳:光文社古典新訳文庫)。
この小説は社会的地位がある地主貴族のポズヌィシェフが、嫉妬がもとで妻を刺し殺すというもの。
ある時からポズヌィシェフの家に出入りするようになったヴァイオリンをたしなむトルハチェフスキーと、自分の妻との間を、彼は怪しむようになる。
ある晩さん会の席で妻がピアノの伴奏を務め、トルハチェフスキーが弾いたのが、ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)のヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調「クロイツェル(Kreutzer)」Op.47だったのだ。
クロイツェルというのは、ベートーヴェンがこのソナタを献呈した人物の名前である。
ヤナーチェク(Leos Janacek 1854-1928 チェコ)の弦楽四重奏曲第1番には、「クロイツェル・ソナタ」というタイトルが付いている。1923年に作曲されたこの作品は、トルストイの「クロイツェル・ソナタ」に触発されて書かれたもの。
しかし、触発といっても、小説に対する抗議だと言われている。
ヤナーチェクは、この小説のポズヌィシェフが自分の妻を殺すというストーリーに我慢がならなかったという。というのも、ヤナーチェク自身が晩年に若い女性に恋をしていたこともあり、トルストイの結婚や性道徳の考え方に同意できなかったのである(このあたりは、いずれ弦楽四重奏曲第2番について書くときに再び触れることになるだろう)。
したがって、この弦楽四重奏曲はベートーベンのソナタそのものとは直接の関係はない。第3楽章でベートーヴェンのソナタの第1楽章第2主題に由来する主題が出てくるだけである。
なお、ヤナーチェクはトルストイの「クロイツェル・ソナタ」を扱った作品を、それまでも2曲書いている。それはピアノ三重奏曲であるが、紛失してしまったので、現在では「クロイツェル・ソナタ」がらみのヤナーチェクの作品はこの1曲である。
弦楽四重奏曲という既成の概念で接すると、けっこう「おっ!」とサプライズさせられる傑作である。
私が持っているCDはヤナーチェク四重奏団の演奏によるもの。
1963録音。スプラフォン。
新館入口(2014.6.22~)
御多分にもれず参加中・・・
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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