ヴァイオリン・ソナタというジャンルにおいて、初期の発展に大きく寄与したのはイタリアの作曲家たちだ。
とはいっても、イタリアのヴァイオリン・ソナタは長い期間にわたってバロック・ソナタの形式の影響を残していた。
タルティーニ(Giuseppe Tartini 1692-1770 イタリア)の有名なヴァイオリン・ソナタ、ト短調「悪魔のトリル」(1789刊)にしても、ソナタ形式で書かれた楽章はない。
第1楽章にソナタ形式を用いて古典派スタイルでヴァイオリン・ソナタを書いたのはモーツァルトである(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-1791 オーストリア)。
モーツァルトは30曲以上のヴァイオリン・ソナタを残している。しかし、それは「ヴァイオリン伴奏のクラヴサン・ソナタ」であることに特徴がある(クラグサン(チェンバロ)伴奏のヴァイオリン・ソナタなのではない)。
特に初期、1760年代に書かれたヴァイオリン・ソナタに、その特徴が顕著である。
今日ご紹介するのは、その1760年代に書かれた、モーツァルトの最初期のソナタを4曲。
「ヴァイオリン伴奏のクラヴサン・ソナタ(Sonates pour le clavecin,qui peuvent se jouer avec l'accompagnement de violin)」Op.1。
フランスのヴィクトワール王女に献呈されたこのソナタは2曲からなり、第1曲はハ長調K.6(4楽章)。1762年から64年の間に作曲された。
第2曲はニ長調K.7(3楽章)。1763年から64年の間に作曲されている。
また、同じく「ヴァイオリン伴奏のクラヴサン・ソナタ」Op.2も2曲からなり、テッセ伯爵夫人に献呈されている。
第1曲は変ロ長調K.8(3楽章)。1763年から64年にかけて作曲された。
第2曲も第1曲と同じ期間に書かれており、ト長調K.9(3楽章)である。
これらの曲を聴くと、無条件に楽しく明るい気分になる。
自然に頬が緩んでしまい、体が動いてしまいそうな音楽だ。
宮廷の優雅で高尚な雰囲気も漂う。純真な心の健康美のようなものに満たされている。
モーツァルトが7~8歳の頃に作曲したこれらの曲は、音楽的には習作の部類に入るのかもしれないが、モーツァルトの天才ぶりを納得させられる十分な証拠であり、もっと聴かれておかしくない作品である。
私が聴いているのはBelderのチェンバロ、Baudetのバロック・ヴァイオリンによる演奏のCD。
2001録音。ブリリアント・クラシックス(全集の1枚)。 いまこの曲を聴きながら文を書いていたら、以前読んだ村上春樹の「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」(文藝春秋社)に収められている村上春樹の言葉を思い出した。
えーと、どれどれ……、177ページだ。
《バッハとモーツァルトとベートーヴェンを持ったあとで、我々がそれ以上音楽を作曲する意味があったのか?彼らの時代以降、彼らの創り出した音楽を超えた音楽があっただろうか?それは大いなる疑問であり、ある意味では正当な疑問です。そこにはいろんな解答があることでしょう。
ただ僕に言えるのは、音楽を作曲したり、物語を書いたりするのは、人間に与えられた素晴らしい権利であり、また同時に大いなる責務であるということです。過去に何があろうと、未来に何があろうと、現代を生きる人間として、書き残さなくてはならないものがあります。また書くという行為を通して、世界に同時的に訴えていかなくてはならないこともあります。それは「意味があるからやる」とか、「意味がないからやらない」という種類のことではありません。選択の余地なく、何があろうと、人がやむにやまれずやってしまうことなのです》
そうだよなぁ。
そうじゃなきゃ、私たちは村上春樹を読むことも、マーラーやショスタコーヴィチやゴジラの音楽を耳にすることができなかったってことになるからな。
逆に言えば、マーラーやショスタコを聴けるからこそ、モーツァルトの音楽がより一層輝かしく不滅のものに聴こえるのかもしれないし……
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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ん、そうです責務みたいなものでもあるんでしょう。私は色がきれいなカラー写真が好きです……