核心をついた、いさぎよさすら感じさせるメールである。

 ↓

 ゲスト様
 タイガーマスクさんから新着メッセージが届いております。
 ▼件名▼
 私は死にます。

 ↑

 ねっ?
 核心をつきすぎて、意味がさっぱりわからんでしょ?

 えっ?タイガーマスクって誰だって?
 知りませんよ。スパム・メールの送信者のことなんて私……
 ということは、私は心の中でこう答えるしかない。
 「そうですか……」

 §

f3d2b9c4.jpg  じゃあ、ブラームス(Johannes Brahms 1833-97 ドイツ)の「ドイツ・レクイエム(Ein deutsches Requiem)」Op.45(1857-68)。

 作曲年をみてお気づきのように、この曲もまたブラームスらしく(?)、じっくりと年数をかけて書かれている。

 作曲の動機はシューマン(Robert Schumann 1810-56 ドイツ)の死だったと言われている。シューマンはブラームスを世に出してくれた大恩人だった。
 ところが、優柔不断だかなんだか知らないが、ブラームスの筆は進まず、中断状態に。
 今度は1865年に彼のママが死んだことで、中断解除、作曲が進んだのであった(ママというのは、本当のmotherのことである)。

 この曲が「ドイツ・レクイエム」と呼ばれるのは、歌詞がルター訳によるドイツ語版の聖書に依っていることによる。
 レクイエムというのは、カトリック教会における死者のためのミサ曲であるが、ブラームスはカトリックではなくプロテスタントであった。そこでラテン語ではなく、ドイツ語版の聖書を歌詞に用い、また典礼音楽ではなく純粋に演奏会用として作曲した。

 この曲のCDでは、前にケーゲル盤を取り上げているが、今日はバレンボイム盤。

 バレンボイムに対する私の非友好的態度は何度か書いてきたが(しかも、その原因が私自身よくわからない)、この「ドイツ・レクイエム」は悔しいがなかなかすばらしい。
 ゆっくりめのテンポ。バランスが崩れることのない演奏で美しい。この美しさは、ブラームスっぽくないとも言える。

 癒される……

 オーケストラはシカゴ交響楽団。合唱は同合唱団。ソプラノ独唱J.ウィリアムズ、バリトン独唱T.ハンプソン。

 1992-93録音。apex(エラート原盤)。