80e7a8e7.jpg  繰り返しになるが、この冬はひどい雪だった。
 豪雪と言っては物足りないくらい大量の雪が降り、積もった(とはいえ、シーズン全体では過去最高ではないらしい。1月に入ってから集中的に降ったことが問題だったようだ)。

 さらに雪かきによって、庭にもたくさんの雪を積まなくてはならないはめになった。

 そして、その堆積した雪が融けてきた。

 雪の下はひどいだろうとかなりの覚悟はしていたが、1ヵ月ほど前に頭を現したアーチを見て、こりゃはんぱじゃないなと思った。それが上の写真である。
 おわかりになるだろうか?
 アーチの接合部が“あかぎれ”のように裂けているのが。これにはぼろきれのような私も驚かされた。
 そして、人間(バスケットボールの選手などを除く)が楽に通り抜けられる高さのアーチがここまで雪に埋まっていることもおわかりになるだろう。

9f2a1410.jpg  で、はんぱじゃないなと思っていたことが、やっぱりはんぱじゃなくて、どんどん完璧になってきた。
 2枚目の写真はその1週間後。
 「おぉ、雪もずいぶんと減ったものじゃい」という喜びの一方で、あかぎれは脱臼へと悪化してきている。
 1枚目の状態のときは雪でよく状況が把握できなかったのか、あるいはその後、横からの雪の圧力でさらに変形したのか、そのどちらかはわからないが、「これがアーチです」と言ったとしても誰もまともに取り合ってくれないようないびつな形になった。このいびつさは私が中学のときに“技術”の授業で製作させられた木椅子に匹敵する。

 ところが、雪はこれで許してはくれない。
d49547a5.jpg  3枚目の写真は、そのさらに2週間後、今から1週間前の状態である。
 アーチは行儀の悪い軟体動物の“気をつけっ!」のような態度を、私に対してとっている。
 でも、この形、何となく芸術的に見えなくもない。
 1900年代前半の前衛アート作家によるガーデン・アーチって感じだ。
 いや、そうでも思わないと悲しくなる。
 これだと地面の方はどうなっているのか想像もつかない。

 で、昨日。
 4枚目の写真を撮った。
 いかがであろうか?

433f2dd6.jpg  「まだ、こんなに雪が残ってるんだぁ~」って?
 そういう感想は現在のところ私は欲していない。

 この先雪解けが進むにつれ、倒れてしまいそうな感じである。私の予想では向かって左側に倒れると思うのだが、皆さんはどう思うだろうか?

 この姿、入社の最終面接で社長に直立対面し、姿勢を正しているつもりが緊張のあまり全体的に傾斜してしまっている学生のようだ。
 わが庭のアーチと学生との違いは、アーチは何ら緊張していないという点である。
 
 アーチもアーチなら、ビニール製のサイクル・ハウスもサイクル・ハウスだ。
 先日の朝、カーテンを開けると、窓から見える光景がいつもとビミョーに違う。
 「はて、何が違うのかな」と2秒考えて理解した。
 夜のうちにビニール・レザーが“かまいたち”に遭ったように豪快に避け、中が天にさらされていたのだ。
 やれやれ。
882dd98c.jpg  確かにもう10年くらい使っていたものだから、ビニール疲労を起こしていたのだろうが、裂けるなら裂けるで事前に一言断って欲しかったわい。こっちにだって心の準備ってものがある。もし、この中に金庫でもしまっていたなら、難なく盗まれるところだった。

 朝から、バタバタとたなびくビニールをおとなしくさせるための作業は、実に寒かった。ワイシャツ姿で取り組んでしまったから。
 といっても、隣の家の窓からも見えるから目ざわりだろうしと、とにかくがむしゃらに結びつけたのだった。

 さて、まだ雪の下に埋もれている私のバラたちはどのような状態になっているのだろう?
 何とか雪囲いが持ちこたえて株を護ってくれているのだろうか?
 それとも雪囲いの支柱もグニャリだのボッキリだのという状態で、株自体が相当ダメージを受けているのだろうか?
 すっごく気にかかる。
 あ~ぁ……(甚大な震災の被害が出ているというのに何言ってるんだ、と思う方もいるかもしれないが、それはそれ、これはこれ。東北、あるいは日本全体の問題とは別に、このような個人的に重大な問題もある)。

 芥川也寸志(Akutagawa Yasushi 1925-89 東京)の「薔薇をつめば」。

 この曲は、芥川が1949年に作曲したピアノ伴奏の5曲からなる歌曲集「車塵集」の第2曲である。

eb7ab098.jpg  「車塵集」は佐藤春夫が訳した中国の詩集で、佐藤はその巻頭に「芥川龍之介がよき霊に捧ぐ」と記している(1929刊)。つまり、佐藤春夫はこの詩集を、也寸志の父である龍之介の霊に捧げたのである(也寸志は三男)。

 芥川の「車塵集」の5曲は、

 もみぢ葉
 薔薇をつめば
 水彩風景
 採蓮
 春のをとめ

で、「薔薇をつめば」の原詩は孟珠の作である。

 歌詞は、

 きさらぎ彌生春のさかり
 草と水との色はみどり
 枝をたわめて薔薇をつめば
 うれしき人が息の香ぞする

というもので、短いながら心が温かくなる歌である。

 私が持っているCDは荒道子のメゾ・ソプラノ、三浦洋一のピアノによる演奏。
 「日本の声楽・コンポーザーシリーズ 3」。1974録音。ビクター。

 あと2~3カ月で、私も例年のように庭で枝をたわめて薔薇を摘むことができるのだろうか?(そのときはトゲで、また血だらけになるに違いない)
 それとも、雪害で薔薇たちはあまり花をつけてくれないのだろうか?

 そしてもし摘めるなら、そのときにはちゃんと歯磨きをして息をきれいにした方がいいのだろうか?