7月10日に行われたウルバンスキ指揮PMFオーケストラの演奏会。
すでにご報告したように、1曲目はドビュッシー(Claude Achille Debussy 1862-1918 フランス)の交響詩「海」(1903-05)であった。
この「海」。
海そのものの情景を音楽で表現したものではなく、海から得た印象を音楽にした作品である。
だって、ドビュッシーは印象主義の作曲家だもの。
だから、交響詩「海」という名の方が一般的となっているが、本来は「3つの交響的スケッチ『海』(La mer - 3 Esquisses symphoniques)」というのが原意に近い訳。
私は絵を描くのが苦手で、スケッチも幼稚園児未満の下手さだが、それはともかくとて、“3つ”というのは、この作品の3つの楽章、すなわち、
1. 海の夜明けから真昼まで De l'aube a midi sur la mer
2. 波の戯れ Jeux de vagues
3. 風と海との対話 Dialogue du vent et de la mer
である。
今回のコンサートでの演奏は、指揮者もオケもまだかたさがあったと書いたが、その演奏は、まさに“交響詩”然としていて、ドキュメンタリー映画に付けられた音楽のようにも聴こえた。
「ドビュッシーさんがどんな海にどんなイメージを描きながら音楽にしたのか、みなさんも一緒に思いを巡らせてみましょうね」というような、余裕がある音楽づくりではなかった。
でも、実はそれはそれでなかなか悪くなくて、終楽章なんかでは予想に反し感動していた自分がいた。
きっと私の心に余裕がないせいだろう。だからけっこう共感できたのだと思うのだが、そこのあなたはどう思います?
もう一つこの日の演奏で特記すべきことは、第1楽章を閉じるときのトランペットの弱音が美しく音が安定していて、とても巧かったということ。
とはいえ、やはりちょっとガチガチしていて、「海」の本来の姿ではないと思った。
コンサートに向かう前に寄ったタワレコ。
考えてみれば、「海」の演奏って、ここ10年くらいショルティ盤しか聴いてなくて、他の演奏のCDも他にアンセルメ盤しかないなってことに気づいた。
逆に言えば、この曲、それで十分だと思っていたのだが、ふらりと「Debussy」の棚に近寄ってみた。
意外と「海」のCDって出ていない(店頭にない)ことに驚いた。
で、私が手に取って離さなかったのは、ジュリーニ指揮ベルリン・フィルによるライヴ録音のCD(1978録音。TESTAMENT)。
ジュリーニによる「海」と言えば、フィルハーモニア管弦楽団を振ったLPを私は持っていた。
録音年は知らないが、確かジュリーニ初の「海」の録音だったと思う。
EMIの廉価盤のこのLP、何回聴いても好きになれなかった。ただ音が流れ去っていく感じで残らないのだ、磯くささも潮からさも。そんなん残っちゃ厄介ではあるけど。
ジュリーニという指揮者、私は嫌いではない。
強烈な個性はないが、なんとなく清潔感がある音づくりが悪くない。もっと強い刺激、個性が欲しいときもあるが、良い意味で無難ではある。
私は未聴だが、そのジュリーニがアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮した1994年のライヴ盤があり、それは名演と言われていたはずだ。
そんなわけで、つまり
① たまには別な「海」を聴いてみたかったこと
② 無臭のようなジュリーニがベルリン・フィル、しかもライヴでどんな演奏をしたのか嗅ぎたかったこと
③ 実はもっと決定的な、このCDを買わざるを得ない理由があったこと
という3つの理由から、このCDを購入した。
聴いてみて、買ってよかったと思った。
フランス的な雰囲気、ニュアンスは濃くないが、厳しくも温かい躍動感ある「海」だ。
雄大な「海」の情景が私の瞼の裏に描かれた。子供のころに行っていた銭湯の壁の絵。富士山と海の波……
ジュリーニってこんな白熱した演奏もするんだなぁって、ちょいと新鮮な思いもした。
で、先に書いた③の理由。
その私的には衝撃の事実については、また今度。
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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お久しぶりです。コメントありがとうございます。
ジュリーニは私にとって、廉価盤LPのセラフィム・レーベルで早くから知っていたものの、それゆえに過去の人みたいなイメージが残ってました。
PMFでは、なんだか打楽器群が心配で、私はそちらばかり見ていました。