朝の通勤時にしばしば起こる出来事について。
札幌駅周辺の地下のコンコースもけっこう混み合っている。
こういうときに迷惑なのは、2人か3人が横並びになって、しかも実に中途半端なチンタラ度のスピードで歩いている高校生。
追い抜くにも追い抜けないし、どうして今、自分たちが多大な渋滞を巻き起こしているということに気づかないのか、あるいは気づいていたとしたら、なぜそれを是正しようとしないのか、いずれにしろ私には理解できない(その点、歩みを速められないお年寄りには私は寛大である。ただし、お年寄りが数人横並びになっておしゃべりしながらタラタラ歩いていたとしたら、寛大になれない)。
が、もっと困った人もいる。
そのほとんどが女性だ。
混み合った通路だから、当然のことながら人の列は前後の距離があまりない。つまり、人間距離(“じんかん”距離と読んでほしい)が十分ではない。
こういうときに、大きく腕を振って歩いている女性が前にいると、非常に危険だ。
なんで、あんなに腕を振らんきゃならんのだ?自動巻きの時計じゃあるまいし、まさか腕振りで動力を生み出しているわけではないだろう。
なのに、平気で、私に言わせれば「365歩のマーチ」の水前寺清子を思い出させるような歩き方をしている女性が、意外といるのである。
「腕を振って、足を上げて、ワンツー、ワンツー!」
あなたは歩兵か?と言いたくなる。
こういった仮称“マーチ女”が前を歩いていると、私の繊細で感受性の強い股間が大いに危険にさらされることになる。
高さもだいたい一緒、いや、狙い撃ちに近いほど一致している。腕が描く弧の先と、私の所有する急所が……
もし不幸なことにパンチを食らったら、混雑する地下コンコースで、私はアンパンチを浴びたバイキンマンのように苦痛の涙目でしゃがみこんでしまい、「なんだよ、邪魔なんだよ!」という非難の視線を浴びながらも、何もなすすべがなくなるだろう。と同時に、加害者には「この人痴漢よ。こんなに後ろにぴったりとついて来てたんだから」と、逆に変態扱いされる羽目になるだろう。
何とかして欲しい。
一方、男性の場合は、しばしばこういうことがある。
どういうことかというと、前を歩いている男性のベルトが、後ろ側で1つだけ穴に通っていない、という致命的ではないが、けっこう「あらら」と思ってしまう状態を見てしまうことだ。
本人はまったく気づいていないし、1箇所通ってないからといって、エンジンが脱落するとかそういう重大な事故につながるわけじゃないが、なんとか教えてあげたいなと思う。
けど、親切心で、例えばベルトを後ろから引っ張って、暗に教えてあげるなど、そういうことは小心者の私にはできない。
私が出来ることといえば、ただただ、自分は大丈夫かなと確認するだけである。 ということで、近衛兵だな、今日は。
フレデリック・J・ハリス中佐なる人の指揮によるイギリス近衛歩兵グレナディア連隊軍楽隊の演奏による、「スーザ&ヨーロッパ・マーチ集」。1958録音(まあ、古い!)。デッカ。
行進曲「星条旗よ永遠なれ(Stars and Strips forever)」が特に有名なスーザ(John Philip Sousa 1854-1932 アメリカ)は「マーチ王」と呼ばれる人物。
1880年に合衆国海兵隊(海援隊じゃないですよ)吹奏楽団の指揮者となり、'92年には自らの楽団であるスーザ吹奏楽団を結成した。
「星条旗よ永遠なれ」のほかにも、「ワシントン・ポスト」や「エル・カピタン」など、しばしば耳にする(運動会なんかで)作品を多く残した。
スーザのマーチを取り上げることはそうそうないと思うので、このCDに収録されている作品を書いておくと、
行進曲「星条旗よ永遠なれ」(1897)
行進曲「無敵の鷲(The invincible eagle)」(1901)
行進曲「士官候補生(The high school cadets)」(1890)
行進曲「騎馬闘牛士(The picador)」(1889)
行進曲「忠誠(Semper fidelis)」(1887)
行進曲「エル・カピタン(El capitan)」(1896)
行進曲「マンハッタン・ビーチ(Manhattan Beach)」(1893)
行進曲「キング・コットン(King Cotton)」(1895)
行進曲「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」(1889)
行進曲「自由の鐘(The liberty bell)」
の10曲である。
なお、日本では「士官候補生」の名で広く知れ渡っている曲は、実は誤訳だそうで、最近では「ハイスクール・カデッツ」と呼ぶことが増えてきている。
とはいえ、こういう言っちゃなんだが、鑑賞用音楽というよりは実用音楽であり、また世のブラバンでは古い楽譜を大切に使っているのだろうから、曲名が誤訳だったなんてさして問題にならないのかもしれない。
このCDには他に、スーザ以外の作品12曲も収録されているが、特に私が好きなのはガンヌ(Louis Gaston Ganne 1862-1923 フランス)が書いた2曲の行進曲、「勝利の父(Marche "Le pere de la victoire)」(1888)と「ロレーヌ行進曲(La marche lorraine)」(1892)。
行進曲「勝利の父」は、本来は「閲兵から帰って」という劇のために作曲された「フランス行進曲」だったが、第1次大戦後に、首相だったG.クレマンソーが“勝利の父”と呼ばれたことにちなんで改題したもの。
「ロレーヌ行進曲」は、ナンシーで開催された連合体育式典のためのピアノ曲に歌詞をつけて歌ったものをオーケストラ編曲した作品。普仏戦争でドイツに奪われたロレーヌ地方の民謡を取り入れ、この地に思いを寄せている。
ガンヌのマーチは、スーザほど実用音楽に徹しておらず、より鑑賞用として耐えうる作品だと私は思っている。
ところで“歩兵”ってなんだろ?
あらためて辞書を引くと、「徒歩で戦う兵士」とある。
やれやれ、たいへんだ。
新館入口(2014.6.22~)
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