私がラファエロの“キリストの変容”(写真上)を初めて目にしたのは、購入したLPレコードのジャケットによってであった。
RCAビクターから発売されていた、廉価盤(いわゆる1000円盤と呼ばれていたものだが、私がLPを買い始めたころには値上がりして1300円になっていた)のシリーズのジャケットには名画が印刷されていたのである。
ラファエロの絵が載っていたのはミュンシュ指揮のサン=サーンスの交響曲第3番のレコード。今でも名演と言われている演奏である。
なぜ、サン=サーンスの交響曲に「キリストの変容」なのか?何か意味があるのだろうか?それとも特にないのだろうか?
なんとなく後者のような気がするが、オルガンが入るということでは、イメージ的にあながち遠くはなかったのかもしれない。
そのLPレコードは処分してしまっていて現物はないが、同じシリーズのLPがまだ残っているので載せておこう(写真2枚目)。このように世界の名画が使われていたわけだ。
このレコードはライナー指揮によるマーラーの「大地の歌」。
ジャケット裏面の下に小さく“表紙絵・セザンヌ”と書かれている。 私は“世界の名画”と書いたが、はっきり言って、この絵が名画ということは知らなかった。もしこの絵を、近所に住む絵が上手なおじさんが描いたものだと言われて見せられても何の疑問も抱かないだろう。
しかし、あのラファエロの絵を見たときには美しくて神秘的だなと、けっこう魅せられてしまった。
サン=サーンスのLPは上に書いたようにとっくに処分してしまっていたので、その絵についてもその雰囲気しか覚えていなかった。しかし、何年か経って再び絵を見る機会があったときに思ったのは、キリストってこんなに肉付き良かったかってこと。よく宙に浮いたなって、ばかみたいなことを思ったものだ。顔ももっとほっそりしていたイメージだったのに。
先日鳴門市の大塚国際美術館に行ったときも、当然のごとくこの絵も展示されていた。
それは想像するよリも大きかった。 だから宙に浮いているキリストが、さらにふくよかに見えた。
ということで、メシアン(Olivier Messiaen 1908-92 フランス)の「キリストの昇天(L'Ascension)」(1932-33)。
4つの楽章からなる管弦楽曲である(1934にオルガン編曲)。
各楽章のタイトルは、
1. 自らの栄光を父なる神に求めるキリストの威厳
Majeste du Christ demandant sa gloire a son Pere
2. 天国を希求する魂の清らかなアレルヤ
Alleluias sereins d'une ame qui desire le ciel
3. トランペットによるアレルヤ、シンバルによるアレルヤ
Alleluia sur la trompette,alleluia sur la cymbale
4. 父のみもとへ帰るキリストの祈り
Priere du Christ montant vers son Pere
なんかどれもすごいタイトルで、聴いていて、「なるほどタイトルのとおりだ」と感じるような全然感じ ないような音楽である。しかし、厳粛さと美しい響きはメシアンならでは。特に不協和音の美しさを堪能できる。
ロバート.P.モーガン編(長木誠司監訳)の「音楽の新しい地平」(音楽之友社)のなかでは、この曲について次のように書かれている。
初期のオーケストラ作品「キリストの昇天」では、思う存分鑑賞にひたった調性的半音階主義と、強い神秘的香気が目を引く。その神秘性はスクリャビンのソナタと同様の大量の記述的な表情指示とテンポ表示によっていっそう強められている。しかしながらメシアンは、自分の音楽がねらっているのは神秘的なものではなく神学的なものだと断言している。
今日紹介するのは、チョン・ミュンフン指揮パリ・バスティーユ管弦楽団の演奏。
1991録音。グラモフォン。
カップリング曲は、偶然(?)にもサン=サーンスの交響曲第3番。
現行盤(在庫わずかとのこと)は、掲載したものとジャケットデザインが異なる。
にしても、私が持っているこのCDのジャケット。下部の“The Meiban”ってなんだか笑える。
なお、アレルヤというのはハレルヤと同じで、「主をほめたたえよ」の意味である。
私は今朝を仙台で迎えた。
昨日は夕方に千歳を出発するANA便で仙台空港へ。
幸い、おそらく、奇抜な飛行もせず無事定刻に到着。
下調べが不足していて、空港から仙台駅までのJRがまだ全面開通していないことを知らなかった。
バスで仙台駅前まで移動したが、高速道路の料金所がやたら混んでいた。料金免除対象の車もあるので、そのチェックに時間がかかるそうだ。
それでも55分で到着。
バスを降りるや否や(おお、as soon as 構文だ)、携帯電話がけたたましく鳴った。マナーモードなのに鳴った。ほとんど聞いたことのない着信音、イルミネーションは赤。私だけでなく、歩いている人たちの多くの体から音が発せられていた。“エリアメール 緊急地震速報”だった。
幸いそのあと強い揺れは来なかったが、変な話、この不安を煽る音を耳にし、この街は大きな被害を受けたんだったとあらためて気づかされた。
コメントありがとうございます。ほんとうに日が短くなりましたね。こっちは今日あたり、かなり冷え込んでいます。
「キリストの昇天」は管弦楽作品で、メシアンの作品のなかでは比較的聴かれているものと思います。ぜひ一度聴いてみてください!