c71cb369.jpg  仙台駅前に着いたときに、緊急地震速報のために携帯がけたたましく鳴ったことは昨日報告したが、それが止まったと思うと別なけたたましい音がした。

 爆音バイクが2台。
 まったくアホかっ!
 こういう見方は必要以上に感傷的なのかも知れないが、節電のためか薄暗い街の中で、そして緊急地震速報が出る中で、みな苦しみに耐えながら、不安を抱えながら家路についているのだ。そんなところに、駅前をバォーンバォーンバババババォーンと、まるで「私は馬鹿なんでございます」と世間に訴える宣言のように走っているバイクを見て、日本人って普通の人とどうしようもない人の二極化が進んでいるように思ってしまった。
 そういう私も、両者の境界エリアにいるような感じもするけど(バイクで迷惑行為をしているという意味ではないです。バイク乗れないし……)。

 夜。ホテルの部屋は寒かった。
 この時期に北日本を訪れ宿泊する人にアドバイスしておきたいが、ちょうど全館コントロー4fb05fe2.jpg ルの空調が冷房から暖房に切り替わるタイミングで、まだ暖房に切り替わっていないところも多い。ぜひ気をつけてほしい。って、何のアドバイスにもなってないな……

 翌朝。
 珍しく朝食付きプランで宿泊したのだが、7:15から始まる朝食会場に私は7:05に駆けつけた。
 会場の前にはボーッとしたおやじさんが2人、椅子に座って待っていた。
 私と同じように、いてもたってもいられずに早くやって来て、開店を待っているのだ。

 と思ったら、店の中が騒々しい。
 覗いてみると、すべての席が埋め尽くされ、主として婦人部系宿泊客がすでに食事をしている。このおじさん2人は席が空くのを待っていたのだ。
 でも、開店予定時刻前に、それも食事のおばさんがたのテーブルの状況を見ると、けっこう前から食事に取りかかっている雰囲気で、そんなかなり前と思われる時間に営業し始めるのってずるくない?私なんか6時前から起きていたわけだし。

 こんな環境下で食事をしても落ちつかず精神衛生上よくないと思ったので、すぐに見切りをつけコンビニへ。
 コンビニ弁当の朝食は私のいつもの出張パターン。
 でもいつもは前日の夜のうちに買っておくので、冷めても支障がないおにぎりやいなりずしなんかにするが、今回は温められるとあって幕の内弁当にした。

 店員「温めますか?」
 私「ぜひとも!」

 部屋に戻って温かい朝食。
 なんか、かすかな幸せ。

 8:30に仙台支社の人間が迎えに来てくれて、車で塩釜へ。
 港にヘンテコな船を発見。
 なんでもお祭りのときに使うらしいが、すっごくやる気のなさそうな表情が気に入った。

 用務を終え、仙台市内で昼食。
 美味しいそば屋があるという話だったが、今回は札幌からの同行者の1人がそばアレルギーなため、ではすごく美味しいトンカツ屋へ、ということに。

a62d3371.jpg  “杉”という店。
 お薦めだという特大ヒレカツ定食を張りきって頼んだが、肉が柔らかく美味しかった。
 しかし、1枚半ほど食べ進んだときにはすでに相当腹がきつくなっており、白旗を上げざるを得ないのか、という窮地に。しかし、そこは何とか努力し完食(ただしキャベツはかなり残した)。美味しいから食べられたわけで、これが不味けりゃ完璧にギブアップするところだった。

 しかし上には上がいるもので、その仙台支社の人は草履のようなジャンボトンカツ定食(写真下)を頼み、しかも私たちよりもはるかに早く、千切りキャベツの1本も残さず平らげていた。
 この行列ができるトンカツ店、特大ヒレカツ定食でも1050円と値段も安い。

1aa9ae70.jpg  そのあと空港へ。
 陣痛が始まった妊婦のように腹が苦しい状態(あくまでイメージ表現です)で思考も停止状態だったが、高速道路から見えた色が変わった畑を見て、津波の恐ろしさをあらためて感じた。
 高速を降り、空港へ向かう道からがれきの山や積み重ねられた車を見て悲しい気持ちになり、そして空港に着く直前、かつて私も食事をしたことがある和食店がボロボロの廃屋になっているのを目にしたときには現実ではないかのように思えた。

 あの震災のちょうど1週間後に札幌のKitaraでは札響の定期演奏会が行なわれた。
 出し物はマーラーの交響曲第7番だったが、それに先立ちチャイコフスキーの「モーツァルティアーナ」の第3曲「祈り」が演奏された(なお、札響のコンサート・ミストレス大平まゆみは仙台出身である)。

 この「祈り」の原曲はモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)のモテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス(Ave verum corpus)」K.618(1791)である。そこで、今日は短いが極めて美しいこの合唱曲を。

 この曲はモーツァルトの妻・コンスタンツェの療養の世話をしてくれたバーデンの合唱指揮者アントン・シュトルのために作曲されたが、どのような場で演奏するために書かれたのか明らかでない。

 “アヴェ・ヴェルム・コルプス”というのはローマ・カトリック教会の聖体賛歌で、モーツァルトの曲の歌詞は以下のとおり(今回紹介するCDの解説より。訳は小林緑)。

 めでたし、処女マリアより生まれ給いし
 まことの御体。
 まことに苦しみを受け、人のために
 十字架上に犠牲となられ、
 その脇腹は刺し貫かれて
 水と血を流し給えり。
 われらのために先んじて
 死の試練にあずからせ給え。

 今日はコープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団、同合唱団による演奏を。
 ピリオド演奏による、ただの癒しだけではない血が通うような人間味ある演奏だ。
 1994録音。エラート。