92498de7.jpg  おとといの夜はちょっと飲みすぎた。

 私が東京勤務時代に一緒だった人と-仮に彼の名をルパソにしておこう-飲んだのだ。

 ルパソさんは私が東京から札幌に転勤した1年前に、先に札幌に転勤。
 そして今年、再び東京勤務となった。
 で、今回の私(そしてMr.鉋)の出張に同行してくれたのだ。

 子供でもない私たちに、なぜわざわざ出張に同行してくれたのか?

 実は今回は東京から千葉の、それも遠くの方に行かねばならない任務があり、ルパソさんの力で車を出動させてもらわねばならなかったのだ。

 そこで、「ねっ?お願い!」と頼み込み、車で羽田まで迎えに来てもらい、そのまま海の下の道を通って千葉へ乗せてもらった上に、お昼ご飯までごちそうになってしまった。
294434dc.jpg  写真を見るだけではとても仕事とは思えないだろうが、本当に仕事なのだ。

 だが、たまたま行かねばならなかった場所が九十九里浜の近くであったこと、そのあたりはハマグリが有名だったこと、そして昼食を食べるために入った店はハマグリを供する態勢にあったことから、焼きハマグリを食べたのだ。決して観光気分ではない。
 実際、無気力げに、そして空腹げに車を走らせていたとき、偶然にも“海の見えるお食事処”という看板が目にとまり、飛び込みでそこの店に入ったにすぎない。計画性は全然ない。ましてやそこの売りがハマグリだったなんて事前に知る由もなかった。それにしても、看板の重要性と効果を身を持って理解できた貴重な経験をさせてもらった。

9c73accd.jpg  ハマグリを賞味することが目的でなかった証拠に、私はハマグリだけではなく、サラリーマンらしくそこで親子丼を食べた。意外や意外、大衆食堂的な誇り高い味がする実に美味しい親子丼であった。
 一方、ルパソさんはアジの塩焼き定食を注文したが、大きなアジが2匹も盛られていた。
 Mr.鉋はアジフライ定食を頼んだが、大きなフライが3枚も盛りつけられていた。

 私は先日の仙台の特大ヒレカツ定食を思い出さずにはいられなかった。
 そして想像通り、あのときの私のように、アジフライ定食を食べたあとのMr.鉋はアヒルを丸呑みした後の毒蛇のようにのたぁ~っとしていた。わかるなあ、あの苦しみ。

 で、仕事を終え都内に戻る。
8a95980f.jpg  積もる話は特にはないが、とにかく飲み過ぎた。

 朝目覚めたときには暗い幻覚を見続けているかのように、“シランクス”のメロディーが頭の中で響き渡っていた。

 ドビュッシー(Claude-Achille Debussy 1862-1918 フランス)の「シランクス(Syrinx)」(1912)。邦題は「パンの笛」。無伴奏フルートのための作品だ。

 パンはギリシャ神話の牧神の神。
 パンといえば、のちに削除されてしまったが、マーラーの交響曲第3番の第1楽章の標題でも取り上げられていた。

 ドビュッシーの独奏フルートによるこの不思議な曲は、友人であるG.ムーレイの戯曲「プシュケ」のために依頼された付随音楽の1つだが、1つと言っても実際に作曲されたのはこの曲だけだった。

 調性が不安定というか、離脱しているというか、なんとも言えない曲。不気味さと孤独感をはらんだ幻想的だ音楽だ。 

 私は高校時代にこっそりと深夜番組、11PMとかトゥ・ナイトを観ていたとき、そのどちらかの番組で、この曲が使われたあまり動きのないCMが流れていたのを思い出す。
 なんのCMだったかさっぱりわからないが、金がかかってない感じで深夜じゃなきゃ流せないだろうなって感じのCMだった。
 その退廃的な画像にこの曲はなかなかぴったりだった。

 ランパルのフルート独奏によるCDを。
 彼によるフルート名曲集。
 「シランクス」の録音は1967年。エラート。

 東京に出張に行く月曜の朝。
 いつものようにキオスクでタバコを買ったら、ふだんは能面のように客をさばいている店員が、「いつもありがとうございます。これ、サービスです」と100円ライターをくれた。

 信じられなかった。
 こんなこと言われたことも、されたこともなかった。
 
 でも、すぐに理由がわかった。
 子どものいたずらに対応していないライターだったのだ。
 在庫整理ね……

 ありがたかったが、私はそのライターをあとでそっと捨てた。
 機内にはライターは1個しか持ち込めないから。
 親切を無にしてすいませんでした。