30f5d0fb.jpg  熊出没騒動。

 今日現在ではかなり盛り下がってきた話題ではあるが、去る9日の日曜日の夜には西区の平和の滝に熊の姿らしきものが見かけられたそうだ。
 平和の滝は前に書いたように心霊スポットである(らしい)。
 見かけたのは20代の男性グループだというが、この寒い中、しかも今回に限らずいつも“クマ出没注意”という看板が立っている危険な場所・平和の滝に、お化けを見に行ったのかしらん?

 一方で、中央区の目撃情報はここにきて混乱し始めている。
 110番通報した人の1人は「犬か子供だったかも」と話が変わってきているらしい。
 確かに目の前に熊が出たら怖いが、地下鉄円山公園駅から円山動物園までタクシーに乗って来た人もいるっていうのも、ちょいと変な感じがする。すぐ近くでは高校野球の新人戦でギャンギャンとにぎわっているんだし……

 もうずっと昔になるが、今と同じ時期、10月の初めに平和の滝から手稲山に登ったことがある。先の若者たちのことを言えた立場にないが、“クマ出没注意”の看板を横目に、私とK君は山頂を目指した。
892f1318.jpg  当時私は“植物研究会”なるサークルに所属していて、そのサークルの目的は北海道の植物図鑑を自分たちで作り上げることだった。それで私たちは写真を撮るために山に入ったのだった(そのころはもう花なんか咲いてないのにね)。

 登り始めてすぐに雨が降り始め、風も強くなって来た。
 ササが大きく揺れたが、クマが出るかもという認識はなかった。
 山頂に着いたときにはずぶぬれ。冷えたおにぎりを震えながら食べ、帰りは手稲本町へつながる車道を歩いた(つまり、ひどい目にあったけど-自業自得だ-クマには遭わなかった)。
 写真は登山前に平和の滝で撮った私の元気満々の姿だ(右側の腕)。なお、この写真を見て、変なものが写っていると今さら言われても、私としては非常に困る。

 15時ころに山を下りきった場所である手稲本町に着いたとき、とにかく暖まりたくて、当時はけっこう流行っていた24時間ベンダーショップに入った。温かいものが口にしたくて、私は何をとち狂ったのか、カレーライスの自販機でカレーを買った。
 「ピーピーピー、できましたよ」という音がして、皿を取り出すと、そこには皿に盛られた白いご飯だけがあった。
 カレーがかかっていない。

 幸い管理する人がいたので事情を話すと-その時の私は凍え死にしそうな家出少年のように見えたに違いない-、そのおじさんは鍵を使って自販機のドアを開けて調べてくれた。
 口がカットされたボンカレーの袋が途中で金具に引っかかっていて、カモメの死骸のように斜めにぶら下がっていた。

 私はこのときに学んだ。
 こういうのって、ボンカレーだったんだ!

 K君元気にしてるかな?
 いくつになったのかなぁ?
 あっ、私と同い年か……

 それはそうと、今回の連休の中日(“連休のなかび”であり、連休中のドラゴンズとは関係ない。10月9日のことだ)は珍しいほど穏やかで暖かだった。
 そう。そういう日にはガーデニング作業をするに限る。

 今回はのこぎりを使って、プルーンとナツツバキとオオデマリの木の古くなった太い枝を切るという、実に退屈な作業である。
 面倒くさいがやるしかない。

 こういうときにはさわやか、かつ、匿名的な音楽を聴くに限る。音楽に集中してしまったら切り落とした枝に大切なおつむをぶつけてしまう恐れがあるからだ。

 ということで、ボッケリーニ(Luigi Boccherini 1743-1805 イタリア)の「6つの小フルート五重奏曲(6 Quintettini per flauto e archi)」Op.17(Op.21),G.419-424(1773)。
 編成はフルートと2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。

 小フルート五重奏曲と言っても、フルートが小さいわけじゃない。それじゃあピッコロだから。
 各曲とも2楽章構成。
 それぞれの調性は、ニ長調、ハ長調、ニ短調、変ロ長調、ト長調、変ホ長調である。

 ボッケリーニという作曲家、有名なような有名でないような存在だが、古典派時代のイタリアを代表する作曲家である。オーストリアのJ.ハイドンと同時代に古典派音楽を推進したために「ハイドン夫人」の異名があった。
 ハイドンの奥さんは悪妻として知られる。いっそ、ボッケリーニ君が妻の方が幸せだったかも。

 このフルート四重奏曲も、明るく清らかなメロディーが耳に心地よいもの。レストランでこういう曲が流れていたら、その店の主人はセンスがいいなぁって思ってしまうだろう。私は今回、枝切りしながら聴いてたけど……

 私が持っているCDは、マグニンのフルート、ヤナーチェク四重奏団による演奏。
 1995録音。ナクソス。

 なお、ボッケリーニの作品についている作品番号(Op.)は、作曲者自身によるもののほかにいろいろな出版社が付けたものがあり錯綜している。また、G.はY.ジェラールによる作品目録の番号である。

 切り落とした枝葉は40リットルのゴミ袋2つと、20リットルのゴミ袋1つになった。
 合計すると100リットルだ。
 よく働いたものだ。