9ae15e97.jpg  昨日から私は、会社からのちょっとしたご褒美で休暇に入ったが(つまり「来なくていい」と言われたわけではないのだ)、昨日起きた時刻は6:30。
 いつもより遅くはあるけれど、せっかくの休みなのになぜ早くに目が覚めてしまったのだろう?

 答えは、おしっこがしたくなったのと、おなかがすいたから。
 なんと片ひじの張らない自然体な生き方なのだろう!

 で、食事をしたあともうひと眠りした。

 再び目覚めたのは10:30。
 なんとなく背中から腰にかけてだるさと若干の痛みがあった。

 風呂に入り、新聞を読み、そのうち昼になり、なんとなくラーメンが食べたくなったので最近オープンしたラーメン屋に行き、醤油ラーメンと小ライスを食べ、会計の時に「ランチタイムのときは小ライスはサービスです」と言われ、庶民ならではのプチ・ハピネスを感じ、そのあとホーマックに行った。

 その目的は、車のストップランプの電球が片方切れているのにおととい気づいたからで、その電球を買ったとたんに、今度はさっき食べたラーメンが私にはちょっとコッテリしてたなと感じるようになってきたので、店内のドラッグ・コーナーでザッツ21を買い、その場でこの胃薬を会計しようとしたら「そちらのお品物もここでご一緒にお会計できますよ」と言われ、どうも丁寧語が無茶苦茶だなと思ったものの、薬のコーナーで車の電球も一緒に会計してくれるなんてとっても便利ぃ~と、庶民ならではの続・プチ・ハピネスを感じ、家に帰った。

 家に帰ると電球を取り換え、ストップ・ランプが本来の機能を果たすことを確認し、私は有能な自動車工になった気がした。

 そんなとき、かねてから「自分の部屋のTVを買いたい。来年の春からはどうせ独り暮らしになるんだから今から買っておきたい」と言っていた長男が、いよいよそろそろTVを買うと言い放ったので付き合いで電器屋に行った。
 32型でハードディスク内蔵のものが59,800円とお買い得で、たいした良い買い物をしたと、庶民ならではの続々・プチ・ハピネスを感じて家に帰ると、タイミング悪くその電器屋からダイレクト・メールが届いていて、それには3日後から会員様限定でオール10%オフということが書かれていて、私は小さく書かれていた「一部除外品があります」という文字に希望を託したものの、でも多分あのTVだって来週買えば10%オフになったんじゃないかという疑念は払い切れず、庶民ならではのノーマル・アンハピネスの気分を味わった。

 そのあと床屋に行き、久しぶりに前髪にパーマをかけ、髪にコシが出た頭にちょっと嬉しくなった。こうして1日が終わったが、要約すると、ラーメンを食べて、息子のTV購入に付き合い、床屋に行った、という実に過疎的1日だった。

 問題は背中~腰の痛みで、もしかするとありがたいことにもう10年以上発症していない尿管結石の痛みが、長い沈黙を破って大発症ではないかと不安になったが、その後痛みが強くならなかったということは結石ではなく、単に先週1週間、ちょいと慣れない仕事をしたせいだという結論に至らせた。

 私が結石の痛みにもんどり打った記録は、いまからほぼちょうど3年前に当ブログで「私が育んだ石」のタイトルでけっこう長々と何回にもわたって書いている。結石初心者の方にとってはけっこう参考になる内容だと自負している。さらに不安を煽るという点で。

 とにかく尿路結石(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石)の痛みは尋常じゃない。どんな体勢をとっても痛みは和らがない。どんなにHなことを想像しても苦痛はまったく緩和されない。

 結石を題材にした音楽作品がある。クラシック音楽というのはまったくもって侮れない。それはマレ(Marin Marais 1656-1728 フランス)の「膀胱結石切開手術の図(Le tableau de l'operation de la taille)」である。

 いや、正確にはこれは結石の苦痛を描いたものではない。タイトルにあるように、膀胱結石の手術のこの上ない苦痛を描いたものだ。
 当時の手術は衛生的に問題があり多くの人が手術によって亡くなったという。しかも麻酔もなかった。
 そんな命に関わる手術を音楽にしてしまう、ましてやこの曲では手術は成功するという内容は、手術失敗者多数の当時おいてはけっこう大胆な行為である。

 「膀胱結石切開手術の図(または、膀胱結石手術図)」は「ヴィオール曲集第5巻」(1725刊)の中の1曲。膀胱結石切開手術の図~快癒~その続き、という3部分に分かれており、語りが入る。
 第1部の語りの内容は次の通り(下で紹介するCDの解説書より転載)。

 手術台の様子
 それを見て震える
 手術台に登ろうと決心する
 手術台の上まで行き
 降りてくる
 真剣に反省
 腕と足の間に
 絹糸が巻きつけられる
 いよいよ切開
 鉗子を挿入する
 石が取り出される
 声も出ない
 血が流れる
 絹糸がはずされる
 寝台に移される

 とにかく、絶望的な語りとパニック、それを煽るような暗く悲しげな音楽が、命を賭けた極限の状況に置かれている患者の心情を見事に描いている。
 そのあとはいきなり快方。すっきりハッピー!
 申し訳ないが、はっきり言って笑ってしまいそうになる。

 樋口裕一が書いた「笑えるクラシック」(幻冬舎新書)という浅くてつまらない内容の本があった。私は僭越にもどうしようもないと酷評したが、こういう作品こそ取り上げるべきじゃないですかね。そういう深みがあるなら私だって尊敬します。

 今日紹介するのはアーノンクールのヴィオラ・ダ・ガンバによるCD(語りはアーノンクールの弟のフランツ・アーノンクール)。CDタイトルは「バロック期の標題音楽集」。1969録音。テルデック(タワーレコードDetour Collection)。

 なお、鈴木淳史は「背徳のクラシック・ガイド」(洋泉社新書)の中で、アーノンクール盤よりもパオロ・パンドルフォ盤の表現力を推している(私は未聴。現在入手困難)。