7d5d1e09.jpg  ある期間中は何度も何度も繰り返し聴いていたのに、いまとなってはまったく聴くことのない曲というのがある。

 嫌いになったわけではない。
 生で聴いて気に入って、たまたまFMですぐにエアチェックでき、それを何度も聴いていたものの、カセットテープを聴く物理的手段がなくなり、では新たにCDを購入したはいいが、それが全然気に入らない演奏で、かといって別なCDを買うまでもないか、というような具合で、かわいそうに私に見向きがされなくなった不幸なケースである。

 そんな曲の1つにシャブリエ(Emmanuel Alexis Chabrier 1841-94 フランス)の狂詩曲「スペイン(Espana)」(1880)がある。

 シャブリエは少年のころからピアノと作曲を学んだものの、父親の意向で1861年から80年まで内務省の官吏を務めた。しかし、ドイツでワーグナーの音楽に接し大きなショックを受け、役所を辞めて音楽に専念するようになった。

 彼は1882年にスペインに旅行したが、そこで受けた強烈な印象をピアノ曲「スペイン」にした。その後、指揮者のラムルーが管弦楽編曲することをシャブリエに強く勧め、シャブリエの作品中もっとも有名なこの狂詩曲「スペイン」が完成したのだった。

 私が初めてこの曲を聴いたのは1980年の札響の定期演奏会でだった。
 指揮はジャン・バティストゥ・マリ(彼はしばしば札響に客演してくれていた)。

 明るくて親しみやすくて、そして鳴るところはしっかりと鳴り響くこの小品に私はすっかり魅せられてしまった。全面的に良い意味で言うが、この曲は人々に広く親しまれる名曲としての通俗的魅力に満ち溢れているのである。

 その後、エアチェックした演奏で親しんだが(フィードラー/ボストン・ポップス響の演奏)、その後はCDを購入。しかし、フルネ指揮都響のこのオムニバス盤(DENON)、音は悪くないのだが音楽としては全然輝いてこないもので(明らかに録音のせい)、すっかりこの曲から遠ざかってしまった。

 最近になってapexの廉価盤を見つけたので買ってみた。
 ジョルダン指揮フランス国立管弦楽団によるシャブリエの管弦楽作品集だ。

 うん!やっぱりこの曲楽しい!
 満足!
 昔の親友に久しぶりに出会ったような気持ちになれた(昔の親友なんて私にはいないので、どんな気持ちかは想像ベース)。

 このCD、他に収められている曲は、んー、でも今一つ退屈。
 あのラヴェルまでもがシャブリエを評価していたというのに……

 1982録音。apex(原盤エラート)。

 私はスペインに行けないし、行きたいとも思わないので、昨日からプライベートで東京に来ている。今日は鎌倉に行ってみる。
 私に顕在的音楽的才能があったなら狂詩曲「カマクラ」を書くところだが、一生潜在したままで終わりそうなので無理である。

 そうそう、おととい(木曜日)のお留守番中には「近くにできた焼肉屋のもので~す。ご挨拶に参りました。玄関開けてくれます?」という訪問者があった。
 開けません!
 近くに焼肉屋なんてできてないもの。
 近ごろこういう嘘を言って玄関ドアを開けさせようとする奴が多いらしい。実態は何か知らんが、妻によると2週間ほど前には「近くにオープンするイタリア・レストランの者です」というのもあったそうだ。
 もちろん2週間経った今も、近所には宅配ピザ屋1軒さえオープンしていない。
 だいたい、ドアを開けてもらえなかったとしてもチラシぐらい入れておくはずだ。本物なら。それがイタリアンでも焼肉屋でもなかった。
 うそつきは泥棒の始まり、ではなく詐欺の始まり……