1月の札響定期ではゲッシェルの指揮で「幻想交響曲」が演奏されるということを、特に求められてもいないのに先日書かせていただいた。←う~ん、謙虚ぉ~。
しかし、それだけではない。
もう1つの出し物がハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲なのだ。実はアタシ、このコンチェルトも病的なまでとは言わないまでも、けっこう好きなのである。
そしてこの曲の持つ、明るく振る舞っていてもどこか憂いがある感じと、ある思い出が濃密に結びついている。
大学生のときだ。
私にも付き合っていた女の子がいた。
言っておくが、私の心をスパイク長靴の底で踏みにじった、モモンガ・ハイツに住んでいた子とは違う。
その子が家に遊びに来たとき、私はちょいと自分のおしゃれさと鷹揚さをアピールするために、彼女にあるLPレコードを手渡し、「これをちょっとかけてくれる」と、彼女にディスクを取り出しセットしてかけるようにお願いした。
彼女は、でも「大丈夫かしら」とか遠慮するところなく-結局のところ、この非謙虚さがのちに別れる原因となったのだが-、大胆とも言える大胆な扱いでLPレコードをジャケットから取り出し、さらにシュリッと勢いよく中袋からも出し、ターンテーブルにのせようとした瞬間、万が一起こったらどうしようと思っていたことが、万が一の確率で起こってしまった。
LPレコードは嫌がるように彼女の手から離れ、床へと落ちた。
私のお部屋の床にはカーペットを敷いてあった。
だから通常ならディスクに傷はつかないはずだった。いや、傷ついたとしても軽微なもので済むはずだった。
しかしこの日レコードの落下地点には、彼女が背負ってきたデイパックが置いてあり、しかも金属製の小さな笛がぶら下げられていた(彼氏の家に遊びに来るのにデイパックだぜ!山ガールじゃあるまいし。しかも笛だよ!痴漢除けじゃなく、間違いなくクマよけだ。魔除けよりはまだ救われる気はするが)。
繊細なレコードちゃんは、それによって一生元に戻らない傷を負ってしまった。
私は「いいよ、いいよ」と言ったものの、そのときにただ「あっ!」とだけしか言わなかった彼女に怒りと失望感を覚えた。いくら私に言われてやったからといって、そしてわざとではない事故だからといって、「ごめんなさい」の一言もなく、「あっ!」だけってゆーのはないだろうが!
そのレコードは傷が癒えることもなく、聴くたびに第2楽章で「ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!」と6回にわたって痛々しいノイズを発するようになった。
そう。それがハチャトゥリアン(Aram Ilyich Khachaturian 1903-78 ロシア)のヴァイオリン協奏曲ニ短調(1940)のLPだったのだ。シェリングの独奏、ドラティ指揮ロンドン交響楽団の演奏だった。
なぜ、B面のプロコの第2番の方を下にして落下しなかったのだろう…… そんなことで、今日ご紹介するのはこの曲。今さら書かなくても、もう薄々気がついていただろうけど。
前にパールマンの独奏による演奏(メータ指揮イスラエル・フィル)のCDを取り上げたが(1984録音。EMI)、今日はとっても古い録音を。
リッチの独奏、フィストラーリ指揮ロンドン・フィルによる1956録音のものだ。デッカ。
さすがに最近の録音のものに比べると音は劣るし、独奏ヴァイオリンがいきなり左に寄ったあげく(ヘッドホンで聴いていると)頬のあたりに接近してくるようなところもあるが、それでも'56年録音とは思えない良い質を保っている。何より演奏が情熱的。私は好きだ。
ハチャトゥリアンの作品集で、ピアノ協奏曲、仮面舞踏会、第2交響曲と、おいしい作品が勢ぞろいしている!
新館入口(2014.6.22~)
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