先日“どら猫酔狂堂”と忘年会を挙行した際に、どういう話の展開からかさっぱり覚えていないのだが、ベリンスキー侯がクーデター計画を打ち明けるかのように私に言った。
「私はアーモンドチョコレートが好きです」
「は?」
「白と赤のパッケージの、明治のアーモンドチョコが好きなんです」
「はぁ……」
「MUUSANはお嫌いですか?」
「いや、好きですよ。ボタモチよりは相当好きです。でも、明治ならストロベリーチョコが絶品だと思います」
「そういうのもありましたね」
どうやらアーモンドチョコ以外には興味がないらしい。
少しいじってやろう。
「アポロチョコのストロベリー部分に比べると、ストロベリー・チョコは天にも昇る美味しさですよ。私はあれならペロッって食べちゃいますね。あっ、そうそうチョコベビーっていうのも明治じゃなかったでしたっけ?子どものとき、虫歯で穴があいた奥歯にチョコベビーを入れてみたんです。ぴったりのサイズだったんです、粒の大きさが。でも、即死するぐらいの痛さでしたね。同じようなものでも、正露丸を詰めるのとは真逆なわけです」
「アーモンドチョコはやはり明治でなくてはなりません。他社のは……」
「板チョコはどうですか?やはり明治ですか?」
「無論です」
「私は昔は板チョコは明治以外はないと思ってました。しかし今は違う。ロッテのガーナがいちばんですね」
ここでようやっとムッカマール氏が加わる。
「プッポポォ~」
昔のガーナチョコのTVコマーシャルの、アルペン・ホルン(要するに角笛)の真似をしたのだ。
私とベリンスキー侯はそれを、大昔の風林火山の軍団の戦の合図かいな、と思いつつもさりげなく無視した。
ベリンスキー侯はあきらかにじれていた。
そしてついにこう言った。
「でも、美味しすぎるから、1日5個と決めてるんです」
このことを言いたかったのだ。
私は大好きなものもきちんと節度をもって食べてますよ、と。
いい歳のオヤジが何言ってんだか……
しかし、このように自分を制するところはたいしたものだ。
美味しすぎるから、じゃなくて、糖尿病になったら困るから、というのが本音だろう。
で、私は自分で明治のアモチョコを買ってみた。
開封して、中身を数えると、23個入っていた。内容量は96グラムとある。
つまり1個の平均重量は4.173913043グラムである。頼むから割り切れるようにしてほしい。
ということは、ベリンスキー侯は健康のために、1回あたりの摂取量を20.86956521グラムに抑えているということだ。この数を見ただけで、精神的にはよくないような気がする。
ということで、私はそのとき13個食べた。54.26086955グラムである。
どうです?ベリンスキーさま、羨ましいでしょう?
どら猫酔狂堂北海道支社の社員諸君、支社長を操るのにマタタビは要らない。アモチョコで十分だ!
そうそう、猫といえば先日TVに皆川おさむが出ていた。
今の彼である。つまりオッサンで、でぶっていて、アーモンドチョコを一度に4、5箱食べていそうな感じだ。そしてなんとなく普通じゃない風貌だった。怪しげな感じ。
皆川おさむといえば「黒猫のタンゴ」である。
大ヒットした曲だ。なのに宅急便のコマーシャルソングに使われないのは、やはり皆川おさむが過去に犯罪を犯したせいだろう。いや、単に迅速・丁寧・正確なイメージに、あのボケーっとした歌が合わないだけか?
タンゴといえばピアソラだ。 ピアソラ(Astor Piazzolla 1921-92 アルゼンチン)は作曲家であると同時にバンドネオン奏者。少年時代を過ごしたニューヨークで、父親から買ってもらったバンドネオンに魅せられた彼は、16歳でアルゼンチンに帰国したあとタンゴ演奏家の道へと進んだ。
しかし、クラシック音楽をやることもあきらめきれず、1954年になってパリのブーランジェ(Nadia Boulanger 1887-1979。世界最高水準の音楽教師と言われている)に師事する。ピアソラはブーランジェから「あなたの進む道はタンゴである」と言われ、再びタンゴ音楽に取り組むこととなった。その後はモダン・タンゴの作品を数々と作曲する一方、クラシックの作品も手がけた。
ここ10年、いや20年くらいだろうか。
クラシック音楽界にもピアソラ・ブームがじわりじわりと起こった。
私もブームに遅れまいとして聴いてみたが、正直なところ私が好む傾向の音楽ではない。
とはいえ、どら猫→黒猫→タンゴということで、CDを1枚ご紹介。
パサレジャのバンドネオン、ガロワのフルート、セルシェルのギター、バカロフのピアノ、チョン・ミュンフン指揮サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団によるピアソラ作品集。
収録曲は、
・「リベルタンゴ(Libertango)」(1974)【バカロフ編】
オリジナルはジャズ・ロック・アンサンブル版。古い因習から脱した自由なタンゴという意味を込めて「リベルタンゴ」と名づけられた。
・「アディオス・ノニーノ(Adios Nonino)」(1959)【バカロフ編】
ノニーノはピアソラの父の愛称。父を追悼する曲。
・「タンゴの歴史(Histoire du Tango)」(1986)【全4曲】
タンゴの誕生から現在までを30年刻みで追ったもの。「酒場1900」「カフェ1930」「ナイトクラブ1960」「現代のコンサート」の4曲から成る。
・「ブエノスアイレスの四季(Quatro Estaciones Portenas)」(1965,'69)【カルバレーロ編】
四季をテーマにした4曲から成る作品。曲の順序は秋、春、冬、夏。第4曲の「夏」は1965年にムニョスの舞台作品「金の垂れ髪」の挿入曲として書かれたもの。これが好評だったため、残りの3曲が作曲された。
・「タンゴ組曲(Tango Suite)」(1983)から第2曲【ガロワ&セルシェル編】
ブラジルのギター・デュオ、アサド兄弟のために書かれた3楽章から成る曲。
このCDは1996,99録音。グラモフォン。
うん。実に耳に新鮮に響く。
でも、やはり私にはずっと聴き続けることが難しい音楽である。
はまる人はとことんはまるんだろうけど……(その人は私とは健全な友好関係を築けないかもしれない)
タンゴと言えば、浅田真央が使っていたシュニトケのタンゴは、「仮面舞踏会」のようなブームにならなかったな……
えっ?バンドネオンって何かって?
簡単に言えばアコーディオンみたいな楽器です。
私は、本当は好きじゃないんだけど、ススキノのネオンをよく目にしてます。
なるほど、繰り返し効果ですね(笑)。
いや、いい曲なんですが、わたしとは波長が合わないようです。