シノーポリが振ったマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の「大地の歌(Das Lied von der Erde)」(1908-09)。
1946年生まれのシノーポリは、生地ヴェネツィアのマルチェルロ音楽院で学ぶ一方で、パドヴァ大学で医学をも修めた。つまり、すごいことに指揮者であり精神病医でもあった。2001年4月、公演中に急逝。
彼の音楽解釈は、精神科医として作曲家の倒錯した心理や苦悩を視野に入れたもので、細かな部分まで明晰、その音楽表現はダイナミックではあるものの作品感情に溺れるものではない。
このような点からすると、精神を病んでいたマーラーの音楽はシノーポリにはかっこうの材料であり、もちろん精力的に取り組んでいたが、私にはあまりに客観的分析的すぎて作品がもつ生命力がややもすると不足するといった印象があった。
しかし、この「大地の歌」はそういうアプローチが見事に成功した例ではないだろうか?
冒頭から他の「大地の歌」とは違う。
独唱もオーケストラもいたずらに張りきらない。
感傷的な気分を強調したりせず、淡々と客観的なスタンスで音楽を進めていく。
第1楽章はともかく、全体を通じて非常に室内楽的に演奏される。水墨画のような世界。
特に第2楽章の始まりが特徴的だ。
その簡潔で非常に高い透明度は、最終楽章の「告別」において、聴く者があたかも歌詞の中の人物と同一化し溺れるのを引きとめ、救ってくれるかのようだ。逆に聴き手は(ある程度だが)冷静に音を聴き、あるときには向う側の世界としての情景を描くことができ、悲しく切ないドキュメンタリーを観ているような感じになる。そして、この作品のもつ厭世感が、個人的なものにとどまらない広さのものだということを痛感させられる。
♪
私がいまから9年前に札幌から大阪に転勤したときも、ちょうどこの季節だった。
感傷的になるつもりはないが、そのときも、今回も、「告別」の最後の部分の歌詞に強く共感してしまう。
いとしき大地に春来りていずこにも花咲き、緑新たなり!
遠き果てまで、いずこにも、とこしえに青き光!
とこしえに…とこしえに… (訳:渡辺護)
私がどこに行こうとも、当たり前に春はやって来て、いたるところで花が咲き新緑が萌える。
どこまでも永遠に新緑の青さ!
とても素敵な歌詞だ。
もっとも、マーラーは曲の終りを「死ぬように」演奏するよう指示しているのだけど……
困ったもんだ……
朝起きてびっくり!雪が50mくらい積もっていた。
急にたくさん降ったのだろう。除雪も入っていない。
JRもかなり運休しているようだ。
そしていま、私は日通が引っ越しの見積もりをしに来るのを待っている。
新館入口(2014.6.22~)
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