村上春樹の「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮社)は、いろいろな書評などでも評判が良い。
実際、読んでいておもしろかった。
でも、「最近の音楽関係の本では最高の出来」みたいな言葉にでくわすと、「そこまで言う?」と、あまのじゃくな私は言いたくなる。
いや、ひねくれてるんじゃなくて、ましてや春樹氏に嫉妬してるんでもなくて、素朴にそう思う。
とはいえ、皆さんも読んでみてはいかがとは思いますけど……
この本のおかげで小澤征爾のCDの売り上げもの伸びることだろう。
実際、この私も本を読んだあと、小澤が振ったマーラーのCDを3枚も買ってしまっている。村上春樹、罪深い男よ!
私が買ったそのマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の3枚のCDのうち、これまで交響曲第1番と第8番を取り上げたが、今日は交響曲第5番嬰ハ短調(1901-02。その後もたびたび管弦楽配置を変更)。
オーケストラはボストン交響楽団。ライヴ録音である。
CDには録音データが記載されていないが、1990年10月のものだろう。
この演奏は、いつもの小澤征爾の演奏に私が感じているものに基づき、鑑賞前に独自に(勝手に)抱いていた妄想をはるかに上回るものだった。いや、悪いんじゃなくて、良かったのだ。
とても均整のとれた演奏だ。迫力もあるし、透明感もある。そしてアンサンブルは緻密だ。
この曲の模範的演奏と言ってもいいくらいかもしれない。
もともとこの曲は暗から明へと進行していくものではあるが、小澤の演奏は全体を通じて楽天的な印象がある。第1楽章だって葬列にすすり泣いたりしない。私の父が亡くなったとき見せた母の態度に通じるものがある。
私の母はともかく、小澤の演奏はこの曲の魅力を十分伝えてくれる。
だが、しかし、あまりにも危うさがない。
これも小澤の言う「ボストンは良いところを出す癖がついている」ってことなんだろうか?
そして毒も少ない。
いま小澤がこれを聴いたら'87年の第1番を聴いたときのように「もっと味付てもいいな」と思うのかもしれない。
ただ、この5番がスタジオ録音ではなくライヴであるおかげで、化粧の最終仕上げがなされていない。切り貼りがない(たぶん)。
そのためか、きれいなだけ、整っているだけのお利口さん的刺激不足録音にならないで済んでいる。そこがいい。
デッカのえろ、エロ……eloquenceシリーズ。
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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そう。そういうことです、いわゆる……