薬がなくなったので、いつもの病院に行って来た。
今回は覚悟していた。
1年を通じて継続している不摂生に加え(おぉ!継続は力なり!)、年末年始の非日常的な食事による-冷蔵庫の負荷を減らすために、庫内在庫を減らす努力を怠らない-栄養素が私の体内に沈着し、凝固し、ねずみ講的増殖を繰り返しているに違いなかったからだ。
朝。
まずは体重……
私は体重計に乗る前から看護師に言い訳めいたことをおどおどしながら言った。
「絶対太りましたから。間違いないです」
看護師は目盛を見て(私からは見えない)言った。「あら……」
「す、すいません……」と、うなだれる私。
「減ってますよ」
ほへ?
何だって?
「い、いま、何と?」
「前回より1.5kg減ってます」
ヒプ?
世の中不思議なことがあるものだ。2012年の怪奇第1号だ。
その後採血。
結果は午後。
午後の医師からの宣告タイム。
怒帝王が歌う“怒りの日”を聞かされる気分だ。
結果表を見て医師は言う。
「えっと、中性脂肪は……おっ!365か。まだまだ高いけど前回の474よりはずいぶん下がってるな。よし」
2012年の怪奇第2号だ。一時期の700台半ばと比較しても、半分とは言わないが、奇跡的な好転と言わざるを得ない。
「尿酸は……6.0!全然問題ない」
あぁ、薬を飲んでいるものの、それでもここまで落ちたことはなかった!怪奇第3号!
「血糖も問題ないし、おや、γ-GTPが正常値になっている」
こうなると、「いやぁ、私は血統が良いですからな、ははは」と高笑いもしたくなるちところだが、私はそんな軽率ではない。疑い深い私はそのとき、本当に私の結果表なのか名前を確認していたのだった。
間違いない。私のだ。
2012年怪奇第4号!こんなに乱発していいものだろうか?
でも、考えられるのは、ビールを飲む量を大幅に減らし、レモンたっぷりのハイボールを薬だと思って大量に飲むようにしたことだ。あと、ここ2週間ほど食欲不振の日が結構あったことか?
いずれにしろ、今年の、少なくとも1月期の私は健康だ!
で、かわいそうだが、健康でない人の話。
夭逝(ようせい)の天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレである。
彼女は1945年生まれのイギリスのチェリストで、16歳で衝撃的なデビューを果たした。
彼女が独奏を務めたエルガー(Edward Elgar 1857-1934 イギリス)のチェロ協奏曲(ホ短調Op.85(1900-01))は、まだ少女の面影が残っている彼女が、この悲壮なコンチェルトを見事なまでに弾きこなし話題となったというし、1965年に録音した演奏はいまでもこの曲の決定盤と言えるものだ。1965年ということは、彼女は20歳。この翌年にはピアニスト(いまではすっかり指揮者)のバレンボイムと結婚している。
ところが1971年、26歳のときに指先などの感覚が鈍くなってきていることに気づき、それは徐々にひどくなっていった。
1973年に入ると満足のいく演奏ができなくなり、この年の秋に“多発性硬化症”と診断される。そして、チェリストとしては引退、後進の育成に力を注いだ。
1987年、この病気の進行によって42歳で亡くなっている。
悲壮な重い雰囲気に満ち溢れているエルガーのチェロ協奏曲と、デュ・プレの悲愴な生涯を重ね合わせて聴いているわけではないが、この演奏は聴く者の心を打たずにはおかない(もう言い尽くされているけど)。
EMI。
コメント一覧 (6)
-
- January 29, 2012 12:21
-
> LimeGreenさん
ありがとうございます。緯度で、ですか……
-
- January 29, 2012 10:32
-
ジャクリーヌ・デュ・プレは、わたしがチェロを弾き始めるきっかけになったチェリストで今でも特別です。亡くなって10年の頃、BBC がドキュメンタリーを制作し、NHKで放映されました。少女時代の師プリースと思い出話をしながら練習曲を合奏するシーンや、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールのこけら落としで弾く、シューベルト「鱒」の練習シーンがとてもいい。活力に満ち、陽気でユーモラス。
「鱒」のメンバーはバレンボイム、パールマン、ズーカーマン(ヴィオラ)にメータがコントラバスで加わっていて、皆若々しく希望にあふれています。何度もみてしまいます。
今でもチェロケースは肩に背負わないで、デュ・プレっぽく手にさげて運んでます。
-
- January 28, 2012 18:50
-
MS=Multiple Sclerosisです。メイン州には症例が多いですね。緯度によってかかる人が多くなるそうだし。
-
- January 28, 2012 07:54
-
> LimeGreenさん
私は観たことないです。面白そうとは思うんですが。
あのぅ、恥ずかしながらお尋ねしますが、MSって何ですか?
-
- January 26, 2012 20:00
-
映画Hilary and Jackieを観ました。彼女はMSだったんですか、映画観たのが大分前だったし、勿論英語で観たんで、そこまで理解できていなかったかもです。
一度ご本人の演奏をじっくり聞いてみたいものです。
コメントする
新館入口(2014.6.22~)
このところの記事
ここ1カ月の人気記事
最新とは言い難いコメント
アクセスカウンター
- 今日:
- 昨日:
- 累計:
このブログの浮き沈み状況
サイト内検索
楽天市場(広告)
月別アーカイブ
タグクラウド
- 12音音楽
- J.S.バッハ
- JR・鉄道
- お出かけ・旅行
- オルガン曲
- オーディオ
- ガーデニング
- コンビニ弁当・実用系弁当
- サボテン・多肉植物・観葉植物
- シュニトケ
- ショスタコーヴィチ
- スパムメール
- セミ・クラシック
- タウンウォッチ
- チェンバロ曲
- チャイコフスキー
- ノスタルジー
- バラ
- バルトーク
- バレエ音楽・劇付随音楽・舞台音楽
- バロック
- パソコン・インターネット
- ピアノ協奏作品
- ピアノ曲
- ブラームス
- プロコフィエフ
- ベルリオーズ
- マスコミ・メディア
- マーラー
- モーツァルト
- ラーメン
- ルネサンス音楽
- ロマン派・ロマン主義
- ヴァイオリン作品
- ヴァイオリン協奏作品
- 三浦綾子
- 世の中の出来事
- 交友関係
- 交響詩
- 伊福部昭
- 健康・医療・病気
- 公共交通
- 出張・旅行・お出かけ
- 北海道
- 北海道新聞
- 印象主義
- 原始主義
- 古典派・古典主義
- 合唱曲
- 吉松隆
- 名古屋・東海・中部
- 吹奏楽
- 国民楽派・民族主義
- 声楽曲
- 変奏曲
- 多様式主義
- 大阪・関西
- 宗教音楽
- 宣伝・広告
- 室内楽曲
- 害虫・害獣
- 家電製品
- 広告・宣伝
- 弦楽合奏曲
- 手料理
- 料理・飲食・食材・惣菜
- 映画音楽
- 暮しの情景(日常)
- 本・雑誌
- 札幌
- 札幌交響楽団
- 村上春樹
- 歌劇・楽劇
- 歌曲
- 民謡・伝承曲
- 江別
- 浅田次郎
- 演奏会用序曲
- 特撮映画音楽
- 現代音楽・前衛音楽
- 空虚記事(実質休載)
- 組曲
- 編曲作品
- 美しくない日本
- 舞踏音楽(ワルツ他)
- 行進曲
- 西欧派・折衷派
- 邦人作品
- 音楽作品整理番号
- 音楽史
- 駅弁・空弁
BOOKMARK
読者登録
QRコード
ささやかなお願い
当ブログの記事へのリンクはフリーです。 なお、当ブログの記事の一部を別のブログで引用する場合には出典元を記していただくようお願いいたします。 また、MUUSANの許可なく記事内のコンテンツ(写真・本文)を転載・複製することはかたくお断り申し上げます。
© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
お久しぶりです。コメントありがとうございます。シスターMさんにとって、デュ・プレは特別すぎる存在なのですね。
ところで、事情はまったく知らないですが、私はバレンボイムがデュ・プレと離婚したということもあって、バレンボイムは好きになれません。