c8840e78.jpg  ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルによるショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)の交響曲第6番ロ短調Op.54(1939)。

 この曲もまた不思議な曲だ。
 名誉挽回として発表した交響曲第5番で、その狙い通り危機を脱したショスタコーヴィチだったのに、次に発表した第6番は自虐的、ドM的に、再び批判対象になるような内容。なんでこういうことを思い立つのかひどく不思議、不可解、奇奇怪怪。

 異様に暗い、というよりか、恐怖におびえるような第1楽章(これがまた、全曲の中でバランスを崩すがごとく長い)、そして第2、第3楽章へ進むにつれて明るくなるが、やけのやんぱちから騒ぎ、誰かにちゃちゃを入れるようなもの。
 これで当局が、「なんじゃい、これは?」と眉間にしわを寄せ、こめかみをぴくぴくさせないわけがない。

 で、演奏によってもこの曲は悲惨になったりする。
 自虐的、ドM的とショスタコーヴィチの狙いを解釈するのはいいが、演奏までスカスカになってしまうことがあるのだ。

 たとえば、スロヴァーク指揮チェコスロヴァキア放送ブラティスラヴァ交響楽団の演奏(1988録音。ナクソス)は、村上春樹風に言うならば、「掛け値なしにひどかった」。
 ショスタコーヴィチの裏の顔を表そうとしたのか(例えば当局を小ばかにするといったような)どうかはしらないが、まったく音楽に生命力がなく、だらだら進むだけ。録音のせいなのかどうなのかしらないが、出来そこないのエアイン・チョコみたいなスカスカな響きだった。

 さて、ペトレンコの演奏。
 またまた期待を裏切らずに、すばらしい!

 この曲が実は重厚だという面と、真の理由はわからないが軽快な面とのバランスが実に見事。第6番ってこんなに聴きごたえあったっけ、ってものだ。
 大推薦!
 録音もいい。これもナクソスなんだけどね……
 録音は2009年。

 さて、今日は9時から引っ越しの荷物出し。
 心配していた天気も、おかげさまで(誰のおかげだかしらないが)晴天。助かった。