先週の土曜日。
帰りの列車まで時間があったので、今回は行くまいと思っていたのにもかかわらず、タワレコのピヴォ店まで足を延ばしてしまった。
今回の出張では中村紘子の「チャイコフスキー・コンクール」(新潮文庫)を携えてきた。
その最初の方に、ヴァン・クライバーンのことが出てくる。
クライバーンは1958年に創設、開催された第1回チャイコフスキー・コンクールのピアノ部門の優勝者である。
その後、1962年に彼の名を冠した“ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール”が創設されたが、2009年のこのコンクールで日本人として初めて優勝したのが辻井伸行。そのおかげで、クライバーンの名を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか?
その第1回チャイコフスキー・コンクール。
アメリカの一青年が冷戦で敵対するソヴィエトのコンクールで優勝した。
それはそれは大騒ぎとなり、クライバーンの人気はハンパなものではなかった。
だが、この新たなるスターは休むことさえできなくなった。 どこでもチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾くことを要求され、新たなレパートリーを勉強する時間もなくなった。
そして腕の筋肉も、さらに心もズタズタになってしまった。
一日中、真っ暗な部屋に閉じこもるようになったという。
私はクライバーンの演奏(もちろん録音)を聴いたことがない。
高校生の時に、クラシック音楽が特に好きなわけではないが、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番だけは好きだという奴がいた。彼は「クライバーンのLPを持ってるんだぜ」と自慢げに話していた。そのことを思い出してしまった。
中村紘子はこの本のなかで(この本のもともとの刊行は1988年)、クライバーンの優勝記念演奏会について、「このとき演奏したチャイコフスキーとラフマニノフの協奏曲は、ライヴ録音盤で残っているが、特にラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の演奏の美しさは、今日に至るまでこれ以上の名演を私は知らない」と書いている。
そのせいというわけではないが、私はタワレコに行かねばならないような気になった。
チャイコフスキーの棚に行ったが、そのCDはなかった。
次にラフマニノフのところへ行った。
と、そこに見慣れた顔が写っているジャケットが。
おぉ、ペトレンコ様ではないか!
ナクソスのコーナーでも、ショスタコの棚でもないのに、「ペトレンコちゃん、こんなところで何してるの?」
私は危険なおじさんのようにつぶやいてしまった。
それはラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943 ロシア)の交響曲第3番のCDだった。レーベルはナクソスではなくEMI。
もう、アタシに内緒でこんなの録音しちゃって、水臭いんだから!
今日は交響曲第3番ではなく、一緒に収録されているとても有名な作品「ヴォカリーズ(Vocalise)」。
この曲は「14の歌曲」Op.34(1912)の第14曲だが(この曲のみ作曲年は1915)、いろいろな楽器のために編曲され演奏されている。
そのくらい有名。
ヴォカリーズというのは母音唱法のことだが、母音唱法で歌われるように作曲された楽曲のことも指す。
ペトレンコは、ショスタコーヴィチでも聴かせてくれるような、変に情に溺れないしっかりとした演奏を聴かせてくれる。当たり前のことながら、こういう“名曲アルバム”的存在の作品に対してもでもきっちりと取り組んでいることに、とっても好感と頼もしさを感じる。
2009-10録音。
ということで、ペトレンコのCDを手にした私は、もうすっかりクライバーンのことは頭から吹っ飛んでしまった。そのあとクライバーンのことを思い出したのは、JRに乗ってからだった。
母音唱法……
若い人は歌舞伎町とかでボイン商法に引っかからないようにね。
↑ どんなんだよ、それって?
新館入口(2014.6.22~)
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