もうすぐ連休前だからだろうか?
 このところ短いながらもけっこう説得力のある(?)お誘いメールが立て続けに来ている。

 「時間が全て解決してくれる」あの言葉があったからこそ、一人でも頑張ることが出来ました。
 月日が経つのは早いですね。話したいことがたくさんあります。
 友達リストの最新の所に番号を書いたので、直接、話しましょう
 From: 真由美
 http://sml-cojp.info/member/pp.do?pp**********


 今度のお店は評判も良いみたい。★★★★☆になってたから、レビューを一応見ておいて下さいね。
 http://sml-cojp.info/member/pp.do?pp**********
 あの時に嫌な思いをさせちゃったので、今回は、ご馳走させて下さいね。
 From:美由紀


 住所と地図を載せてあるので、気軽に遊びに来て下さい。お土産とかはいらないですよ(笑)
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 五十路に突入した敏子より(照)

 個室居酒屋を予約しようと思うのですが、ここで良いですか?
 http://sml-cojp.info/member/pp.do?pp**********
 料理は美味しいらしいけど、ちょっと照明が暗いみたいです。
 FROM:らんちゃん


 ゴールデンウィークに突入してしまったら世の多くの男性もいろいろな予定が入ってしまい、こういうお誘いに引っかかる人が少なくなると危惧して、駆け込み勧誘をしているのではないかと思う。

 真由美~感謝を装って再会を求めている。こういうのって、「おやっ?こいつ誰だったろう?もしかしたら本当に知ってる女性かも」と、受取人男性の頭の中はグルグル回る。なかには幼稚園の頃に同じ“ひよこ組”だったまゆみちゃんまで対象の可能性をさかのぼっている人もいるかもしれない。でも、時間はいったい何を解決したのだろう?あ、そっか、それは直接話さなきゃわからないってことね。

 美由紀~食い物で機嫌をとろうというタイプ。柔道部員とかアメフト部員なら引っかかるかもしれない。「今回は」ということは、前回はこちらがご馳走させられたということか?少なくとも私にはそういう記憶はない。ストーリーを描くとすれば「あのときは評判の良くないお店でごちそうしてもらったけど、特上カルビを10人前も食べてしまって支払いのときに嫌な思いをさせてしまった」と謝っているって感じか?支払い以前に、目の前でそんなに食われたら興ざめだろうけど。

 敏子~さりげなく五十路にふさわしい名前だ。このあたりからして巧みに考えられている。気軽に遊びに行くと、とっても危険な遊戯が待っていそうだ。お土産とかいらないっていうが、一般的にはこういう場合のお土産といえばたい焼きだろう。たい焼きなんかよりもいったい何が欲しいのだろう?そういうことを妄想しながら、エクアドル気分で手ぶらで遊びに行く男性もいるのだろうか?

 らんちゃん~なぜか彼女だけFromじゃなくFROM。ちょっと照明が暗いというところが夜行性オオカミの食欲をそそりそうだ。らんちゃんという名も、乱を暗示しているに違いない。きっとフランクフルトとはまぐりが美味しい店なんだと思う、とバカな男性は思い込む。

 ということで、送信元はすべて同一。
 彼らも休み前に一儲けして、連休はゆっくり家族サービスしようっていう考えなのだろう。

 最初っからこれは作り話、滑稽な見世物という視点で読むと、いずれのメールも短いながらもよくできてるなぁと私は思ってしまう。

875efb50.jpg  「私だけが、この野蛮な見世物芝居を解く鍵を持っているのだ」

 これはブリテン(Benjamin Britten 1913-76 イギリス)の「イリュミナシオン(Les Illuminations)」Op.18(1939)のなかで繰り返し歌われる歌詞である。
 「イリュミナシオン」はテノール(またはソプラノ)独唱と弦楽のための9曲から成り、ブリテンの名を広く知らしめた作品の1つ。

 ブリテンは英語の歌詞の声楽曲を数多く残しているが、この作品はフランス語の詩による。作者はフランスの詩人ランボー(1854-91)で、同名の詩集から8編がとられている。

 1. ファンファーレ
 2. 町々
 3. a.断章/b.古代
 4. 王権
 5. 海景
 6. 間奏曲
 7. 美しくあること
 8. 行列
 9. 出発

 この歌詞の内容を一言で説明するのはなかなか難しい。二言、三言でもかなり難しい。
 なんだかすごく奇妙な詩だ。
 そしてブリテンの音楽は、暗く不気味さが漂う一方で華やかさもあるこれまた奇妙な感覚のものだ。なお、第1曲「ファンファーレ」と第6曲「間奏曲」で、上に書いた「私だけが、この野蛮な見世物芝居を解く鍵を持っているのだ」と歌われる。

 この不思議感覚は聴いてみないとわからない。と、自分の表現力不足の言い訳としたい。

 作曲家自身が指揮した、ピアーズのテノール独唱、ロンドン交響楽団の演奏を。
 1966録音。ロンドン(デッカ)。