苦悩の記事、あっ間違った、昨日の記事のなかには、ラフマニノフとペトレンコという言葉が横たわっていたことを覚えていらっしゃるだろうか?
その流れを受けて、今日はその2つを網羅するペトレンコ指揮によるラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943 ロシア)の交響曲第3番イ短調Op.44(1935-36/改訂1938)。この曲を取り上げるのはマッケラス盤に次いで2回目。
フランクの交響曲が3楽章構成でちょっぴり変みたいなことを書いてしまったが、実はドイツ風の交響曲が4楽章が基本なのに対し、フランス風は3楽章なのである。だから、フランクの交響曲を変なもの扱いするのはお門違いってもんだったのだ。
Sorry,Franck!
でも、同じフランスの交響曲でも少し時代をさかのぼったベルリオーズの「幻想交響曲」。あれは5つの楽章から成っていて、当時としてはこれはかなり異質だったろう。
なんでこんなことうだらうだら書いているのかというと、ラフマニノフの交響曲第3番が3楽章構成だから。つまりフランス風で、実際フランクの交響曲と構成が似ている(第2楽章がドイツ風交響曲における第2、第3楽章の2つの役割を果たしているような性格)。
ラフマニノフはロシア革命のあとにロシアを捨ててスイスに定住した。さらに1935年にはアメリカに永住したが、この曲はそのアメリカでの作品。そのため、遠い祖国ロシアを想う感情が濃いと言われる。
交響曲第2番と比べると歯切れのよいメロディーが多く、躍動的だ。また、第1楽章の序奏の激しい動機は第2、第3楽章でも現われ、全曲の統一感が図られている。
また第3楽章はロシア的ではなく異国情緒があふれる。さらに、ラフマニノフが好んで自作に用いたグレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディーが現われる(同じくアメリカで作曲された「パガニーニの主題による狂詩曲」で「怒りの日」が使われていることは、特に有名)。
そこでペトレンコが指揮する演奏だが(オケはロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団で、マッケラス盤と同じ)、「おぉ、わが祖国ロシア!あぁ、わが故郷よ!」というような、感傷的表現に陥っていない。ロシア時代のラフマニノフの作品に比べると、曲自体の粘着性も張りなおしたシールのように弱くはなっているものの、それでもシールはシールだ(?)。ベタベタされるのが苦手な人には最適。って、ベタベタされるのが好きな人はあまりいないと思うけど(そんなことないか……)。
ショスタコの一連の録音と同様、ペトレンコが作り上げる音楽はスマートで洗練されている。が、バランスの良い情感もありたいしたもんである。
2009-10録音。EMI。
先日「ヴォカリーズ」で紹介したのと同じディスクである。
新館入口(2014.6.22~)
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