今さら書くまでもなく、ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、チェロ協奏曲史上の最高傑作である。文字通り最高の傑作だ。
音楽学的な構造など、つまり専門的なことは知らないが、とにかく聴いていても最高傑作だということがわかる。
そのドヴォルザークだが、協奏曲としては3曲残した。チェロ、ヴァイオリン、ピアノの各協奏曲だ。
H.C.ショーンバーグはこう書いている。
彼の協奏曲作品は生気を失っていない。彼は、ピアノ部分があまり効果的ではないが魅力的な『ピアノ協奏曲ト短調』、美しい『バイオリン協奏曲イ短調』、そして至高の『チェロ協奏曲ロ短調』を書いた。(「大作曲家の生涯」:共同通信社)
つまり、ドヴォルザークのどのコンチェルトも生命のオーラを放っているということだ。棺桶に片足を突っ込んでしまっているような顔色の悪い二日酔いの今朝の私とは違う。
そのドヴォルザーク(Antonin Dvorak 1841-1904 チェコ)のピアノ協奏曲ト短調Op.33,B.63(1876/改訂1883)。H.C.S氏曰く、「ピアノ部分があまり効果的ではないが魅力的な」コンチェルトである。
とはいえ、この曲の演奏機会は少ない。
このコンチェルトはチェコのピアニスト、スラスコフスキーの依頼によって1876年の秋に書かれた。その前年には交響曲第5番が書かれており、ドヴォルザークの国民楽派路線がはっきりとしてきている時期にあたる。
ドヴォルザークの評伝を書いたエリスマンは、「ボヘミアの光がこれほど控え目にそして詩情をもってドヴォルザークの音楽を照らしたことも稀である。精緻な構成をもつこの音楽には香気がしみ通っている」と書いているそうだ。
初演は成功したが、ドヴォルザーク自身は出来に満足せず、また批評も芳しいものではなかった。その主な理由は、ショーンバーグが指摘しているようにピアノのパートにあったようで、のちにはいくつかの改訂版が作られることとなり、現在は原典版と改訂版が存在する。
ただし、このコンチェルトについてドヴォルザークは、ピアニストの名人芸を披露するような曲を書いたわけではない、と述べており、ピアノを伴った管弦楽曲という感じだ。
第1楽章は重厚で、交響曲的なところがブラームスを思わせる。第2楽章は素朴でしっとりとしたメロディーが印象的。終楽章はもっとも民族的色彩が強い。
CDはリヒテルのピアノ独奏、クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団によるものを。
リヒテルのピアノを聴いている限り、ピアノ部分があまり効果的ではないなんて思えないのだが、それはリヒテルゆえだからか?
ちなみに、タワレコのオンライン・ショップでは、このCD、以下のように紹介されている。
1976年6月、ミュンヘンでの録音。当時、60歳を越え巨匠としての名声を確立していたリヒテル。一方のクライバーは、まだ45歳と指揮者としては何とも若々しい。とは言え、既に世界の歌劇場において精力的な活躍を見せていた訳で、この録音においても彼の俊才ぶりは十二分に実感出来ます。この録音は、2人の巨人の奇跡的出会いが生んだ白熱の名演であり、EMIが誇る不朽の1枚。チェロ協奏曲の陰に隠れて比較的地味なこの作品の魅力をフルに伝える事に成功している印象。第1楽章の構築性、第2楽章の内省、終楽章の躍動感…、絶妙のテンポと丁々発止の2人のやりとり。正に、全編聴き所たっぷりと言えるでしょう。高音質化で評価の高い“HQCD”仕様盤にて、巨匠リヒテル一流のピアニズムとオケ・パートの充実した響き、天才指揮者クライバーのアプローチの異能ぶりがより明白に感じ取れます。
原典版を使用。
1972録音。EMI。
なお、この曲を書いた1年前、ドヴォルザークは生まれて間もない娘ヨゼフィーナを亡くしている。
その悲しみがこの曲全体を覆っているようにも思われる。
ところで、「くらいばー」を変換すると、「暗いバー」になる。
なんか、やだ。
もっとも明るいバーっていうのはないけど(雰囲気じゃなく、照明の話)。
新館入口(2014.6.22~)
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