d0ed9c79.jpg  ということで、やっぱり決行した。

 何のことかいなって?
 庭のラティス・フェンスの塗装である。

 塗装と言ってもペンキを塗るわけじゃない。ステイン剤のガードラックを塗るのである(一応、色がついていて、私が使っている色はチーク)。これは防腐・防かび・防虫効果がある。

 ご存知のように(あるいは、ご存知でないように)、この塗料はゴールデンウィーク中に私の手元に届き、ゴールデンウィーク中に私はこれを塗りぬり出来る予定だった。

 しかしそれは実現できなかった。作業のときに着ようと思っていたとってもエレガントなオーバーオールが間に合わなかった、のではなく、塗料がその期間内には届かなかったからだ。そのあたりの複雑な経緯についてはここに書いてある。
 それが昨日の夕方に届いた。

 前日の久々の庭仕事で腰は痛いわ、股間は張るわ、いや、これは誤解を招く。正しくは股間の太ももの筋肉は張るわ、手首はひねってしまって普通じゃないわ、剪定ばさみの使いすぎで握力は失われているわで踏んだり蹴ったりのコンディションの中、しかし、陽気に誘われ4940df46.jpg て私は塗りぬり作戦を実行した。

 上の写真が塗装前。下が塗装後である。
 光の加減は異なるが、いかに輝きを取り戻したかがおわかりいただけるだろう。

 いやぁ、この満足感。たまらんねぇ。

 1年間ですっかりくすんでしまったフェンスは、このように見事な変容を遂げたのだ!

 よく知らなかったが、同じころ、町内会による歩道の花壇づくりがあったようだが、すいません、参加せずに自分のことしか考えていなくて。でも、町内会活動のことは本当に知らなかったんです。

 その社会的活動に参加するために道行くわずかな人の視線を浴びながら(そんな気がした)、私は自分のことしか考えずに自分の家の庭のラティスにステイン剤を塗っていたわけだが、おもて面だけで今回は終了。
 その裏面やベランダの柵に取りつけているラティス、隣の家との境界に立てているラティスまで塗ると、きっと明日の朝は立ち上がれなくなる。
 過去、私は一気に作業をやってしまい、翌日になって整形外科にかかった方がいいくらいの病人に381099a9.jpg何度もなってしまっている。今回はぐっと我慢して、残りは次回以降に行なうこととした。

 ということで、「変容」である。

 伊福部昭が書いた「音楽入門」(全音楽譜出版社)に、次のような記述がある。

 たとえばエリック・サティの無類の傑作である「ジムノペディ(裸形の頌舞)」と、有名なシュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語れり」とを比べてみましょう。
 音楽の愛好者の中には、このニーチェの哲学の背景をもつシュトラウスの作品に接すると、あたかも自分もまた哲学者ででもあるかのような荘重な面持ちで、その音楽いかんにかかわらず、大いなる感動を示す人が多いのです。一方、サティの「ジムノペディ」は外見も単純であって、極めて緩(おだ)やかな一本の旋律が繰り返し奏される短少な曲なのでありまして、世俗
bc4733b9.jpg 的人気はシュトラウスに比ぶべくもありません。しかし、もし音楽を知る人であったら、その評価は完全に反対となるのです。「ジムノペディ」は人類が生み得たことを神に誇ってもいいほどの傑作であり、シュトラウスの作品は題名だけが意味ありげで、内容は口にするのも腹立たしいほどのものなのです。

 すっごいですねぇ。リヒャルト・シュトラウスをぶった斬り。
 伊福部昭の音楽作品を、私は神に誇ってもいいくらい好きだけど、彼が書いたこの文はさすがにR.シュトラウスがかわいそうな気がする(痛快な気もするけど)。それにしても、このあいだも取り上げたように、R.シュトラウスって、もちろん今でも人気作曲家ではあるけれど、かなり不評もかっているようだ。

 ちなみに「音楽入門」が発刊されたのは1951年。その後、1985年に一部改訂されて再刊。さらに、2003年に再々刊された(現在では「ジムノペディ」を「らぎょうのしょうぶ」という人はいるまい)。

 そのリヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss 1864-1949 ドイツ)の「メタモルフォーゼン(変容。Metamorphosen)」AV.142(1944-45)。副題として「23の独奏弦楽器のための習作(Studie fur 23 Solostreicher)」と付けられている。
9cd4a680.jpg  R.シュトラウスには「死と変容」という交響詩があるが、「変容(メタモルフォーゼン)」はもちろん別作品。

 別にR.シュトラウスをかばうつもりはないが、この作品は巨匠でなければ成し得ない深みがある。
 彼には珍しく、表面効果狙いみたいなところがまったくない。

 この曲が書かれたのは第1次大戦の末期。祖国ドイツがすっかりと破壊されてしまったことを悲しみながら作曲を進めたという。R.シュトラスはこの曲でドイツを追悼したのである。

 聴いていても、その悲痛さが伝わってくる。ただし、自作の「ツァラトゥストラはかく語りき」などのメロディも引用されている。すいません、伊福部センセ、怒らないでね。

 ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏を。
 2002録音。アルテノヴァ・クラシックス。

  確か今日は、宮部みゆきの「レベル7」のTVドラマがあるな。