6bbfdffe.jpg  土日はちょいと遠出したのだが、土曜日に走り出してほどなく車のダッシュボードに取り付けてある“レーダー探知機”、つまり取り締まり予知装置がうめき始めた。

 「充電してください」

 「ジュウデンしてください」

 「じゅうでんしてください」

 「Jyuudenしてくだ……」

 このレーダー探知機は太陽電池による充電式のものだ。
 このようなことは今までなかったのに、こやつはこのように訴え始めたのだ。
 しかも、実際の取り締まりをやっているときも、直前まで言葉を発しないくせに、あるいはついぞまったく声を発しないまま終わることが多いくせに、今回は執拗に自分のことを訴えてきた。

 間違いない。内臓の充電用バッテリーが弱ってきたのだ。

 「充電してください」

 「ジュウデンしてください」

 そして陽がさしてくると、

 「取り締り機に注意してください。危険です、危険です、」

 などと、正常に戻ったかのようなことをいっぱしに言うが、再び陰ってくると、

 「危険です、危険です、やっぱり充電してください」と叫ぶという具合だ。

 そのとき私は伊達市内にいた。

 Homacの看板が目に入った。

 私は同乗していた妻に「よし、あそこで新しいレーダーを買う!」と、いよいよもって買い換える宣言をした。

 するとこいつ、わが身の危険を察知したのか「危険です、危険です」を連発するようになった。復活したってわけだ。

 Homacには何種類かの探知機が売っていたが、安すぎるのは不安だし、かといって15000円近くも出す気にもなれず、結局は購入を見送った。7、8000円ぐらいならなんとなく性能も良さそうで価格もまあまあなので買ったところなのだが……。あと、配線が邪魔になるからソーラーがいいなぁ。

 手ぶらで戻ってきた私の姿に安心したのだろか?
 復活したと思ったのに、あいつは再び「充電してください」以外語らなくなった。
 ふん!買い換えてやる、絶対に。

 バーンスタイン/ニューヨーク・フィルによるマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の交響曲第2番ハ短調「復活(Auferstehung)」(1887-94/改訂1903)。1963年の録音である。

 これまで書いてきたように、ショルティとバーンスタインがほぼ同時期に進めていたマーラーの交響曲全集の録音。
 私はリアルタイムでその進行を知っているほどは歳を食ってはいないが、マーラーを聴き始めたときには、この2人の指揮者のどちらかによる演奏がマーラーの新たなスタンダード(という言い方は誤解を招くかもしれないが)だった。そして私は第6番(1970録音)、第5番(同)のLPですっかりショルティのファンになってしまったので、ほかの交響曲についてもショルティ主体で聴いてきた。

 交響曲第2番「復活」もそうである。ショルティの第2交響曲の録音は1966年。オーケストラはシカゴ交響楽団ではなく、ロンドン交響楽団だった。

 私がバーンスタインの演奏で初めて第2交響曲を聴いたのはLSOを振ったLPを購入したときだった。輸入盤2枚組。1973-74年の録音(米コロムビア)。
 余談だが当時のアメリカ盤の2枚組LPは、曲の収録順が、1枚目の表面→2枚目の表面→2枚目の裏面→1枚目の裏面であった。オートチェンジャーに対応してのことだったが、国内盤との違いに最初は驚いたものだった。
 さて、そのバーンスタイン/ロンドン響の演奏は、私にはどうもしっくり来なかった。録音の音場も気に入らなかった。

 バーンスタインのこの演奏、のちにDVDを購入した。
 当たり前のことだが、LPの思い出同様、このDVDを観ても(聴いても)全然私の心には訴えかけてくるものが希薄だった。さらに、あまりにも作り上げられた感が強い映像が(ライヴなんだけどね)壁1枚向こう側の世界にステージがあるようで、直接音楽が訴えかけてこない印象を持った。

 往年の名演と言われているニューヨーク・フィルとの1963年録音の演奏を、だから私は今回初めて聴いた。

 結論。もっともっと早くに知っておくべき演奏だった。
 アタシのバカッ!
 ロンドン響を先に聴いてしまったばっかりに、バーンスタインによる「復活」を敬遠してしまった私は、なんて愚かだったのだろう!

 わざとらしさがないかと言えば、それはウソになってしまうかもしれない。
 だが、この表現の壮大さ荘厳さは、聴く者(=私)をぐいぐい音楽へと引き込む。そして、悔しいけど感動させられちゃうのだ。
 もっとも、この演奏も、ショルティの66年録音の旧盤も、昔のスタイルって感じもしちゃうけど……

 バーンスタインの63年盤の独唱はヴェノーラ(S)とトゥーレル(Ms)。合唱はカレッジエート合唱団。ソニークラシカル。

 さて、レーダー探知機の話だが、帰路も「充電、充電」と電気を食い物にするお化けのようにうるさかった。
 そして、ついぞ私は新しいのを買った。……のだが……

 この話の続きはまたの機会に!