f157482a.jpg  とある居酒屋で、私はアルコールの摂取を伴う食事をしていたときのこと。ほどなくして6人の団体客が隣の席に座った。

 言葉からすると、おそらく中国人観光客だった。

 「なぜ観光客と決めつけることができるのか?」と、私を攻めようとするあなたにはこう答えよう。

 「だって、老女とおっさん3人とおばさん2人と小学生くらいの男の子という組み合わせだったんだもん」、と。

 もちろんこの集団が日中親善大使である。あるいは、全道高校野球北・北海道大会の運営に複雑かつ濃密な関係があるという可能性は否定できないが、通訳も伴わず居酒屋に飛び込んできたのだから、勇気ある自由行動をとっている観光客と思うのが無難だろう。

 店のお兄さんは注文をとるのにかなり難儀していたが、それでも大きな混乱もなく意向が汲み取られ、やがて料理がいくつか運ばれてきて(飲み物は水のように思えた)、消防車に放水されたカラスの集団のようにギャアギャア騒ぎながら食べていた。

 いったい何を食べていたのか、私たちの席と彼らの席の間には国境のようについたてがあって覗くことはできなかったし、首を伸ばして「おいし、あるか?」と聞く勇気もなかったし、料理の匂いも漂ってこなかったので、わからなかった。
 1つだけ垣間見えて確認できたのはホッケの開きを1皿頼んでいたということだ。
 中国人とホッケの開きというのは、なんだが妙な組み合わせに感じてしまった。イカゴロルイベならもっと妙に感じただろうけど。

 それでも、今回の一行は静かな方だった。
 前に洞爺湖温泉にある某菓子店の2階のレストランで騒いでいた連中は、まさに喧嘩でもしてるのかいなと思うほどうるさかった。ただそのときの一行は中国人ではなかったかもしれない。ハングル語だったような気もする。そういえば、このあいだ高速のPAで次々とトイレで横入りをした連中もマナー知らずでうるさかった。おしっこをしている時ぐらい、口を閉じてろよなぁ。

6023b7d3.jpg  このような方々が日本にお金を落としていってくれるのであまり文句は言えなし、民族性もあるのだろうから仕方ない面もあるが、でもウルサイ。

 昔、日本人が海外旅行をしだしたころ、ヨーロッパやアメリカでは日本人も同じような目で見られていたのだろう。“ノーキョー”という言葉が浸透したくらいだから。つまり、農協主催の団体旅行で訪れた農家御一行様があちこちでマナーもくそもあったもんじゃないとばかりに、やりたい放題だったらしい。

 筒井康隆の「農協 月へ行く」(角川文庫)は、それを独特の切り口で皮肉っている短編小説だ。
 彼の小説を私はそう多く読んできたわけではないが、着眼点というか発想は見事だ。
 ただ、これも彼の魅力なんだろうが、狂気と不衛生感が漂う。そこが私がのめり込めないところだ。
 「農協 月へ行く」の内容はここでは書かないが、とてもおもしろい。清潔感はないが。

 それよりも、この文庫本(平成2年第40刷)にはさまったままになっていたリーフレットに私は懐かしさを覚えた。そして、それはすぐに笑いに変わった。

19dafe71.jpg  いやぁ、この当時は確かにこういうのがプレゼントとしてインパクトがあったんだよな。ダブル・カセット搭載だもんなぁ。ダビングにひっどく便利だったろうなぁ。すっごいなぁ。
 時代を感じる。ホント、思わず笑っちゃった。

 ところでこの年、つまり1990年録音の「英雄」について今日は取り上げる。

 アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団によるベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)の交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄(Eroica)」(1803-04)。ライヴ録音である。

 先日、宮部みゆきの「英雄の書」にかこつけてハイティンク/ロンドン響の「英雄」を取り上げたが、同じく速めの演奏でもこちらとあちらでは全然違う。
 アーノンクール盤は聴いていて耳が離せなくなるような魅力がある(もちろん誇張して書いている)。
 
 このころからアーノンクールは古典派、ロマン派へと演奏レパートリーを広げ始めた。
 つまり、過度な歌いまわしや仰々しさを排除した、ピリオド(古楽器)演奏のアプローチによるシャープな切り口の演奏で、それまで聴きなれた作品の新たな表情(素顔と言ってもいいのかもしれない)を紹介し始めてくれたのであった。

 この「英雄」もビュンビュンと進んでいく。しかし決して軽はずみではない。小気味よく進むだけではなく、ちゃんと重厚さも失っていない。その重厚さはもたつかない。締まっている。

 もう20年以上前の録音だが、まだまだ聴くたびに新鮮に感じる。時代を感じさせない。同じ年数が経っているのにダブル・カセットとはずいぶんと違う。
 テルデック。

 さて、先ほど書いた異人観光客だが、老女+おっさん3人+おばさん2人+子供=は7人じゃないかと気づいたあなたは、このブログを真剣に読んでいる証拠だ。偉い!
 本当はおっさん2人。わざと3人って書いてみたわけ。私ってお茶目?