今の機械についに見切りをつけ、私は新しいものを求めてカー用品店へ行った。

 レーダー探知機の棚を見ると、「えっ?こんなに高いの?」というものばかり。
 唯一、1機種だけ4,980円というのがあったが、他は1万円を超える。2万円を超えるものまである。日々いつも運転しているわけではないので、そしてバカみたいな非安全運転をしているわけでもないので、こんなに高い物を購入する気はない。
 かといって、ヨンキュッパのものを買うんだったら、その性能の差はどうかは知らないが、伊達で買えばよかったってことになってしまう。

 ということで、あっさり退散。

 ソーラーで、感度が良くって、1万以内のコンパクトな機種ってないのだろうか?
 そう考えながら、次はジョイフル・エーケーに行った。

 ここには3機種ぐらいしかなく、ソーラーは1機種。やはりヨンキュッパ。
 他は1万円を超えるし、電源をシガーソケットから引かなきゃならなない。
 どうやらこういう高い機種はGPSだか何だかでの計測をするんだそうで、だから高いし電気も結構食うのでソーラーでは心もとないんだそうだ。

 結局私はヨンキュッパの物を買った。
 これなら伊達にいるうちに買えば良かったような気もする。
 機種はユピテルのEXP-D1。最低限の機能しかついていないが非常にコンパクト。もちろんソーラー。ダッシュボードに置いても邪魔にならない。
 そもそもコンパクトじゃないと、ドライヴ・レコーダーにポータブル・ナビが既に置かれている状況下では、設置する場所がないのだ(エアバッグの場所は塞ぐわけにはいかないので)。

 目論見とははずれたが、それでも多少ルンルンした気分になった。
 どれどれ、ネットで口コミを見てみるか。

 EXP-D1と入力してみる。

 まずはamazon。
 何?評価点数が5点満点の1.3だって?
 ガーン!!
 私はすぐに車に飛んでいて、取り外してやろうという衝動に駆られた。
 またやってしまったか?リサーチ不足の無駄買いを!
 ここで評価しているのは6人。声を拾ってみると、

 ・ユピテルのレーダー探知機は3台目ですが、これほど低性能のデバイスは初めてでした。目の前にオービスが見えてくるまで全く反応しません。一般道、首都高とテストしたところ、ほとんどのオービスに対してスルー(無反応)でしたが、何故か自動ドアには良く反応します。この手の商品では有名なメーカーさんなのに、何故、こんな物が市場に出回っているのか不思議で仕方ありません。

 
私は重~いため息をついた。

 ・レーダーとして全く機能しません! 感知するのが遅すぎます。 価格が価格ですからこんなもんでしょうか?

 涙目になってきた。

 ・取り締まり機が過ぎた後にピーピーと反応しただけでした(笑)正直使い物にならないですね~。皆さん買わない方がいいですよ!

 私はたった今それを買ってきたのだ。
 なんだか世間中から、「あの人、オバカね!」と陰口を叩かれているような気になってきた。

 気を取り直してYahooショッピングの評価を、藁をもすがる思いで見てみる。
 レビューしているのが2人だけのため評価なし。

 ・取りあえず目前のネズミ取りを回避したい人には良い商品だと思う。

 という声。ぶちっ!藁が切れた感じがした。

 やけ酒を煽りたい衝動を何とか抑え、今度は楽天市場。
 評価は4.48!レビュー件数25。
 おぉ、高得点!胃の痛みが和らいできた気がした。

 ・小さいデザインとソーラー電源が、気に入ってます。ユピテルの商品を10年間使用してからの買い替えです。感度は、旧タイプの方が、良いような?感じです。レーダーの直前でピーピー鳴ってびっくりしましたよ。
 ・コンパクトでバッテリーの持ちはよく、とても重宝してます、ただ、オービスに反応しない時がありますが、それはオービスの問題だと思い込ませてます。
 ・まだ、取り締まりに出会ったことはありませんが、ぴーぴー鳴っています。
 ・飛ばす訳ではないので、長距離を走る際に時々鳴るのを目覚まし代わりに使っている。
 ・この価格では、最近はやりのGPSなどは難しいですが、最低限の電波受信は十分にできています。
 ・設置簡単でした。感度良好。デザインも気に入りました。
 ・思ったよりコンパクトで良かったです。反応もいい感じです。なによりソーラーなのでコードレスで良い。
 ・早速パトカーからのレーダー電波をキャッチしてくれましたよ!
 ・直前にアラームがなるので、スピードを出しすぎていると間に合わないような気がしますが、お守り代わりに使っています。 ただ置くだけなので使いやすいです。


 あぁ、私はこれらの言葉にどれだけ救われたことか!
 決定的な好評価はないものの、amazonで奈落の底に落とされた私にクモの糸が下りてきたかのようだ。
 よし、少なくとも「まったく機能しない」ってことはなさそうだ。

 その2時間後。
 日曜日ではあったが、私は仕事関係の所要で片道1時間ほどの道のりを往復した。

 途中に2か所、オービスが設置されているところがある。

 カーナビが「この先1kmにオービスがあります」と注意を促してくれる。
 EXP-D1は何の音も発しない。
 カーナビが「間もなくオービスです」と言う。
 EXP-D1はだんまりのまんまだ。
 あと100mってところだろうか。EXP-D1は「ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。ピピピピピピピピ」と鳴りだした。

 おぉ、ちゃんと機能しているではないか!
 確かに「直前にアラームが鳴る」というのは当たっている。そりゃもっと早くから反応して欲しい。
 でも、これまでつけていたレーダー探知機は真下付近に来るまで鳴らなかったから、この買い替えで確実にレベル・アップしたことになる(なお、今回のはしゃべらない。アラーム音だけである。思い起こしてみれば、前に覆面に捕まったときも、これまでつけていた探知機は沈黙していた)。

 あぁ。よかったぁ~
 なんとか愚かなロバにならなくて済んだ。

 もう少し早く反応してくれたらという恨みはある。
 が、そのことは考えないことにしよう。
 逆に(まだ私にはこれから試練が待ち受けているような気がたぶんにするが)、誤反応でウソの警報がピーピーしょっちゅう鳴るよりは良しとしよう。

 ブクステフーデ(Dietrich Buxtehude 1637-1707 デンマーク)のコラール前奏曲に「愚かな口はよき言葉を語る(Es spricht der unweisen Mund wohl)」っていうのがある(H.4-3-8,BuxWV.187)
 この曲名を支えにしてもう少し様子をみてみよう。危ないよっ、ピーピーって反応してくれる(よき言葉)のが正しいとは限らないという証拠を求めて。

 でも、私が言ってることはどうもイソップの「すっぱいブドウ」っぽいな。

 ちなみに私が持っているCDはSpang-Hanssenのオルガンによる演奏。
 1993録音。Classico。