5361f36d.jpg  高校のころ。
 理系コースにいたくせに、私は数学が苦手だった。
 が、なぜか微分積分は得意な方だった。
 大学入試の数学の問題で微積ばかり出題されていたなら、もしかしたらもしかしたかもしれないが、いつも嫌がらせのように大嫌いな数列や確率の問題が含まれていた。

 音楽の世界にも微分という言葉が出てくることがある。
 微分音ってやつだ。微分音というのは半音よりさらに狭い音程のことをいう。

 ここで一般的なピアノの鍵盤を思い出してほしい。
 ドとレ、レとミ、ファとソ、ソとラ、ラとシの音の間は全音である。そしてこれらの白鍵の間には黒鍵がある。白鍵と黒鍵の間は半音である。
 ミとファ、シとドの間には黒鍵がないが、この2音の間は最初から半音であり黒鍵が入り込む余地がないわけだ。

 このようにピアノの音階は半音刻みである。1オクターヴのなかに12の音があるわけだが、これは1オクターヴを12等分しているわけで、これを平均律と呼ぶ。 

 しかし世の中、半音よりも幅の狭い音程もあるはずだ。それが微分音(微分音程)である。半音を半分にしたものを四分音、それをさらに半分にしたものを八分音という。その応用で、半音を3分の1に割ったものを六分音と呼ぶ。もちろん、ほかにもある。

 調律されたピアノなどでは微分音をそのまま出すことは出来ないが、ヴァイオリンなどの弦楽器だと簡単に出せる。弦を抑える場所をずらせばいいからだ。
 下手くそがヴァイオリンを引くと、音が合っていなくて聴いてる側には気が触れそうなくらいの居心地の悪さを感じるが、あれは間違いなく微分音を聴かされているためだ。

 ただ微分音が特殊に感じるのは、私たちがあくまで平均律を中心に考えているから。
 民族音楽ではそのような音が使われていることは少なくないというし、日本古来の音楽にもみられる。 

 ジョンストン(Ben Johnston 1926-  アメリカ)の弦楽四重奏曲第2番(1964)。

 CDの解説には「純正調と12平均律との差によって生じる微分音程」がうんたらかんたらと書いてあり、それは私にとってやっかいな理屈であるが、とにかく微分音を使った音楽である。

 とにかく、うん、この曲は前衛音楽である(、を入れ忘れて、うんこの曲、って書いてしまうところだった)。
 でも、「おーっ、こりゃ気分は微分なり」ってことはあまり感じない。

 私が持っているCDはライモンディとアジェミアンのヴァイオリン、ザスロフのチェロ、バーブのチェロによる演奏。
 ケージのHPSCHDとのカップリング。
 1970頃の録音。ノンサッチ。

 さて、先日のべリンスキー侯&アルフレッド氏とそのビョーキな仲間たちとの夜の話。

 この日は夕方にゲリラ豪雨となり、果たしてこの雨の中、会場となっている中華料理店に行く気力が私に湧いてくるだろうかと危惧されたが、幸いなことに会食時間前にはゲリラは地球防衛軍に追い払われ、カッパも傘も不要ないでたちで向かうことができた。

 場所は美珍楼という店。
 私がこの地でかなり気に入っている店である。
 なんといってもカニチャーハンが美味い!(当店エビチャーハン比による。なお、感覚は個人によって差があります)。
 雨が降ろうがネギラーメンが美味い!(当店麻婆ラーメン比による。なお、味覚は個人によって差があります)。

 ということで、べリンスキー侯、アルフレッド氏、ムッカマール氏、どら猫酔狂堂の私が初対面の社員・メディ賢さん(初登場。暫定的新命名)、先日初登場したどら猫酔狂堂の取引先の社員で熟女好きの姥向井君(新命名)、姥向井君の会社のN代表取締役、そして私という7名で紳士的に会食がスタートした。ほかに2人が遅れて合流する予定であったが、結論から言うと諸事情により私たちの前に姿を現わすことができなくなった。

 焼きギョーザを頼み、水ギョーザを頼み、さらに十勝牛の角煮、かに玉、エビマヨを頼んだ。アルフレッドはさらに麻婆豆腐を頼み、べリンスキー侯はザーサイを頼んだ。
 私はベリ侯に「ここのシューマイは美味しい」と言ったのに、「うんにゃ、シューマイは崎陽軒に限る!何といってもシューマイではなく、シウマイってもんで、ウマイが入ってる」と気合が入り始めたので、「じゃあ、ザーサイにしてください。なんてったってザーが入ってますから」とすっごく意味不明の説得をしたら、その説得に難なく応じたのだった。

 さて、〆として私はカニチャーハンを2人前頼んだ。
 やがて大皿に盛られてあつあつの湯気を放出しながらカニチャーハンが運ばれてきた。
 「もう食えないよ」「もう腹いっぱい」「姥向井君ならいける。まかせる」などとみな言っていたくせに、結局は各自皿に3口分くらいはとって、結局は「ウマイ!美味い!」と平らげた。

 さらに私は、最終局面としてネギラーメンを2人前頼んだ。
 やがて大丼に入れられあつあつの湯気を発散しながらネギラーメンが運ばれてきた。
 「いやぁ、姥向井君、全部食べていいよ」などとみな言ってたくせに、小茶碗に各自とって口にすると、「美味い!」「これはニーハオ!」「あっさりしててすっごくハオハオ」などと騒ぎ出し、おかわりまでする始末。そのせいで姥向井君の取り分が減ったくらいだった。

 このように中華三昧の夕べは終わったが、そのあとは2次会である。
 ここで、それまで物静かにあまりしゃべらなかったN代表取締役が変貌した。
 それまであまりに静かだったので「ねぇ、つまらないんじゃない?」と心配してアルフレッドに小声で聞いた私だったが、アルフは「人見知りしてんスよ」などと言っていた。

 ところが、アルコール量が一定水準を超えたあと、代表取締役は男好きだとということを告白し、そのキャラを顕在化し始めた。
 その部下である姥向井君はというと、年配のママが早く出勤してこないかなぁと、会ったこともないくせにママの年齢をバイトの姉ちゃんから教えてもらった段階でソワソワして、うふっ、おほっ状態の代表取締役など気にしない有様。男好きに熟女好きって、どういう会社なんだ?ここ。

 そうこうしているうちに今度はアルフレッドの目がすっかり座ってしまっており。隣にいた私に唇をとがらせて顔を寄せてきた。あぁ、どうしてこのとき私はポケットにハウス特選生わさびを用意しておかなかったのだろう!それがあればあの唇から大量注入してやったのに!
 
 「N代表取締役としなさい」と私は逃れ、丸干しイワシのような目(焼く前の)になっているアルフレッド氏、ようやく出勤してきたママの前でもじもじしている姥向井君、微笑む石像って感じに動きが止まったメディ賢さん、天井に向かってダジャレを連発しているベリ侯氏、誰を獲物にしようか手をすりすりしているN代表取締役、あまりに赤黒くなって壁と同化しているムッカマール氏たちを。
 これは危ない……

 ということで、アルフレッド氏は新たに何杯目かのハイボールのおかわりを作ってもらったばかりだったが、強制的に「楽しかったね。じゃあホテルに帰りなさい!私も帰るから」と解散したのだった。
 つまり私が言いたいのは、当初合流予定だった2人は自分たちの会食が長引いたことと、こちらが予想より早く終わったことで合流できなかったわけだ。

 以上のようにジョンストンの弦楽四重奏曲第2番は3つの楽章から成る。