605dfcb4.jpg  チェリビダッケには熱狂的な信望者がいる。一方で、「なにチェリ、チェリしてんだよ」と冷ややかな声もある(と思う)。
 私はどちらでもない。ただ、彼の演奏はそんなに聴いてこなかったのは事実。毛嫌いしていたわけでもなんでもなく、ふつうにチェリチェリしてなかっただけ。

 遅ればせながら最近になってチェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルによるブルックナー演奏をいくつか聴いた。

 ブルックナー(Anton Bruckner 1824-96 オーストリア)の交響曲ってこのところあまり聴かなくなった。そんなにたくさんいろんな演奏で聴いてきたわけではないが、でも、どの演奏で聴いてもなんだか物足りない。心に訴えかけてくるものがない。
 なんでなんだろ?

 タワレコをぶらついていたら、チェリビダッケ/ミュヘン・フィルによるブルックナー交響曲集が目に留まり、ちょいと買ってみた。

 で、交響曲第4番変ホ長調WAB.104「ロマンティック」(1874,第2稿'78,第3稿'79~80,第4稿'86)。

 はっきり言って、久々のブルゾク体験をしてしまった。いえ、ですから“ブルックナーで背筋ゾクゾク”体験です。
 この曲、聴いていてたいていどこかで気が抜けるというか魂がどこかに遊びに行ってしまうのだが、今回初めて聴いたときにはすっかり引き込まれ、挙句の果てにすぐにもう1度最初から聴きなおしてしまった。やられた!

 この演奏、いろいろな感想をネットと読むと「異端的」という声も少なくないが、私には異端とは思えなかった。テンポも、チェリビダッケのことだからすごく遅く進めるのかと思ったら、そうではない。が、たっぷり歌いまわすところなんかは、よくぞここをじっくりとやってくれました、と私は拍手喝采。男一人、部屋の中で感動にやけ顔で拍手喝采。異端的に不気味な光景。

 なんというか、とにかく大きな大きな演奏。重厚長大で壮麗。
 また最後の部分の弦で刻むリズムは、これまで耳で認識したことがなかったもの(なお使用楽譜はハース版。ノヴァーク版のスコアにあるような32分音符では弾いていないよう)。心臓の鼓動のようなリズムが、これまたすごくすっごくゾクゾク。来るぞ、来るぞ、「ばあさんや、は、はやく救心!」って感じ。何が来るのかはうまく言えないけれど。

 いいんです、周りの人が変だと言おうと、ちょっと違うと言おうと、私はこのブル4、ひっじょーに気に入ったのです。

 非常に気に入ったと言えば、アルフレッド氏はインデアンのカレーを気にいったようだ。

 おとといの午後は、ムッカマール氏とアルフレッド氏とともにわが社の取引先に、ある用件で訪問することになっていた。私は案内人ということでお付き合いしたのだった。

 そのへんの話はともかく、行く前に昼食をとろうということになった。

 アルフレッド氏がちょっぴりずるそうな目つきで私に言った。
 「実は、恥ずかしっすけど、ボク、まだインデアンのカレーを食べたことがないんすよね」というものだった。
 もちろん私は、「それは本当か?いい歳をして恥を知れ!」と罵ったりはせずに、大人の対応として「そうですか……、へぇ~」と答えた。

 社会人たるもの、あいまいな表現はよくない。もしそれが「だから今日はインデアンに行ってカレーを食べたい」とはっきり言ってくれたなら、こちらだってすぐに「いやだ!」とか「いいよ!」とか答えられる。しかし、「食べたことがないんすよね」→「そうかい」で完結することは決して不自然なことではない。
 でも、優しい私は尋ねてあげた。「食べたいの?」
 「はい」

 ということで、昼食はインデアンのカレーライスということになった。

 私は“インデアンカレー”を頼んだ(インデアン・ルー以外にも、ベーシック・ルーとかがある)。
 ムッカマール氏は「辛さが選べるってあるけど、かなり辛い?」と店員に尋ねた。
 「ふつうのはお子様でも食べられる辛さです。辛いのがお好きな方は極辛でも大丈夫だと思います」
 ムッカマール氏、「じゃあ、インデアンの激辛」
 アルフレッド氏、「じゃあ、インデアンの極辛」
 私はあわてて、「インデアン、ウソつかない!」じゃなかった、「中辛!」
 だってボク、もうお子様じゃないもん。

 アルフレッド氏はかなりの二日酔いだったようだ。
 だから辛さで汗をかき、アルコールを体の外に出したかったのだという。全然生理学的に正しくない屁理屈だが、彼は一生懸命汗をかきながら「辛っ!」と何度もつぶやきながら食べていた。
 なお、ムッカマール氏は極辛より1つ下の激辛だったが、なにせ平らげるのが3人中ダントツで速かったことを申し添えておく。

 カレーを食べて汗だくの3人は車で取引先へ。
 途中でアルフレッド氏が「なんか、ソフトクリーム食べたくなってきたっすね」なんて言うもんだから、途中の“道の駅”に寄って、ソフトを食べる。
 「なんか、観光みたいでいいっすね」と、仕事を忘れている様子。
 それでも打合せは無事終了。

 ところで、アルフレッド氏を二日酔いに追い込んだ(いや、自業自得か)日曜日の夜。
 べリンスキー侯や姥向井さん、札幌時代の私の同僚の鉋さんなどとともに居酒屋で飲んだ。
 残念ながら特筆すべきハプニングはなかった。残念である。べリンスキー侯が「バイアグラは効いた。自分じゃないみたいだった」と何かの折に訴えていたが、私はというと、和風スパゲティを食べるのに忙しく、「じゃあ実際、そこは他人のだったんじゃありませんか」とまったく不誠実に応えるのがせいぜいだった。
 私はその店一軒で帰ったが、そのあとアルフレッド氏は二日酔いへの道へと歩んだようだ。
 が、その二日酔いも極辛カレーとソフトクリームで完治。
 すごい。
 私なら完治するまえにおなかを壊すだろう。