欠点と天才的要素が(幻想交響曲のように)混じり合っていることは、ほとんどすべてのベルリオーズ作品について言えることである。閃きの瞬間があると思えば、その次に凡庸な個所や、だらだらと続く楽章がやって来る。ベルリオーズ自身の大雑把な基準に照らしてみても、彼の音楽形式は不満足なところがあった。形式の欠陥があっても致命傷にならない作曲家がいる。例えばシューベルトとシューマンがそうだが、2人はその代わりに、すばらしいメロディーを生み出せる異常な才能と、本質的にすぐれた素材を持っていた。ベルリオーズもその1人で、彼の場合は極度に感受性の強い想像力と、色彩に対する比類なき耳を持っていた。彼は最高度の訓練を積んだ作曲家でもなければ、自由自在に美しいメロディーを生み出す能力もなかった。
これはH.C.ショーンバーグが書いたベルリオーズ(Hector Berlioz 1803-69 フランス)についての文である(「大作曲家の生涯」:共同通信社)。
そしてこのことは、特に大きな作品、劇的物語「ファウストの劫罰(La damnation de faust)」Op.24(1845-46)によくあてはまると私は思っている。
ショーンバーグはこの作品についても同書の中で次のように書いている。
「劫罰」を例にとれば、要領の悪い節づけや延々と続く叙唱部が気になるが、それでも「ラコッツィ」行進曲にはスリルを感じ、奈落への行進の最中、皮膚がひきつるのがわかってくる。木管楽器の口笛を背景に、唸り声を上げるトロンボーンとバスーン、何という強烈さであろうか。
「ファウストの劫罰」は歌劇として上演されることもある声楽曲で、ゲーテの「ファウスト」の第1部による。
医学生だったころに読んだ「ファウスト」はベルリオーズの心を燃え上がらせたといい、彼の作品番号1となる音楽作品は「ファウストの8つの情景(8 Scenes de Faust)」(1828-29)というものであった。
「ファウストの8つの情景」はのちに「ファウストの劫罰」に取り込まれることになる。
「ファウストの劫罰」は4部から成るが、第1部が第1~3景、第2部が第4~8景、第3部が第9~14景、第4部が第15~19景である。
この曲、はっきり言って全曲に向き合って聴きとおすことはかなりきつい。
はっとするところ、メロディーに引き込まれるところ、スリリングなところはあるが、退屈さを禁じ得ない個所も少なくない。
が、大人だったらがまんして1度は聴いてみなさい。
きっと、「おっ、これは!」と思うところがいくつもあるだろうから。
この曲中、もっとも有名な「ラコッツィ行進曲」は確かに名曲であるが、そろそろ「ラッコツィ」だけから踏み出してみようではないか!
余計なお世話だって?
出過ぎた真似してすいません。
それでもしつこく、いま私がお薦めしたい全曲盤のCDは、ハイティンク指揮オランダ放送交響楽団&同合唱団、マルジョーノ(S)、コール(T)、クヴァストホフ(Br)、ヒュイペン(Bs)による演奏の、1999年ライヴ盤。CHALLENGE CLASSICS。
前にC.デイヴィスのライヴ盤を紹介したが、あれは録音も良くなくて、とにかく聴きとおすのが大変だった。でも、このハイティンクの演奏は、音もきれいだしライヴの荒さみたいなものがこの曲にプラスに働いていて、なかなか良かったりするのである。
そうそう、リストに「ファウスト」を勧めたのもベルリオーズである。
それから、サン=サーンスの組曲「動物の謝肉祭」の第5曲「象」では、「ファウストの劫罰」のなかの「妖精のワルツ」が使われている。
昨日は出張でこちらに来たアルフレッド氏と飲んだ。
いつもよりは飲み終わるのが遅かったので、現段階における私は、ちょいと寝不足である。
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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そうなんです。悪天候による交通障害で、アルフレッドはこの地に泊まっていくことになったのです。