8728aabd.jpg  “うしろの百太郎”や“恐怖新聞”で純粋無垢な子どもたちを怖がらせたのは「つのだじろう」である。

 ちょいと歌に自信があるおじさんがカラオケで熱唱してはみるものの、なかなか様にならないし、聞いている側としてもなぜか気恥ずかしくなってしまう“メリー・ジェーン”を歌ったのは「つのだ☆ひろ」である。

 パスタだかトマトソースだかのCMで「シチリアーナ」をリュートで弾き、それがヒットしたのは「つのだたかし」である。

 で、この3人、兄弟なんだそうだ。
 つのだ☆ひろの兄さんがつのだたかしでつのだたかしの兄さんがつのだじろう。
 たいしたもんだよつのだ兄弟。
 以上、読みにくかったでしょ?

 その「シチリアーナ」だが、16世紀末の作品とされる。作者は不明。
 この切なげな曲は、どのような場で演奏されたのだろう。って、あんまり思ってないけど……

 この「シチリアーナ」を含め、昔のリュート曲を原曲にして管弦楽曲を書いたのがレスピーギ(Ottorino Respighi 1879-1936 イタリア)である。
 「リュートのための古風な舞曲とアリア(Antiche danze ed aria per liuto)」がそれで、第1から第3までの3つの組曲がある(いずれも4楽章)。

 曲名を見る限りでは、たとえば「ピアノのためのおちゃめな幻想曲」っていうのがおそらくピアノで弾くのための曲であるように、「リュートのための古風な舞曲とアリア」もリュートのための作品のように取れなくもないが、上に書いたようにこれはオーケストラ作品。つまり、もともとはリュートのために書かれた曲を題材にしました、ってことである。

 その昔のリュート作品だが、サンタ・チェチーリア音楽院の図書館に楽譜があったもので、このときレスピーギはこの音楽院の教授を務めていた。

 第1組曲と第2組曲は管弦楽のための作品。第3組曲は弦楽合奏のための曲である。
  
 3つの中でいちばん有名なのは、あの「シチリアーナ」を含んでいる第3組曲(1931)。4つの楽章は次の通り。
 1. イタリアーナ~原曲は16世紀の作曲者不詳の作品。3部形式。
 2. 宮廷のアリア~16世紀のリュート奏者ベサールの作品が原曲。
 3. シチリアーナ~上に記したとおり、原曲は16世紀の作曲者不詳の作品。
 4. パッサカリア~17世紀後半のロンカッリの作品が原曲。変奏曲。

 ただ、第1組曲と第2組曲も美しく、また第3組曲にはない活気を備えた色彩的な佳作。
 どうも第3に比べ、兄貴分の2曲は不当な扱いを受けているような気がしないでもない。

 第1組曲(1917)の4曲は次の通り。
 1. バレット~モリナーロ(1600年前後に活躍)の「オルランド伯爵」という作品が原曲。小舞踏曲と呼ばれることもある。
 2. ガリアルダ~ガリレオ・ガリレイの父であるヴィンツェンツィオ・ガリレイ(1533-91)の作品が原曲。
 3. ヴィラネッラ~原曲は16世紀の作曲者不詳のもの。
 4. パッサメッゾとマスケラーダ~作曲者不詳の16世紀の作品を原曲とする。

 オーケストラ編成が第1組曲よりも大きい第2組曲の4曲は以下の通り。
 1. 優雅なラウラ~原曲はカロージョの作品。3つの舞曲を合わせた楽章。
 2. 田園舞曲~ベサールの作品が原曲。
 3. パリの鐘~メルセヌ他の作品による。前半が「パリの鐘」、後半がアリア。
 4. ベルガマスカ~15世紀後半から16世紀にかけて活躍したジャノンチェッリの作品を原曲とする。
 
 ところで「シチリアーナ」というのは、ルネサンス音楽の末期からバロック音楽初期に書かれた舞曲の1つ。「シシリエンヌ」や「シチリアーノ」という言葉も同義と言える(女性名詞、男性名詞といった違い)。
 この名の作品として他に有名なのは、J.S.バッハの偽作のフルート・ソナタBWV.1031の第2楽章や、フォーレの「ペレアスとメリザンド」の中の曲がある。

 ということで、第3組曲しか聴いたことがないという方には、ぜひとも第1と第2をお知りになることをお勧めしたい。
 全曲が収められたCDとして、ロペス=コボス指揮ロンドン・フィルによる比較的厚い響きの演奏をご紹介しておく。1978録音。デッカ。

 なお、「ピアノのためのおちゃめな幻想曲」っていう作品は実在しないので、くれぐれも島村楽器に楽譜の有無を問い合わせないように。

 さっ、今日はお仕事。
 お昼はパスタ!と言いたいところだが、会議のような催しがあって、そこで出されるお弁当である。私は幕の内弁当がかなり好きである。きっと片隅にはケチャップで味付けされたパスタ-つーよりはスパゲチィがふさわしい-も少々入っていると思う。