昨日の日曜日。
18時過ぎに観るとはなしにテレビをつけていた。チャンネルはテレ朝だったが、味の素(いまはAjinomotoと書くのが正しいのだろうか?)提供の料理番組をやっていた。で、番組の終わりで流れた味の素グループの企業コマーシャルで、私の耳に引っかかった曲があった。
アレンジのせいですぐにはわからなかったが、ユーマンス(ユーマンズ)の「2人でお茶を(Tea for Two)」だった。前に書いたように、この曲は「ノー・ノー・ナネット」というミュージカルのなかの1曲である。
この「2人でお茶を」を管弦楽編曲したのがショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)で、曲名は「タヒチ・トロット(Tahiti Trot)」Op.16である。1928年の作品だから、ショスタコーヴィチが22歳ころのときである。
ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」(中央公論社)には次のような“証言”がある。
もっと小さなくだらぬ作品を再現することにもわたしは成功した。ある指揮者の家に客に招かれたときのことである。そのとき、わたしは20歳を少し過ぎたところだった。レコードがかかっていた。その当時、流行していたフォックストロットのレコードだった。わたしはフォックストロットが気に入ったが、ただ、その演奏は気に入らなかった。
わたしはその家の主人に自分の考えを述べた。すると不意に、彼はわたしにこう言った。「ああ、この演奏がきみには気に入らないのか?いいだろう。もしもお望みなら、いますぐこの曲を思い出して楽譜に書きなさい。それを管弦楽に編曲しなさい。わたしがきみの編曲で演奏しよう。もちろん、きみならそれができるだろう。簡単ではないかもしれないが、一定の時間内にやってもらおう。きみに1時間をあげよう。本当にきみが天才なら、一時間でできるはずだ」。
わたしは45分間で仕上げた。(108p)
はて?
ここでは「2人でお茶を」という曲名は出てきていないし、「タヒチ・トロット」という語句もない。あるのは「フォックストロット(foxtrot)」である。
じゃあこのときショスタコが45分で仕上げたのは「タヒチ・トロットではなかったのか?……
フォックストロットというのは1910年代中ごろから流行ったアメリカの社交ダンスである。
で、ショスタコーヴィチには「フォクストロット」という曲もあるのである。
それは「ジャズ・バンドのための組曲(ジャズ組曲。Jazz suite)第1番」のなかにある。この組曲の第3曲が「フォックストロット」なのだ。
ただ「ジャズ組曲第1番」の作曲年は1934年。ということは先の“証言”にある「わたしは20歳を少し過ぎたところだった」と合致しない。
ふつうなら「わたしは30歳のちょっと前だった」と言うのが自然だろう。
ということは、どこでフォックスがタヒチに変わったのかは知らないが、ショスタコが編曲したこの「フォックストロット」が「タヒチ・トロット」ということなのだろう。そう書いてある資料もあることだし……
今日は1枚で「タヒチ・トロット」も「フォックストロット」も聴けちゃうCDをご紹介。
ヤンソンス指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏。1996録音。EMI。
味の素のCMを観たあと、チャンネルをuhb(フジテレビ系)に替えた。
サザエさんが始まった。観たかったわけではないが、何となくそうしてしまった。
「サザエでございまぁ~す」と、おなじみの声。
そして、ツッ、ツ・ツツツンというイントロのあと歌が始まる。
♪おさかなくわえたどら猫、追いかけて、
はだしで駆けてく、陽気なサザエさん
私は今回初めて思った。
「陽気な」じゃなくて「病気な」が適切なんじゃないだろうかって……
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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すっごく元気な女子学生だったのですね(笑)。「おっはよーーー」という表現に病気さ、いえ、陽気さが伝わってくるかのようです。