大学受験の浪人生活に入ってほどなく。
5月のある晩のNHK-FMの“FMクラシックアワー”
番組のテーマが何だったか忘れたが、その日はハープシコード(チェンバロ)奏者の小林道夫が解説を務めていた。
番組の中で私は1曲だけエアチェックした。どういう判断基準でそうしたのか、今となってはまったく思い出せない。
その作品はカール・ハインリッヒ・グラウンのハープシコード協奏曲ハ短調というもの。哀愁に満ちたその音楽は、当時の私の気分に「ぴったりぃ~っ!」って喜んでいる場合ではないのだが、とても印象的で、カセットテープを処分してから久しいいまでもそのメロディーが頭に残っている。
ところで、“クラシック音楽作品名辞典”(三省堂)を見ると、カール・ハインリッヒ・グラウンの項には「チェンバロ協奏曲」というのは載っていない。もちろん彼のすべての作品が載っているわけではない。しかし気にかかるのは、ヨハン・ゴットリーブ・グラウンの項に「チェンバロ協奏曲ハ短調」というのがあることである。あの時の作曲者紹介は間違っていたのだろうか?
実はこの2人のグラウンは兄弟。英語で言うならグラウン・ブラザーズってことになる。
カール・ハインリッヒ・グラウン(Carl Heinrich Graun 1704-59 ドイツ)は宮廷のテノール歌手だった人で、1735年にフリードリヒ皇太子(のちに大王となる)の宮廷で楽長を務め、歌劇や多くの器楽作品を書いた。宗教作品も20曲以上残している。
カールの兄がヨハン・ゴットリーブ・グラウン(Johann Gottlieb Graun 1702/03-71)で、弟よりも早く、1732年にフリードリヒ皇太子に仕えた。初期の古典派の様式のシンフォニアや協奏曲を多数残している。
グラウン兄弟は名声を得たが、2人が同じところで活躍していたこともあり、どちらが書いた作品かわからないものも少なくないという。
したがって、あのとき小林道夫が紹介したのが正しいのか間違いなのか、今のところ私にはわからない。
そのグラウンの協奏作品を集めたCDを。
収録曲は以下の5曲。
1. J.G.グラウン/弦楽と通奏低音のための交響曲
2. J.G.グラウン/ヴァイオリンとヴィオラ、弦楽と通奏低音のための協奏曲
3. ファゴットと弦楽と通奏低音のための協奏曲
4. リコーダー、ヴァイオリン、弦楽と通奏低音のための協奏曲
5. フルート、2台のヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲
3.~5.の作品は兄と弟のどちらか、あるいはグラウン兄弟以外の作かもしれないというもの。ただ、私がいまだ再会できていない「ハープシコード協奏曲ハ短調」とは、いずれの協奏曲も雰囲気がやや異なる気がする。
演奏はカペラ・アカデミカ・フランクフルト。
2007録音。CPO。
時代的にはC.P.E.バッハと重なり、またともにフリードリヒ大王に仕えていたことになる(C.P.E.バッハは1740年にフリードリヒ大王の宮廷音楽家兼チェンバロ奏者となった)。
このCDを聴く限りでは、音楽も両者には似たものがあり、刺激性と情緒に富んだものだ。
新館入口(2014.6.22~)
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