ペテルブルク音楽院に入学したショスタコーヴィチに、作曲を学ぶよう勧めたは音楽院長だったグラズノフだった。グラズノフはショスタコーヴィチの入学試験の結果を見て、「モーツァルトと同水準にある」と評価した。
S.ヴォルコフ著の「ショスタコーヴィチの証言」(中央公論社)のなかで、ショスタコーヴィチは次のように述べている。
なんといってもグラズノフは、わたしの会ったロシアの音楽家のなかで、もっとも巨大な存在の一人だったからである。
グラズノフがわたしの運命にもっとも重要な役割を演じたことは疑いない。
ショスタコーヴィチが尊敬し愛したグラズノフ。
しかしながら現在、グラズノフの作品が広く聴かれているとは言い難い。作品数は多いのに。
それはなぜか?
はい、なぜなんでしょうね?
彼はロシア国民楽派とチャイコフスキーの西欧的な流れを統一し、ロシア・アカデミズムという音楽を確立した。このロシア・アカデミズムの次の世代が近代ロシア音楽である。
ということは、過渡期と片付けられない大きな流れではあるのだろうが、どっちつかずに終わっているのかもしれない。その音楽も、国民楽派的なものがあったり、西欧的なものがあったり、もちろん両者が融合したりしている。決して悪くはない。いや、聴いているうちに“穏やかなロシア”のようなものが感じられてくる。それが中途半端な欠点とみるか魅力とみるかで評価は分かれるのだろうが、個人的にはもっと評価されてもいい気がする。
そのグラズノフ(Alexander Konstantinovich Glazunov 1865-1936 ロシア)の交響曲第5番変ロ長調Op.55(1895)。
「英雄」の愛称で呼ばれることもあるらしい。ちなみにベートーヴェンの「英雄交響曲」(交響曲第3番)の作品番号も55である。そのせいで「英雄」と呼ばれてるわけじゃないだろうけど。
先日彼の交響曲第4番を紹介したが、グラズノフの養女のエレーナはヨーロッパでは第4番の人気が高かったが、アメリカでは第5番が人気があったと語っているという。
曲は4つの楽章から成る。
Wikipediaのこの交響曲の項には、
“全般的に明朗な性格と鮮やかな生命力が漲っており、グラズノフ自身、この作品を「沈黙の響き」「詩の建築」と評した。ブラームス風の重厚で勇壮な第1楽章、メンデルスゾーン風の軽妙洒脱な第2楽章、シューマン風に内向的で感傷的な第3楽章というように、ドイツ・ロマン派音楽に作品のモデルを見て取ることができる。賑々しい終楽章では、民俗音楽に特徴的な旋律やリズムが素材に使われており、にわかに民族調をかもし出している”
と書かれているが、確かに曲の開始などはドイツで生まれた音楽のような響きである。
今日もセレブリエール/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏で。西欧的な表情を強めに出した明るく都会的な演奏である。
2004録音。ワーナー・クラシックス。
そういえば、やけどを負ったあのコンスタンチン君はいまいくつになったのだろう?
今日は久しぶりに札響の定期演奏会を聴きに行って来る。
エルガーの交響曲第1番が演奏される。
この曲も作品番号が55である。
新館入口(2014.6.22~)
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