11月10日15:00~。札幌コンサートホールKitara。
転勤して札幌から離れた私にとって、久々の札響定期である。
指揮は尾高忠明。ピアノ独奏はジョン・リル。
プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とエルガーの交響曲第1番。
エルガーの交響曲第1番はけっこう好きな曲だが、いろいろな不運が重なり今まで生で聴いたことがなかったもの。
いずれも札響のコンサートのときだったが、急に出張が入ったりして運命の神に邪魔されてきたのだ。
今回も急に何かが起こって行けなくなるのではと心配したが-急に重度の下痢で家から出られないとか、この日の午後、在宅していたら100万円をプレゼントするという申し出が誰かからあるなど-なにごとも起こらず、無事、コンサートに臨むことができた。
1曲目。
ベートーヴェンの「皇帝」。 若いころはこれを生で聴いていても長くて、退屈でつらいなぁと思ったし、積極的にディスクを聴くことも“ながら聞き”を除けばなかったが、歳を重ねるにつれ良さを感じるようになった。きっと私が皇帝になる日が近づいているからだろう。なんの皇帝か見当もつかないけど……
リルの独奏は派手さはないが、職人的な安定した演奏。こういうのって、案外と聴けることが少ない好演。
オーケストラも独奏を見事にサポートしていた。
「皇帝」は冒頭のピアノのきらびやかさに耳を目を奪われるが、上に書いたように、曲に引き込まれそびれると眠くなる。
この日も第1楽章半ばあたりから、私を中心に東西南北方向から寝息やらいびきやらが聞こえてきた。それは第2楽章でピークに達した。
いつからか知らないが、演奏会プログラムには左のようなマナーの注意書きが1ページを使って載っていたが、ぜひともいびきも加えてほしいものだ。そりゃ眠くなることもあるだろうけど、ずっと寝るなら演奏会場ではなくもっと快適な場所を選んで欲しい。
第2楽章ではPブロック、つまりステージの後方の席で、偶然か示し合わせたのか知らないが、7人の老女たちが並んで座っていて、揃いも揃って首を左に傾け眠りこけていた。
子猫が首をかしげて眠りこける姿は愛らしいが、老女が揃ってこんな状態だと何かが降臨したのかと思ってしまう。指揮者もいやになるだろうな。見ていて面白い光景ではあったけど。
休憩をはさみ、エルガーのシンフォニー。
締まった充実した演奏だった。尾高の特質と言っていいのかどうかはわからないが、熱狂的興奮を呼び起こすような演奏ではないが、ぞくぞくっとする箇所多数。札響の性格にも合っている曲だと思った。オーケストラ、力演!熱狂的興奮ではなく、ジワジワと興奮と感動に襲われた。
このエルガーはCD化のために今回録音していた。
プレトークで尾高が、「決して無理して咳をなさらないように」と抱腹絶倒、腹がよじれるくらいおもしろいギャグを言っていたが、単発的な咳は生理現象だからともかく、やっぱりいるんだよな。演奏中に執拗にプログラムをめくっているカサコソ虫とか、チラシ類を床に落とすバサットーリャが……
そうそう、今回久々に来場してシステムが変わったなと感心したのは、プログラムの冊子以外は入場時に配られないということ。膨大な量のチラシ類は強制的に渡されず、入場後に欲しいチラシを欲しい人がコーナーから取っていくという方式に変わっていた。
だったらさ、欲しくてたまらなくて持ってきたチラシなんだから、大事に胸に抱えてなさいよ。バサッと落とさないで。 さて、エルガー(Edward Elgar 1857-1934 イギリス)の交響曲第1番変イ長調Op.55(1907-08)の演奏で、今日はハイティンクがフィルハーモニア管弦楽団を指揮したCDをご紹介。この演奏、私はお薦めしない。お薦めしないCDを紹介するなんて、どこかヘンですかね?いえ、少しでもみなさんのお役にたてればなって思ったんです。でも、これが好きだって人もいるでしょうから、世の中って不思議ですよね……
威勢がいいというか、なんだか乱暴な演奏だ。
しばしばとても美しい響きも聴かれてハッとさせられるが、どこか落ち着いて聴いていられないのだ(ハッとするから落ち着けないのか?いや、そういうことではなく……)。アンサンブルが乱れているっていうわけじゃあないのだが、丁寧さが感じられない。オケが統率されていないんじゃないかって箇所がいくつもある。
うん、せわしないんだな、これ。
これは私の持っているハイティンクのイメージとはやや異なるものだ。
まあ、元気なのは良いことだし、情感豊かでもあるんだけど……
1984録音。EMI。
この曲の録音では、やっぱりトムゾンのがいいな。そんなにいろんなCDを聴いているわけじゃないけど。
そして、今回の札響定期のライヴ録音CDが出るのを、みなさん、私と一緒に首をダチョウにして待ちましょう。
けっこうな演奏でしたので……。録音されたのを聴くと、どうかはわかりませんけど……
昨日の午前中はインフルエンザの予防接種をしてきた。
いや、何となく言いふらしたかっただけです。
コメント一覧 (4)
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- November 11, 2012 16:15
- > atsushiさん
私も今回の1番のCD化、たいへん楽しみしています。が、数年前、ショスタコの8番をCDにする予定が(指揮は高関健)、事故があったとかでお蔵入りしたことがありました。ライヴ録音っていろんなことがあるようです。無事、録音できたことを祈ってます。
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- November 11, 2012 15:06
- いつも楽しく読ませていただいております。実は私も同日の札響の定期に行っていました。MUUSANと共感するポイントや、マナーの面で気になるポイントが全く同じなので驚いています。(いつものブログネタも私のツボを完璧についています。)「皇帝」は感動に乗り遅れて、気がついたら夢の中でフィナーレを迎えていましたので、P席の老女達の姿を確認することができなかったのは心残りです。エルガーの一番は、冒頭の旋律がフィナーレで登場するあたりは感涙ものでした。
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- November 11, 2012 12:23
- 私は東京公演で、関東の友人と合流し、同じコンビのエルガーの1番を聴いたことがありまいた。
定期演奏会まで、演奏会の日程が5日間空いていたので、レコーディングがあるのではないかと思っていました。
尾高=札響の3番のCDは、本人の真作ではないと疑問を持ちながらも、大変気に入っているので(MUUSANさんの言われるようなジワジワとした感動)、1番の発売をとても楽しみにしています。
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
いつも読んでいただきありがとうございます。
エルガーの1番は良い演奏でしたね。後半、金管のミスがちょいと目立ちましたけど、私は許します(笑)。マナーで書き忘れましたが、昨日は私の後ろの列の誰かが何度か足を私たちの列の背もたれにぶつけ、不快でした。「皇帝」が終わったあと、後列の面々を見てみましたが、老々男女ばかりでしたし、目が死んだイワシのような人たちばかりでしたので、深追いするのは止めました。けど、エルガーでも3回ほどありました。困ったものです。