札幌の老舗ギョーザ・チェーンは“みよしの”である。
かつてはけっこうあちこちに店舗があったような気がするが、いまはあまり見かけない。それでも調べてみると札幌や旭川などで全部で20店舗以上はある。
それこそ、私が小学校5年から住んでいた札幌市西区西野にかつてそびえ立っていた一大ショッピング・ビル“カスタム・パルコ”の地下飲食店街にもあったように記憶している。
ここでの珍しいメニューは-といっても、札幌市民をはじめ“みよしの”を知っているひとにとっては当たり前のようになじんでいるギョーザカレーである。
カツカレーのカツのかわりに、エビフライカレーのエビフライのかわりに、カレーライスの上にギョーザがのっている。
私は最初にこれを知ったとき、信じられないという気分だった。だってカレーにギョーザですよ。実際には美味しいのかもしれないが-長年の定番メニューとなっているのがそれを証明している-私はいまだ食べたことも、食べようと思ったこともない。
“みよしの”は現在では道内のスーパーのチルド品コーナーに当たり前のように並んでいる。
店で食べるというよりは、ご家庭で美味しいギョーザを、って方向性が主流になっている。
ギョーザのチェーンといえば、私の頭に思い浮かぶのは“餃子の王将”である。数年前に北海道にも上陸したようだ。ただ。私は食べたことがない。
先日、新聞にその広告が載っていた。
「おっ、いよいよ餃子の王将も通販に乗り出したか」と、感慨無量にまではならなかったが、ほほうと思った。のも束の間、よく見れば“王将”ではなく“王国”だった。 “餃子の王国”のギョーザが美味しいのかどうか、メジャーなのかどうか、私はまったくもって知らないが、広告としては紛らわしいだろう。それとも、そう思うのは偉大なる“餃子の王国”を知らなかった私だけか?
こういうのって、あまり誠意を感じないなぁ。私的は。だって、“王国”ってのを前面に打ち出していないもの。
“王国”っていう字のデザインを見て、似てはいないんだけど、私はあの“ローマの泉”の“ロ”の字を思い起こしちゃった。
それにしても、ギョーザの王国ですよ。どんな国なんでしょ?
ドヴォルザーク(Antonin Dvorak 1841-1904 チェコ)の序曲「自然の王国で(V prirode)」Op.91,B.168(1891)。
3曲から成る序曲集「自然と人生と愛(Priroda,zivot a laska)」の第1曲である。
ただし「自然の王国で」という邦題は誤りで、原意に近いのは「自然の中で」というタイトルだと言われる。そうなると、餃子の王国と遠縁になってしまうので、私としては無理して「自然の王国で」を採用してしまった。
すまない。
渡米前に書かれたこの作品は、その名の通りチェコ(ボヘミア)の自然を讃える壮大かつ美しい音楽。
はっきり言ってあまり聴かれることがないこのような曲でも、ドヴォルザークの音楽は魅惑的なメロディーにあふれ、精気に富んでいる。
私が持っているCDはガンゲンハウザー指揮BBCフィルの演奏によるもの。
1992録音。ナクソス。
あの広告には中途半端な大きさで“食欲の秋”って書かれているが、今日、この地には雪が降っている。