ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky 1882-1971 ロシア→アメリカ)の「管楽器のためのシンフォニーズ(Symphonie d'instruments a vents)」(1918-20/改訂1945-47)。副題として「ドビュッシーの思い出のため(Memoriam A.-CDebussy)」とある。
単一楽章の作品で、以下にも触れられているが、ここでの“シンフォニー”とは交響曲ではなく、バロック時代の器楽合奏(シンフォニア)の意味で用いられている。
H.C.ショーンバークは「大作曲家の生涯」(共同通信社)のなかでこう書いている。
早くも1921年に、ストラヴィンスキーは『管楽器のための交響曲』(「交響曲」という言葉は、幾つかの楽器の音が一緒に聞こえるという意味で用いられており、ソナタ形式とは関係がない)によって、自分が初期のバレエ曲ほどの人気を得ない種類の音楽に着手したことを、予告した。
彼は自叙伝(1935年)のなかで、この『管楽器のための交響曲』について、次のように述べている。 「この曲は間違いなく一般大衆に受ける要素や、聴衆がなれ親しんでいる要素を全く欠いている。情熱的な衝動や、ダイナミックな輝きをこの曲のなかに求めようとしても無益である。……この音楽は聴衆を“喜ばせ”たり、聴衆の情熱をかき立てる意図のもとで書いたものではない。にもかかわらず、感傷的な願望を満足させたいという欲求よりも、純粋に音楽を受け入れたいという願いの方が大きい人たちは、この音楽が気に入るだろうと私は期待した」
以上の字句は、ストラヴィンスキーの『春の祭典』以後のすべての音楽の意味を要約したもの、といえよう。聴衆がこのように反ロマン的で反センチメンタルな手法に共鳴するのは紺なんだろう、という彼の予感は正しかった。彼の崇拝者の多くは当惑した。
曲は無機質な響きではあるが、強烈な印象を与えるもの。
確かに情熱的な衝動はないが、すでに20世紀後半から現在に至るまでの間のいわゆる“ゲンダイオンガク”も経験している私たちにとっては、もはやさほど驚くべきものではない。
ただ、ストラヴィンスキー自身が述べている「純粋に音楽を受け入れたいという願いの方が大きい人たち」に気に入られたかどうかはともかく、この曲はストラヴィンスキーでなければ書けない強烈な個性が表れている。
ラトル指揮ベルリン・フィルによる演奏を。改訂版ではなく、1920年版を用いた演奏。
2007録音。EMI。
このCDには、ストラヴィンスキーの別な“交響曲”も収められている。
「3楽章の交響曲(Symphony in 3 movements)」(1942-45)である。
「3楽章の交響曲」はストラヴィンスキーの新古典主義の末期の作品。こちらも交響曲とは言っても、その様式には則しておらず、ジャズの要素も取り入れられている。
こちらの演奏のオーケストラはバーミンガム市交響楽団。2007録音。
さらに言うと、このCD(4枚組ボックスの1枚だが)にはバレエ「ペトルーシュカ(Petrouchka)」も収められている(1947年版)。
近年のニッポンでは“のだめ”の影響で、このバレエ音楽そのものよりも、ピアノ用に編曲された「ペトルーシュカからの3楽章」の方が有名になっている懸念があるが、この輝かしい響きのオーケストラ作品はぜひとも聴いてほしいものだ。
ラトル/バーミンガム市交響楽団の演奏(1986録音)は、複雑で絢爛豪華なこの曲を、精緻に安定して鳴り渡らせる。なのに、機械的にならず、チャーミングでさえある。
新館入口(2014.6.22~)
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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