1fc09b26.jpg  ハイドン(Franz Joseph Haydn 1732-1809 オーストリア)の交響曲ってほんわりと心地良いんだけど(本当はそれだけじゃないんだけど)、変化に乏しいのでその単調さにだんだん退屈になって、刺激欲しさに「うぅ~っ!もっと、もっと!なんならお尻ペンペンしてぇ~」と、“ぶってぶって姫”のごとく叫びたくなるのは私だけではあるまい(って、振り向くと誰もついて来ていないかな)。

 だが、交響曲第44番ホ短調Hob.I-44「悲しみ(Trauer)」(1772)は、ちと違う。驚くべきことに、全然眠くならないのだ!
 ハイドンの数ある交響曲の中でも、44番はユニークで個性的なのだ。ハイドン先生の秘めたる強い意志みたいなものを感じる。

 ウソかマコトか知らないが、ハイドンは自分の葬式ではこの曲の緩徐楽章(第3楽章のことだろう)を演奏してほしいと言ったという。実際、1809年に行なわれたハイドンの追悼記念行事ではそれが行なわれた。
 「悲しみ」というタイトルはそこに由来している。

 ハイドンの交響曲は、まったく冗談じゃないの?というくらいのタイトルを、あとから心ない(?)人によって付けられているが、こと第44番については曲調とそのニックネームがぴったりする。

 編成はオーボエ2、ホルン2、そして弦楽。
 4つの楽章から成り、第1楽章から悲劇的な雰囲気が渦巻く。
 が、この曲で最もすばらしいと私が思うのは第2楽章。メロディーといいモダンな雰囲気といい、かなりいける。
 第3楽章では弦楽器が弱音器をつけて演奏。しっとりシクシク感がたまらない。
 そして、ノーテンキになることなく、緊張を持続したまま最後の楽章も終わる。

 ヴァイル指揮ターフェルムジーク・バロック管弦楽団の、切れ味良い演奏を。
 ハイドンの交響曲集に収められているもので、発売元のコメントは、

 ブルーノ・ヴァイル&ターフェルムジークによる、ハイドン交響曲集。複雑な対位法を鮮やかに処理するアンサンブルとニュアンスの多彩さ。速めのテンポ、冴えるリズム。弾けんばかりの弦の弓、吹き鳴らすホルンと高域技巧。スリリングで、痛快なハイドン演奏。この録音では、ハイドン研究家 ロビンズ・ランドンが監修しており、芸術的・音楽学的コンサルタントとして、新たに楽譜を用意し、録音に立会い、楽団員の解釈上の疑問に答える役を担っているとのことです。ランドンは以前聞いたターフェルムジークの演奏に、19世紀の重々しさからの開放を聞き、楽譜に忠実に再現されていることに衝撃を受けたとのこと。それをきっかけとしてこのランドン監修が実現したそうです。

というもの。
 確かにこういう演奏で聴くと、ハイドンって実はけっこう魅力的かもって気になってくる。

 1992録音。ソニー・クラシカル(VIVARTE)。

 悲しいといえば、トヨタのコマーシャルだったと思うが、“ひょっこりひょうたん島”の歌が流れる。あの児童合唱を耳にすると、なぜかもの悲しい気分に襲われる。