この曲の開始は、まるで怪獣映画の中の、例えばファロ島とかインファント島とかランゲルハンス島なんかの神秘的だけど暴力的なものを予期させる原始臭ぷんぷんの場面で使われそうな性格を持っている。
なんの曲かって?
バルトーク(Bartok Bela 1881-1945 ハンガリー。ちなみにハンガリーの場合は日本と同じように姓が先、名があとに表記される)のピアノ協奏曲第1番Sz.83,BB.91(1926)である。
この作品の前にバルトークが作曲したものは、1923年の「舞踊組曲」。その後はおよそ3年間は作品を発表せずに民謡収集・研究やピアニストとしてのコンサート活動に重きを置いていた。そのブランクのあとに書かれたのがピアノ・ソナタとピアノ協奏曲第1番だった。
1920年前半まで、バルトークは民謡の語法を分解し再構築して自作品に取り込むスタイルだったが、ピアノ協奏曲第1番が書かれた1926年以降は粗暴ともいえるパワーと鋭さを持った音楽を書いた。
無調的ではあるが、バルトーク自身は無調音楽を否定しているし、新古典主義的である。 にしても、まったくもって暴力的な曲である。
こんな野蛮じゃ、なかなかお友だちはできませんことよ。
って、ことで耳には優しくないが、この過激さは伊福部作品同様、聴く者のミトコンドリアを刺激する。
なお、ピアノ協奏曲第1番の作曲動機についてバルトークは、「ピアニストとして演奏できる自作の協奏的作品がこれまでほとんどなかったため」と語っており、出来上がったこのコンチェルトについては、「上出来だが、オーケストラと聴き手の双方にとって非常に難しいのが難点」としている。
曲は3つの楽章から成るが、第2楽章から第3楽章へはアタッカの指示があり続けて演奏される。
ここで私が特に記しておきたいのは、またもや出てくるのということ。
何が出てくるのかと言うと、伊福部昭(Ifukube Akira 1914-2006 北海道)の「ミステリアン攻撃準備」によく似たメロディーが第3楽章に出てくるのである(最初はトランペットで)。
「ミステリアン攻撃準備」は1957年の映画「地球防衛軍(英題 The Mysterians)」の音楽の1つ。ミステリアンというのは火星と木星の間にある第5惑星ミステロイド(ミセスロイドと読み間違えそうだ)から地球にやってきた怪遊星人の名前だ。
このメロディーに似たのがグラズノフの交響曲第7番にもあることを前に書いたが、バルトークにも出てくるのである。いや、作曲順序から言えば、伊福部の方がそれらに似ていると言うのが時系列的に正しい。
なお、「ミステリアン攻撃準備」のメロディーはその後、映画「わんぱく王子の大蛇退治(The Little Prince and the 8-Headed Dragon)」(1963)の音楽で、メイン扱いで再び使われている。
バルトークのピアノ協奏曲第1番は、切れ味鋭いドノホーの独奏、ラトル指揮バーミンガム市交響楽団の演奏がお薦め。
1992録音。EMI。
「わんぱく王子の大蛇退治」は、2003年に組曲化されたものを聴くことができる。
本名徹次指揮日本フィル、弓田真理子(アルト)、コールジューン(女声合唱)による演奏。
2003録音。キング。
また、林友声/上海交響楽団のディスクでは、メイン曲だけだが、テンポを変えた2種の演奏が収録されている。
1997録音。キング。
新館入口(2014.6.22~)
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