381e1805.jpg  先週、私はヤマチ係長とともに本別町に行ってきた。
 レジャーではない。もちろん仕事だ。
 本別町の某所の某氏と打ち合わせがあったのだ。

 この本別行きは2週間ほど前から決まっていた。
 だから私は、この日はどうしても本別でラーメンを食べたいとヤマチ係長に泣きすがり、希望を受け入れてもらった。

 そのラーメンというのは、“黒マメ味噌ラーメン”である。
 この文字を雑誌で初めて目にしたときは、黒豆が入った味噌ラーメンか、黒色のマメ味噌ラーメンかと思ったが、少なくとも後者については、マメ味噌ラーメンというものを自分の中で連想することができず、可能性として却下した。
 でも黒豆が入った味噌ラーメンっていうのも誤りで、黒豆で作った味噌を材料に使った味噌ラーメンだったわけだ。なんといっても本別は豆の大産地なのである。

 勝手にけっこうボリュームあるラーメンを予想していたのだが(値段も820円となかなかだったし)、来てみるとごく普通の盛り。

c205b2f5.jpg  味噌の味は、う~ン、黒豆の味が……と唸りたいところだったが、よくわからんかった。
 が、味噌ラーメンのスープとしてはなかなかのお味。

 そしてもう1つの特徴は、けっこう太い麺だということ。
 箸が割り箸ではなく塗り箸だったので、麺を持ち上げにくく、かつ、一度はビョンと滑り落ちて黒マメ味噌ラーメンスープの滴が見事な放物線を描き、メガネのレンズをかわし、私の愛らしい左目に入ったのが難点だったが、摂食的にはこの麺がけっこう腹にズシンと来るもので、見た目以上におなかいっぱいになった(と言いつつも、小ライスを付けてしまったが)。

 にしても、麺の黄色とネギの緑、赤い糸状の唐辛子の色合いがよろしいことで……

 ツィンマーマン(Bernd Alois Zimmermann 1918-70 ドイツ)の「黄色なるものと緑なるもの(Das Gelb und das Grun)」(1952)。
 この作品について、私はほとんど何の情報も持ち合わせていない。なんだか、ちょいと刺激がある曲を聴いてみたいな、たまにはツィンマーマンのCDでも買ってみっぺかと、注文したに過ぎない。実に危険な遊び、いや、賭けだ。

9a34d0ff.jpg  CDに付いている日本語表記による作品名などが書かれているのを見ると、「黄色なるものと緑なるもの」は、F.シュネッケンブルガーの人形劇劇場のための音楽だそうで、プロローグ/ブルレスケ/小さなワルツ/幻影的魅力/行進/エピローグの6曲から成る。9分ほどの曲である。

 このCDには他に3つの作品が収められている。
 「ほんのわずかの無――(Un petit rien--)」(1964)は「マルセル・エイメの『月の鳥』にちなんだ、明るく三日月形で、鳥類学的な音楽」という副題を持つ、7曲から成る6分強の作品。
 その7曲は、夜の女序曲/月による変身Ⅰ/軍人たちのやかましい足音/月のプティット・ヴァルス/小鳥を強制的に眠らせる子守唄/月による変身Ⅱ/月の光のブギ・ウギ、である。
 その添付の紙によると、

 「月の鳥」は、フランス童話界の重鎮、エイメによる物語。月の光によって不思議な力を得て、自分のきらいな人を鳥に変身させることができるという、風変わりな先生のお話です。ツィンマーマンは、バレエ音楽としてこの作品を発表しました。メルヘンチックな雰囲気の作品ですが、風変わりな先生がなにやらあやしげな奇術をつかっているさまが目に浮かぶような曲です。

とのことだが、私には、それほどメルヘンチックな世界とは思えなかった。

 「オムニア・テンプス・ハーベント(Omnia Tempus Habent)」(1957)は、ソプラノ独唱と17楽器のためのカンタータで、高度なセリー音楽。なるほどノーマルな世界ではない。

 収録されている4曲のうち、最も聴きごたえがありノーマル臭が強いのは「メタモルフォーゼ(Metamorphose)」(1954)。これはなかなかの収穫。

 ツィンマーマンは晩年になって自分の音楽が理解されなくなったとしてピストル自殺している。1960年代後半からの彼の作品は聴きづらい、聴衆にとっては嫌がらせではないかというような音楽に変わっていったが、ここに収められている4作品はそのような変化が起こる前のもの。耳になじみやすいと言う気はないが、「ある若い詩人のためのレクイエム」のような、「うん、こりゃ自殺するのもなんとなくわかる」という病んだ音楽ではない。

 ヒルシュ指揮コレギウム・ノヴム・チューリッヒによる演奏。
 2003録音。WERGO。

 ラーメンを食べたあと、おしっこがレモン色になったわい。

 あっ、黒マメ味噌ラーメンは本別町の“道の駅ステラ★ほんべつ”内の中華レストラン“秀華”の一品である。

 指揮者の小松一彦氏が亡くなった。65歳。
 小松一彦は若いころから“ほくでんファミリーコンサート”などを札響を振りに来ていたが、のちに札響の専属指揮者(よくわからん立場ではある)に就いた。
 
 日本基督教団西宮教会で葬儀が行われるそうだが、私は彼の指揮するCDをあまり持ってないので、キリスト教に反するかも知れぬ伊福部昭の「釈迦」の初演時ライヴを昨日聴いたことをご報告する。