e0e66813.jpg  私は新聞の読者投稿欄っていうのをあまり読むことはないが、連休の狭間の1日付の北海道新聞でたまたま目にした札幌市中央区の80歳の男性の怒り、恥ずかしさ、願いがひしひしと伝わってくる文にはちょっぴり感心した。

 いかにも80歳って年頃にふさわしい言い回し。幾分もの迷いもない断定形。皮肉がこもった逆説的問いかけ。
 見事だ。

 もちろん考え方に偏りはあるが、私はけっこう共感してしまった。
 どうか、この国の首相としてふさわしい人物が現れるときまで達者でいてほしいと願いたい。

 マショー(Guillaume de Machaut 1300頃-77 フランス)の「恥ずかしさ、恐れ、疑い(Hont,paour,doubtance)」。

 三省堂の“クラシック音楽作品名辞典”によると、マショーはボヘミア王となったルクセンブルク伯爵の秘書官を務めた人物。1346年に伯爵が亡くなったあとは、伯爵の娘ボンヌ(フランス国王ジャン2世の妃)や、のちにフランス国王シャルル5世となる王子などに仕えた。
 僧職ながら、詩人そして音楽家として、トルヴェールの伝統に立った初期対位法的な世俗曲、および教会音楽を残し、フランスにおけるアルス・ノヴァを代表する、という。

73833b53.jpg  トルヴェールというのは、トルバドゥールの影響を受けて12世紀末から13世紀末にかけて北フランスで活躍した吟遊詩人のこと。
 また、アルス・ノヴァというのは、1320年頃にフランスの音楽家フィリップ・ド・ヴィトリが著わした記譜上に関する理論書の標題で、“新しい技法”の意。現在では14世紀の詩に密着して声部の動きの自由を獲得した新しい傾向をもつ音楽を総称する概念として用いられている。アルス・ノヴァの実践的完成者がマショーで、特に世俗音楽をより高度なものに発展させた。

 器楽曲「恥ずかしさ、恐れ、怒り」はファエンツァの写本(Codex Faenza)に楽譜が収められているという。
 ファエンツァの写本というのは、ボローニャ近郊のファエンツァという町に保存されている、14世紀以降の器楽曲をまとめた楽譜。まとめられたのは15世紀初頭である。

 ポッシュ指揮アンサンブル・ユニコーンの演奏による「ファエンツァの写本」というアルバムに収められている。
 1995録音。ナクソス。

 ところで、4月末に妻の実家に行ったときのこと。
 義父-投稿人とほぼ同年代-がTVのコマーシャルを観て言った。「北海道に吉野家ってあるの?」
 息子が答える。「あちこちにあるよ」
 「いままで吉野家の牛丼っていうのを食べたことがない。どんなもんか一度食べてみたい」

 確かに、大量に流れている相武紗季などが出演しているCMは実に美味そうに見える。

 とはいえ、実は私も偉そうなことは言えない。
 吉野家の牛丼は3回しか食べたことがないのだ。

 最初は今から20年ぐらい前。
 東京に出張に行って、上司と飲んだ帰り。その上司が腹減ったと言うので神田のホテルの近くにあった吉野家に入ったのだ。私なんて注文の仕方もよくわからなかった。で、食べたがそのときは私は特に空腹でもなかったこともあり、無感動かつ無感想。

 2回目は今から10年くらい前。
 ヨーロッパに出張したときに現地でアテンドしてくれた日本人-彼は取引先の人で、あちらに駐在していた-が、しきりに「吉野家の牛丼が食べたい」と言っていた。それは私の頭に刷り込まれ、帰国し帰宅すると近くの吉野家に行き、そこで食べるのではなく、持ち帰りを買って食べた。感想は、「う~ん、こんなもんか」。なぜ持ち帰りにしたかというと、家でビールを飲みながらゆっくりしたかったし、何より大阪だからってわけでもないけど、店内の殺伐とした雰囲気がね……

 で、3回目は今から5年くらい前。
 埼玉の、とある市に出張したとき。
 朝コンビニに行くと、たいした弁当がなく、駅に隣接した吉野家で、これまた持ち帰りを買って部屋で食べた。はっきりいって、早朝だというのに中にいた客たちはひどくガラが悪かった。朝帰りのヤンキーみたい、もしくは非行少年みたい(両者は一緒か?)のやら、浮浪者みたいなおっさんやら(日本酒を飲んでいた)。牛丼を手にぶらさげ、逃げるようにしてホテルに戻った。
 味?
 やっぱこんなもんか、って感想。
 まぁ、あの価格で食べられるんだからたいしたもんではあるけれど。

 で、義父の住む町はもちろん、周辺の街にも吉野家はない。
 今度行くときに、札幌から持ち帰り用を買って行くという手もあるが、あれって冷めるとねぇ。
 ということで、冷凍のを送ることにした。
 レビューによると、店と同じ味だっていうし。

 まあ、あれだけコマーシャルが流れていれば、食べてみたくなるよな。
 果たしてどういう感想を持つだろう?

 私も食べたくなってきた。
 店に行くのは嫌だから、冷凍を頼んでみることを検討しよう。