d98cb692.jpg  先週木曜日の新聞に、帯広交響楽団の定期演奏会の広告が載っていた。
 公演日は3日後の19日、日曜日。
 この演奏会のことは知っていたが、あまり興味をそそられなかった。

 が、3日前に広告が載るってことは売れ行きがかんばしくないのかなと思い、チケットも安いので(A席で1000円。3~4階席のブロック指定)買ってみた。
 ブロック指定というのが気に入らないが、じゃあS席は、というと、1~2階席ながらやはりブロック指定。座席指定はSS席だけで1階後方および2階前方中央部。Sが2000円で、SSが2500円。

 はっきりいってどんなオーケストラか知らないし、指揮者の名前は知っているものの、その実力のほどは私には未知数。さらにホールがどんなものかも知らないわけで、席取り合戦の心配が無用の座席指定は魅力だが、2500円を出す気にはなれない。S席もA席の倍の価格となると躊躇しちゃう。

 そんなわけで、3~4階席がどれくらいステージから遠方になるかはわからないものの、今回は1000円コースにした。そう決断したのは、当日はけっこう会場がガラガラじゃないかと、ひそかに踏んだせいもある。

 あらためて書くと、帯広交響楽団第35回定期演奏会。
 5月19日15:00~、帯広市民文化ホール。
 指揮は橘直貴、サックス独奏は須川展也。

 プログラムは、
 ① トマジ/サキソフォン協奏曲
 ② 加藤昌則/スロヴァキアン・ラプソディ
       (本公演では“スロバキアンラプソディ”と表記されている)
 ③ ラフマニノフ/交響曲第2番

 橘直貴は札幌出身。
 彼の方はまったく知らないことだが、実は私、まだ学生でホルンを吹いていたころの彼を知っている。知っているといっても、あるときたまたま同じ場に居合わせたというだけのことで、言葉を交わしたわけでもなんでもない。
 彼の指揮による演奏を聴くのは、今回初めて。

 須川展也については、日本におけるサックスの第一人者であることはご承知の方も多いだろう。

 帯広交響楽団(帯響=おびきょう)は、1987年結成の市民オーケストラである。
 市民オーケストラの演奏を聴いたことはほとんどないが、演奏会を通して感じたのは、予想していたよりも上手かったということ。

 さて、1曲目のトマジ(Henri Tomasi 1901-71 フランス)の「サキソフォン協奏曲」(1949)。
 私はこれまで、トマジの作品はトランペット協奏曲(1948)しか聴いたことがない。サックス・コンチェルトはトランペット・コンチェルトの翌年に書かれたことになる。サックスはアルト。
 
 また、加藤昌則についてはまったく知らなかったが、1972年神奈川県生まれの作曲家・ピアニストだそう。「スロヴァキアン・ラプソディー(Slovakian Rhapsody)」は、2005年のスロヴァキア・フィル来日に合わせ須川が加藤に作曲を委嘱したもので、アルト・サックスと2管編成オケのための協奏作品。
 スロヴァキア民謡「おお牧場はみどり」が用いられている。

 須川のサックスは、何も言えないぐらいすばらしい。
 オーケストラはというと、金管のピッチが安定しない。また、気負っているのか叫び過ぎの感がある。トマジではもっと繊細さと透明感が欲しかった。が、これは指揮者のタクトのせいか?加藤の作品は、サックスとオケの絡み合いというよりは、サックスとオケが一緒に突き進むような形の派手でイケイケの感じの曲で、こちらの方がオケのキャラに合っているよう。
 札響から応援に来ていたファゴットの坂口氏がコントラファゴットを吹いていた。札響のステージでは見られない珍しい光景だった。

 アンコールは朝川朋之の「セレナーデ」。
 サックスと弦楽合奏、ハープのための曲。ここでも弦の表情が固い。ただ、ホールの響きの影響もあるのかもしれない。

 後半は、ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov 1873-1943 ロシア)の交響曲第2番ホ短調Op.27(1906-07)。
 こういう言い方は失礼だが、地方都市での演奏会でプログラムに取り上げられるなんて、この交響曲もずいぶんとメジャーになったものだ(オケの編成も大きいし)。

 後半に入っても、響きはパワフルだが感情的起伏があまりなく表情が乏しい。
 味わい深さはあまりなく、暖色系の音色もあって、しっとりと来るところがない。ただし、個々の奏者の技量はけっこう高いようだ。金管は後半に入ってもピッチが不安定で、特に強奏になると音が汚い。ただし、よく起こりがちな大きなミスはないのはなかなか。一方、木管は音も美しく、レベルは高い。

 オケ全体もトゥッティになると音が混濁する。このあたりもホール事情がある可能性はあるが、弦と管のバランスが悪いのかごちゃごちゃした音の塊となってしまうのは指揮者のコントロール力に負うところも大きいだろう。

 そんなわけで、力のこもった演奏だが、一本調子。
 終楽章ではオケはけっこう疲れていたよう。出だしでは弦楽器が上ずっていたし、アンサンブルも怪しくなるところがあった。が、この無邪気に踊るような楽章が、いちばんこのオケに合っていたように思える。

fbb43ff4.jpg  この曲が終わったあと、また須川氏がステージ上に現われ、アンコールとして彼の独奏入りでラフマニノフの「ヴォカリーズ」。
 もちろんあらかじめ用意してあった演出だし、サービスとしてはありがたいもの。市民も大喜びだろう。
 が、オケだけで力演したあとだけに、最後はオケが主役のまま幕を閉じて欲しかった気もする。

 市民オケの活動はいろいろ苦労も多いだろうが、これからもがんばって欲しいと思う。
 1000円でこの体験ができるのは安い。が、空席がかなり目立っていた。席取り合戦を覚悟していたが、それは杞憂に終わった。
 私の立場としてはありがたいことだが、オーケストラにとっては残念なことだ。
 
 そんなんで、今日はテミルカーノフ/サンクト・ペテルブルク・フィルによるラフマニノフの交響曲第2番をここに紹介し、終わる。この録音、大太鼓の音がかなり素敵!

 1991録音。RCA。

 帯響とは全く関係ないが、冷蔵庫が突然冷えなくなった。
 ただの灰色の箱に化してしまったのだ。
 コンサートのあと、あわてて買いに行ったが、届くのは明日である。