e1feea61.jpg  クモは嫌いである。

 雲じゃなく蜘蛛のことだ。

 漢字だと虫へんだが、昆虫ではない。昆虫でさえ苦手なのに、昆虫もどきなのだ。苦手どころの騒ぎではない。

 貴志祐介の「狐火の家」を取り上げたときにそのことを書いた。
 だからバラいじりをはじめとする、ガーデニング作業では、私はかなりの緊張を強いられる。

 ただ、その記事のときは黙っていたが、「狐火の家」の文庫本に収められている「黒い牙」は、読んでいて背中が氷河期になるほど私にはぞっとする描写と内容だった。

 と書くと、まだお読みになっていない人は、「もしかして『黒い牙』ってクモが絡む内容なの?」と気づかれてしまうかもしれない。そうなんです。くもの、クモの、蜘蛛の話なんです。だから私は苦も感じたわけ。うん、つまんないな。

 ごめんね、書いちゃって。弁護士の青砥純子は依頼人のペットの話を聞きながら、猫のことだと思っていたのだが、ペットちゃんは蜘蛛だったのである。

 クラシック音楽作品にもクモが主役の曲がある。

 ルーセル(Albert Roussel 1869-1937 フランス)のバレエ「蜘蛛の饗宴(Le festin de l'araignee)」Op.17(1912)。

 ルーセルは25歳まで海軍の軍人だったが、その後作曲を学んだ。当初の作風は印象主義の影響を受けていたが、ストラヴィンスキーのバーバリズム(原始主義)を経たあと、新古典主義に達した作曲家。

 「蜘蛛の饗宴」はルーセルの作曲家としての名声を確立した作品。台本はヴォアザンで、ファーブルの「昆虫記」を基にしている。

 バレエのあらすじは、庭の片隅で大きな蜘蛛が網を張って獲物を待ち構えている。そこへ蝶がやって来て捕えられる。蜘蛛は喜びのダンスを踊る。そんなとき木の上からリンゴが落ちてくる。2匹のイモムシとカマキリがこのリンゴの争奪戦を繰り広げるが、蜘蛛は今度は争奪戦に夢中になっているこいつらを一気に捕え、饗宴の準備を始める。ところがその準備で目を離したすきに、カマキリは甲虫に助けられ、蜘蛛を逆襲し殺してしまう。庭には平和が訪れ、その出来事の間に一生を終えたカゲロウの葬式が行なわれる、というもの。

 いやだね。
 蜘蛛の饗宴というよりは蜘蛛の虐殺って感じだが、いずれにせよ、虫および虫もどき嫌いの私としてはぞっとする。
 が、音楽は印象主義の響きで、美しくかつ濃厚なもの。
 でも、かつてLP時代に出ていたマルティノン盤は、ジャケットに蜘蛛の写真が載っていて、そりゃあ気色が悪かったものだ。なんでそんなデザインにするんだよっ!

 このバレエ、主役(?)の蜘蛛に選ばれたダンサーは心中複雑だろうな。
 
 ルーセルは12曲から成るこのバレエ音楽を、7曲から成る演奏会用組曲に編曲した(ルーセルは“交響的断章”と呼んだ)が、今回は勇気を奮って全曲盤を。

 ドヌーヴ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の演奏で。
 2010録音。ナクソス。

 ところで、たぶん多くの皆さんは、間違って触れてしまったら不快きわまりなく、そしてクモが体にへばりついてないかとパニックに襲われる、あの網を“クモの巣”と称しているだろう。私もそうだ。

 が、「いや、あれは蜘蛛の網だ。クモの“巣”ではない」という奴がいた。
 高校のときの生物部にいた男だ。
 どーでもいいじゃん。あいつ、めんどくさい奴だったな。

a04f0ddb.jpg  北海道には野生のカマキリはいない。
 いや、いるという人もいるが、少なくとも私は見たことがない。

 大阪支社勤務のときは、出張で何度か広島に行った。
 支社の担当エリアには広島県も含まれていた。

 真夏のくそ暑い日、広島市郊外の自然豊かな場所にある取引先に向かって歩いていたら、歩道横の草むらからいきなりカマキリが飛び出してきた。
 初めてではないが、ナマのカマキリを見ることなんてほとんど経験がなかった。
 が、暑すぎて私には驚く気力もなかった。

 あのときの生カマキリが、生の五月みどりだったとしたら……まったくときめきなんかなかったろうな。年上という概念を超越するくらい年上だもん。
fed347ef.jpg  あぁ、かまきり夫人……

 金曜日の夜に自宅に戻り、土曜日の朝は冷たい風が吹いていて、お空もご機嫌斜め。
 「あぁ、またがぁでにんぐができない」と思ったが、10時ころから暖かくなり、11時から庭に出動。
 ノネズミにかじられたと思わるバラたちもなんとか芽吹き(写真はコンパッションというバラだが、けなげに新芽が1つだけ株元から出てきた)、残念ながらお亡くなりになった株は2つにとどまった。シダレザクラもつぼみをもっている(まだ咲いていない。もう6月になろうとしてるのに)。
 それでもご覧のように、ようやっと春らしい色合いになってきた。

 今日の昼すぎに、再び赴任地に向け3時間のドライブだ。