先日、珍しく行進曲-純粋な単独作品としての行進曲-を取り上げたが、私が知っている行進曲の中でいちばん好きな曲がなんであるか、あなたはご存知ないだろう。
いや。それでけっこうだ。
なぜか存じ上げられていたならば、逆に薄気味悪い。
それは、アルフォード(Kenneth Joseph Alford 1881-1945 イギリス)の「ナイルの護り(Army of Nile)」(1941)である(「ナイルの守り」あるいは「ナイルの陸軍」とも訳される)。
アルフォードは“イギリスのスーザ”と呼ばれる人で、最も知られている行進曲は「ボギー大佐」。この曲は映画「戦場にかける橋」で「クワイ河マーチ」として用いられた。
「ナイルの護り」は「ボギー大佐」とはまったく性格を異にするもので、短調で深刻に始まる。
力強く渋い序奏に始まり、続く短調の第1主題が哀愁をそそる。第2主題もいぶし銀的の響きき。
ほっと息をつくようなトリオに入ったあと(トリオのメロディーの背景で吹かれるファンファーレがまたいい)、力をつけ壮麗に曲は閉じられる。
行進曲だって、何でもかんでもブンチャカブンチャカただ明るけりゃいいってもんじゃない。
この抒情的な力感がたまらない。
アルフォードは1930年にプリマス海兵隊軍楽隊長になったが、在任中に第2次世界大戦が勃発した。「ナイルの護り」はナイルの第8軍が北アフリカでイタリア軍を撃破したのを祝って書かれたと言われる。だが、この行進曲を聴く限りでは、ノーテンキな祝勝ってものじゃない。アルフォードは何をこの曲に込めたのか?
1944年には少佐に上がったアルフォードだったが、病気のために退役した。
私はずっと、エアチャックしたヴィヴィアン・ダン中佐/ロイヤル・マリーンズ・バンドの演奏を聴いていた。
これを再び聴けることを切望しているのだが、いまは入手困難。
また、こんなにすてきな曲なのに、CDの販売点数は少ない。
そこで、ロジャー・G・スウィフト少佐指揮コールドストリーム・ガーズ・バンド(近衛コールドストリーム連隊軍楽隊)の演奏を。
いろいろなマーチ全41曲が収められたマーチ集である。
「ナイルの護り」の演奏は、ダン中佐のものと比べると音色がやわらかで上品である。
また、録音が比較的新しいのが魅力である。
1988録音。DENON。
プロフィール
MUUSAN
クラシック音楽、バラ、そして60歳代の平凡ながらもちょっぴり刺激的な日々について、「読後充実度 84ppm のお話」と「新・読後充実度 84ppm のお話」の2つのサイトで北海道江別市から発信している日記的ブログ。どの記事も内容の薄さと乏しさという点ではひそかな自信あり。
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