b81a50ec.jpg  村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」では、リストの「巡礼の年」が取り上げられた。

 CDショップでも、小説に出てくるベルマンがピアノを弾くこの曲のCDが目立つように置かれていたが、どれくらい売れたのだろう。はっきり言って「巡礼の年」はそれほど親しみやすい作品とは言い難い。

 その前の「1Q84」ではヤナーチェクの「シンフォニエッタ」だったが、こちらの曲はどこかアンバランスなような異国情緒があって、初めて聴く人でも面白いことは面白かったんじゃないかと思う。

 「シンフォニエッタ」ファンの私としては、あのように紹介されるのが嬉しくてしょうがなかった、というわけでは全然ないが、こちらの選曲はなかなか巧いなと、生意気にも思ったものだ。

 ヤナーチェク(Leos Janacek 1854-1928 チェコ)の「シンフォニエッタ(Sinfonietta)」(1926)……。今日はアバドがロンドン交響楽団を振った1968年の録音を取り上げる(デッカ)。

 「シンフォニエッタ」という曲は、輝かしいのにちょっとほの暗く、独特の節回しがある西欧音楽abab967b.jpg としてはちょっと異質なものだ。モラヴィア地方の風土に基づく、非西欧的性格。

 それが青豆やら天吾の不思議体験に合っているのだが、アバドの演奏はけっこうイケイケで明るい鳴らせ方をしている。ぞくっとするような鋭く切り込んでくるところがない。
 逆に言えば、この曲、こういう陽光の下でノビノビするような響き方にもなり得るんだなぁ、というもの。祝典音楽としてのDNAが強調されている。
 村上春樹がもしこの演奏でしか「シンフォニエッタ」を知らなかったら、きっと「1Q84」では取り上げなかったんじゃないか?そんな常夏っぽいものなのだ。

 常夏じゃないが、金曜日も土曜日も日曜日も暑かった。すっごく暑かった。
 ただ暑いだけではない。
 私が住まわせてもらっているマンションのベランダ側の前には道を挟んで大型老朽化ショッピングセンターが建っている。

 その屋上にある冷房の室外機が動き始めると、そりゃあもう、うるさいなんてもんじゃないのだ。
 「冷房を停めろ」なんていう、熱中症患者を大量発生させるようなことを言う気はまったくない。
dddd20b8.jpg  問題は、私が察するに、この室外機かなりガタがきているということだ。あの音はどこか異常があるとしか思えない。ブルドーザーがエンジンをかけたかのような音なのだ。

 考えてみれば去年の夏のある日の早朝。
 カンカンカンと鍛冶屋のような音がする。
 窓からみると、ハンマーをもった作業員2人が、懸命にこの室外機のどこかを叩いていた。動かなくなったのだろう。そして、開店前にごまかしてでもなんとか動かしたかったのだろう。

 そんな応急処置から1年。
 あの音は突然死する予感を私に与えているが、とにかくなんとかしてくれ、あの断末魔の叫びのような音。
 突然死じゃなくて、火を吹いたりしないだろうな……

 話は変わるが、その後のアボガド
 順調に育ってる。