4482f0d4.jpg  チェンバロ(ハープシコード)という“昔の楽器”。しかし、現代ではこの楽器は広く知られている。

 この16世紀から18世紀に広く使われていた楽器は、ピアノにその座を譲った。そんなチェンバロを20世紀に復活させたのは、ポーランドのチェンバロ奏者でありピアニストのランドフスカ(Wanda Landowska 1879-1959)だった。

 ファリャ(Manuel de Falla 1876-1946 スペイン)が書いた歌劇に「ペドロ親方の人形芝居(El retablo de maese Pedro)」(1919-22)というものがある。

 このオペラの楽器編成にはチェンバロが用いられており、初演の際にはランドフスカが弾いた。それがきっかけとなり、ランドフスカはファリャに協奏曲の作曲を依頼、こうして完成したのがクラグサン協奏曲G.71(1923-26)であり、チェンバロが現代に復興させる運動の一環となったのだった。

 クラヴサン協奏曲の正式な名称は、「チェンバロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲(Concierto para clavicordio,flauta,oboe,clarinete,violin e violoncelo)」で、6つの楽器による3つの楽章から成る作品である。

 新古典主義の音楽で、洒落ているがどぎついアクもある。ランドフスカはこの曲を気に入らなかったという。

 ソリアーノのチェンバロ独奏ほかの演奏で。
 1963録音。EMI。

 ファリャへの委嘱のあと、ランドフスカはプーランクにも作曲を勧めている。そうして生まれたのが「クラグサンとオーケストラのための『田園のコンセール』」である。プーランクも「ペドロ親方の人形芝居」の初演に立ち会っていて、ランドフスカのチェンバロ演奏に魅かれたという。

8ce7b36f.jpg  話は変わるが、7月7日、つまり七夕の日から読み始めた本。それは中町信の「模倣の殺意」(創元推理文庫)である。

 ストーリーは、

 7月7日の午後7時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第1作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。

というもの。

 この作家の本を読むのは初めてで-というか名前すら知らなかった-、各章のタイトルすべてに、登場人物の名があてられているのが斬新。
 ちょっと前から手元にあったのだが、後回しになっていた。 また、七夕に合わせて取り上げることを狙っていたというのも事実である。
 なのに、なぜ7月7日に取り上げなかったのかって?

 忘れていたのだ。

 やれやれである。

 この作家、1935年生まれで2009年に亡くなっている。
 つまり、“今”の作家ではないわけだ。