さて、今日で連休も終わりである。
なんという世紀末的気分なのだろう。
ところで今日はなんで休みなの?
えっ、海の日?
海の日ってむかしはもっとあと、20日過ぎじゃなかったっけ?地球温暖化の影響で早くなったの?
むかーしむかし、日曜日の夜、NHK-FMで“現代の音楽”という番組をやっていた。
そのオープニング音楽を耳にすると、「明日からまた地獄の1週間が始まるのか。次の日曜日まで体が持つだろうか」と、若いくせに精神的肉体的な不安を強く感じ、絶望的な気分になったものだ。
その音楽、確かに暗いのだ。
だって、J.S.バッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750 ドイツ)の特殊な作品「音楽の捧げ物(Musikalisches Opfer)」BWV.1079(1747。一部はそれ以前の作と考えられている)のなかの「6声のリチェルカーレ(Ricercare a 6)」だもん。これを聴いて、心ウキウキなんて人がいたらぜひ見てみたいものだ(いや、名乗りでなくて結構!)。
そしてそれは、“現代の音楽”にふさわしく、ヴェーベルン(Anton von Webern 1883-1945 オーストリア)が管弦楽に編曲したもの。
このただでさえ暗~い楽想のバッハの音楽が、ネットリと不安度を増強した姿で始まるのだ。
どうして、「明日は溌剌と学校に行こう」なんて思えるものか!
きっと当時、このリスナーだったサラリーマンだって、明日会社に行きたくないなと絶対に思ったはずだ。農家のおじさんは、明日は畑に行きたくないなと、漁師は船を出すのやめようかと、考えたに違いない。
NHKもかなり意地悪だといえば意地悪だ。が、なんて言っても“現代の音楽”だからな。そして、ウェーベルンのこの編曲は、実に見事なのである。
日曜日の夜遅くに聴いて(それも一部)、すっかり良くない印象を持たされてしまった人も巷にはそこそこいると思うが、そんなトラウマから解放されて聴いたら、けっこうゾクゾクする音楽なのだ。
ヴェーベルンはシェーンベルクの弟子であり、師と共に20世紀初頭の無調音楽、第1次大戦後の12音音楽の開拓者となった。彼の音楽-音列技法-は第2次大戦後の前衛音楽に大きな影響を及ぼした。彼が無調的技法を採用したのは1909年からで、12音技法は1925年に最初に用い、以降の作品は12音技法で書かれた。そして、このリチェルカーレの管弦楽編曲は1934-35年に行なわれている。どういう経緯で書かれたのか、私は知らないが……
そうそう、この曲、岩城宏之指揮札響の演奏会で聴いたことがある。岩城氏がマイクを持ってステージに現われ、演奏前にこの曲についてあれこれ話したが、プレトークとかいうものではなく、当日配られたプログラムの解説に間違いがあるのでワタシが正しいお話をしましょう、というようなものだった。
それはともかく、バッハの複雑に絡みあうメロディーをさらに細分化し各楽器に割り当てているが、停滞するところはない。熟練職人の切り貼り技だ。私としては、ベリオのすさまじい編曲テクと双璧を成すと思っている。
クラフト指揮21世紀古典アンサンブルの演奏を。
2008録音。ナクソス。
なお、CDジャケットには“Ricercata”と書かれているが、これは誤植ではなく、このようにも書く(呼ばれる)のである。そうそう、リチェルカーレというのは簡単に言うと、フーガの前身である。
先日紹介した中町信の「模倣の殺意」。その表紙に“The Plagiarized Fugue”って英文のタイトルが書かれているのに気づいただろうか?
いや、だから、その、模倣……
フーガ(伊:fuga/英・仏:fugue/独:Fuge)というのは、“一定の法則に基づいて、1つの主題の規則的な模倣反復を中心に構成される対位法的楽曲”のことである。
ところでヴェーベルンの最期は悲惨だった。
ベランダでタバコに火をつけたところをアメリカ兵によって射殺されたのだ。
ヴェーベルンの娘婿が元ナチス親衛隊で闇取引に関わっていた。タバコの火が闇取引の合図であると誤解され、誤って撃たれてしまったのだった。
で、今夜聴くかって?
いや、やめとく。
さて、今日は昼ごろになったら勤務地へ戻る。
今夜のために、どこかで炭酸水を買って帰らにゃ。
炭酸水はサツドラが安い!
新館入口(2014.6.22~)
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