1a22bbca.jpg  先日紹介した乾くるみの「クラリネット症候群」(徳間文庫)には、「マリオネット症候群」という小説も併録されている。

 クラリネット症候群とマリオネット症候群の違いは、クラリとマリオである。共通する“ネット症候群”は巷に氾濫していると言われるが、私はこれに罹患していないと、この際申し上げておく。

 その「マリオネット症候群」の内容は、うん、まだわからない。というのも、まだ読んでいないからだ。
 それよりも、乾くるみって女性作家だとばかり思っていたが、男なんだって。がっかりだな……(←なんで?)。

 マリオネットって何だろう?
 考えてみれば、たいへん個人的なことではあるが、言葉は知っているのに、はて、いざ「マリオネットになに?」と自問自答してみると、何のことかわからなかった。

 なになに……?操り人形のこと。あっ、そっか。
 もっと別なこと-己の生きざまを問うような-を自問自答してみたいものだが……

 マリオネットから私が辿りついたのが、グラズノフ(Alexander Konstantinovich Glazunov 1865-1936 ロシア)のバレエ「恋愛合戦(Les Ruses d'amour)」Op.61(1898/1900初演)。

03a29698.jpg  正式な名は「お嬢さん女中,または女の試み(恋愛合戦)」である。

 グラズノフは3曲のバレエ音楽を残しているが、「恋愛合戦」は1897年の「ライモンダ」と1899年の「四季」の間に書かれたことになる。そして、このサンドイッチで言えばもっとも重要となる、具であるべき真ん中が、いちばん知られていない。
 いや、この3曲、ちょっとの差なのだ。カステラサンドのように……

 バレエの筋は、公爵家の娘イザベラが、婚約者の真の愛を確かめるために、小間使いに変装して誘惑するという話。
 どーしよーもないな、イザベラ……。

 ほとんど知られてないが、しかしこの曲、出てくるメロディーのどれもがなかなか親しみやすいし、洒落ている。埋もれたままにしておくには、価値ある石器を掘り出さないがごとく、もったいない。とりわけ「マリオネットの踊り」は、リャードフのどうしようもないほどチャーミングな「音楽玉手箱」を彷彿とさせる。

 ただし、この作品の弱さは、メリハリに欠けるという点。
 これはグラズノフの他の作品にも言えることだが、山場がなくなだらかな丘陵のままで終わってしまう。バレエが伴えばまた違うのかもしれないが、音楽だけだとカステラサンドのように飽きが来る(カステラサンドが大好物の方、すいません)。
 でも、聴いておく価値がある作品だと、私は思っている。

 アンドレースク指揮ヤシ・モルドバ・フィルの演奏の録音を(なんだか怪しげなオーケストラ名だ)。

 曲は、

0530b04d.jpg  序奏と情景Ⅰ/レチタティーフとマイム/サラバンド/ファランドールと情景Ⅱ/マリオネットの踊り/情景Ⅲ/情景Ⅳ&Ⅴ/ヴァリアシオン/情景Ⅵ、行進曲/情景Ⅶ、大ワルツ/情景Ⅷ&ⅩⅠ/農夫と農婦の舞踏曲/グラン・パ・ド・フィアンセ/ヴァリアシオン/ラ・フリカッセ

から成る。

 この録音はかつてはMARCO POLOレーベルから出ていたもの。
 1986録音。ナクソス。

 このCDの帯には“名曲「四季」を凌ぐ”と書かれているが、んー、そりゃないと思うな……

 いやぁ、庭はジャングル状態。
 きれいにするのに、かなり作業に時間がかかりそうだ。