2db9ffa5.jpg  若いころの作品ながら、ドビュッシー(Claude Debussy 1862-1918 フランス)の浮遊するような特徴ある響きが、芳香のごとくプンプンと香り立っている作品。それが「ピアノと管弦楽のための幻想曲(Fantasie pour piano et orchestre)」(1889-91)だ。

 3楽章から成り(表向きは2つの楽章だが、第2楽章が緩→急の2部分から成るため3楽章構成といえる)、第1楽章はソナタ形式。つまり、実質はピアノ協奏曲である。

 この曲が書かれたのはドビュッシーが“ローマ賞”を受賞して留学しているとき。とはいえ、ローマでの生活が気に入らなかったドビュッシーは、留学期間を短縮。実は、パリに戻ってからこれを作曲している。

 1990年にダンディの指揮によって初演される予定だったが、ダンディが第2~3楽章をカットして第1楽章のみを取り上げようとしたことからドビュッシーが反発。結局、この時は演奏されなかった。

 このあとドビュッシーは作品を改訂している(曰く「ピアノとオケが競うようなものから、共存するようなものに」)が、生前に演奏されることはなく、初演は1919年になってからだった。

 ティボーテのピアノ、準・メルクル指揮フランス国立リヨン管弦楽団の演奏で。
 2011録音。ナクソス。

 このCDは「クラリネットのための第1狂詩曲」のときに紹介したが、ほかに 「管弦楽とサクソフォーンのための狂詩曲 (Rapsodie pour orchestre et saxophone)」(1901-1908)、「 神聖な舞曲と世俗的な舞曲」(1904)も収められている(前者のサックス独奏はドワシー、後者のハープ独奏はセソン)。

 ただし、日本語表記の“帯”には、「サックスと管弦楽のための幻想曲」と子羊を迷わせるような誤表記があるのでご注意を。