私がいちばん好きな指揮者はショルティである。たぶん。
ショルティによってマーラーのすばらしさを知り、またデッカ(当時の日本でのレーベルはLONDON)のすさまじい音に魅了された。だから、可能ならば-経済的に余裕があってそのLPが買えるなら-ショルティのものを選んだものだ。
が、私はこれまた大好きな作曲家であるショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)をショルティが演奏したものはといえば、じぇじぇ、これまで聴いたことがなかった。いやいや、避けていたのではなく、そういうタイミングを失っていただけ。だって、避ける理由なんてないもの。
そもそもショルティがショスタコを録音し始めたのは1990年に近くなってから。で、LP時代には彼のショスタコは存在していなかったし、CD時代になってもどーもショルティとショスタコが結びつかなかった。
そんなわけで、運命のいたずらでこれまで疎遠だった。
最近になってようやっとショスタコ by ショルティを聴いた。
今日はショルティにとって初のショスタコ録音となった交響曲第8番ハ短調Op.65(1943)。
さすがショルティ!そしてシカゴ響!加えてデッカ!
ライヴ録音なのに完璧なまでのアンサンブル。そして、硬質な爆発的演奏だ。
超名演奏、名録音といって間違いない。
この曲には2つの演奏パターンがある。
「ショスタコは深刻な顔とは裏腹に本当は腹の中で下を出してるんだもんね」という脱力タイプ。
コフマンやペトレンコ、インバルにヤンソンスなんかのアプローチがこれ。アシュケナージも多分そう。なんか中途半端だけど。
その反対は、自虐的爆発タイプ、もしくは純粋炸裂タイプ。
ムラヴィンスキーやヤルヴィ、プレヴィンなんかがそう。
もちろんショルティはショスタコが描いたオーケストレーションをめいっぱい鳴り響かせる純粋炸裂タイプ。それでも、ロシアのオーケストラがしばしば陥ってしまうような、混濁した絶叫はない。そこは見事。
さらに、これまたショルティの良いところでもあるのだが、体操部員を鍛え統率する監督のように実に合理的機能的機械的。監督じゃなくてトレーニング・マシーンそのものかも。
そこから生み出される機能美!そして音に酔える!
だからここには皮肉、嘲笑はない。ショスタコのポートレートに見られる、眼鏡の奥から厳しくこちらを見ているAB型人間のまなざしようにクールだ(ショスタコの血液型がなんだったかは知らないけど)。
いずれにしろこれほどまでの演奏はそうそうないのは間違いない。
作曲の背景?スターリン?当時の政治の状況?
そんなのしちめんどくさい。鼓膜がビンビンする大音響から、うぶ毛がかすかに動くほどのフルートのフラッター・タンギングまで堪能したい。そういう方には、この演奏ほどしっくりいくものはないだろう。
そしてまた、これが感動をもたらすということは、ソヴィエトのめちゃくちゃな時代に翻弄され、そして巧みにそれを欺いたショスタコの姿を知らずとも、つまり純粋な交響曲として聴いてもまったく問題のない傑作であることの証明でもあろう。
1989録音。ライヴ。デッカ(TOWER RECORDS VINTAGE COLLECTION No.10)。
新館入口(2014.6.22~)
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