「いい曲だな。この船にはよく似合う」
中島吾市はレコードの木箱を卓上に置いた。赤十字物資の中にあったものなのだろう。蓋に刻印された英語を、正木はたどたどしく読んだ。
「ニコライ・リムスキー・コルサコフ。『シェエラザード』か。ふうん……」
ふいに、ターニャがにっこりと笑った。
「ダー。シェエラザード!」
浅田次郎の「シェエラザード」の(講談社文庫)上巻のなかに出てくる一節である。
下巻を読み終えたが、こちらの裏表紙には、
弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は五十余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。
と、あらすじが書かれている。 物悲しい「シェエラザード」の調べとあるが、それと同時に著者は、この曲の最終楽章が「バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破、終曲」となっていることを、弥勒丸の運命の予告にしているのではないかと、私は思う。
また、ときが今になった場面で、キーとなる人物が次のように語る(下巻288p)。
今この部屋にかかっているコンパクト・ディスクは、いったい何代目の「シェエラザード」でしょうかね。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のベルリン・フィル。録音はやや古いのですが、絶品ですよ。
ワタシ、からやん、キライあるよ。
リムスキー=コルサコフ(Nikolai Rimsky-Korsakov 1844-1908 ロシア)の交響組曲「シェエラザード(Scheherazade)」Op.35(1888)。
リムスキー=コルサコフの作品のなかではもっとも知られ、またクラシック音楽の中でも高い人気をもつものだろう。
その名のとおり「千夜一夜物語」によるが、この交響組曲自体には一貫した物語はなく、エピソードを寄せ集めたものだ。
4つの楽章から成り、
第1楽章 海とシンドバッドの船
第2楽章 カランダール王子の物語
第3楽章 王子と王女
第4楽章 バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破、終曲
となっているが、本来各曲には標題はなく、これらは1889年の初版楽譜で作曲者自身が行なった注釈に基づいている。
今日はチョン・ミュンフン指揮パリ・バスティーユ管弦楽団の演奏を。
ロシア臭やオリエンタリズムは強くないが、この曲のきらびやかなサウンドを十分堪能できる演奏だ。
1992録音。グラモフォン。
ところで、「シェエラザード」の次に何を読もうかと何日か前から物色していたら、先週たまたま利用したJR石勝線の某駅のキオスクに、貴志祐介の「ダークゾーン」(祥伝社文庫)という小説が置いてあった。
いつも思うのだが、こういうところでかなり中途半端に置かれている文庫本ってどのくらい売れるものなのだろう?
しかもこの駅、そんなに乗降客は多くないのに上下巻それぞれ3冊も置いてあった。
思わず私は買いそうになったが、裏表紙のあらすじを読むとどうもいま一つ私の好みに合いそうもない。
そして週末。
やっぱりあの本を、と本屋に行くと、意外なことに回った2軒ともそれは置いてなかった。
そして日曜日。
夕方に帯広駅からJRに乗ろうとしたときに、キオスク(ここはセブンイレブンになっている)に、またまた「ダークゾーン」が、やっぱり上下巻それぞれ3冊が並んでいた。
キオスクの文庫の仕入れってどういう風になっているのかわからないが、なんとなく恐るべしキオスク、侮れないと思った。
でも、やっぱり私は買わなかった。
そうそう、月曜日にかかりつけの医師のもとに行き、脈とびが起こり、死の恐怖を味わったことを訴えた。
医師は真剣に聴いてくれたが、胸がすごく苦しいとか、脈とびが続くようならまたすぐに来て、と言ってくれたにとどまった。裏を返せば、そうじゃなきゃ心配は要らないということだ。
疲れていたり、寝不足だったりすると起こるそうだ。あと、タバコが悪さをしないとは全く言えないそうだ。
とりあえずは命に別状はないということを、ここにご報告申し上げる。
さらに、昨日の出張で乗ったJR(スーパーとかち)は定時運行してくれたことも、併せてご報告申し上げる。
新館入口(2014.6.22~)
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